ザブーンと笑う

第1話

　海へ行こうと思った。笑う為に。

　オープンカーでオシャレに鮮やかに行きたかった。が、現実は電車だ。車内のおじさんがもぞもぞしてトイレを我慢しているのが面白かった。このことも笑おう。

　ザブーンと迎えてくれた。スニーカーの私は靴を脱ぎ靴下を脱いだ。裸足がここでは礼儀だ。すぐさま足の裏を見たら砂だらけで汚かった。これも笑おう。

　ザブーン。海も笑いたいのだろう。よし、一緒に笑おう。いや笑ってくれ。

　「今日彼氏にフラれました」

　ザブーン。

　「大事な話があるって聞いたから結婚かと思いました」

　ザブーン。

　「早とちりして、友達の美樹にそのこと報告しました」

　ザブーン。

　「今年でもう35歳です。こんなご時世だから子供産みたいです。私の子宮がそう言ってまーす、でも相手がいないですＳＥＸたくさんしたいです」

ザブーン。

「車内にいたおじさんがトイレ我慢してモジモジしてて可愛かった。おじさんでもいいからＳＥＸしたいです」

ザブーン。

「あと足の裏こんなに汚いです」

ザブーン。ピコン。

「え？」

私はスマホを見た。そこには学生時代付き合ってた元カレからだった。

「今何してる？」

「海の前でＳＥＸって言っている」

「え、分かった」

「ごめん、海今からＳＥＸするわ」

ザブーンザブーン。

私は海に飛び込んだ、ビショビショになった服で彼にあった。

「どうした？」

って聞いてきたから

私は「ザブーン」って言った。