未定
たなちゃん
ゴール
欲しいもの言つてご覧よ口の中虫が蠢く蝶が飛び立つ
うろうろとするのが仕事かも知れない足下の蟻は三和土を出でず
この庭にも数多の抗争葉の陰に蜥蜴が小さき蛾を捕へたり
小さき蛾が抗ひつつも食はれゆく吾はどちらの味方をしよう
瘡蓋を治す時間なり庭に出て蝶の時間と重なりませふ
この口が言ふのよ「あの時はね」と誰か何かを責めたき夕べ
夫の耳に聞こえるほどの小声なる嫌な言ひ方したなと思ふ
輪郭が朧になりゆくお互ひを盗み見ながら日々の過ぐ
ボクサーは爽快だらうか叩くこと叩かるること四角きリング
格言の一つも思ひ浮かばずに高齢者となる春の佳き日に
斜めに走るからゴールは遠いスタートよりやり直す力持たず足踏む
周回遅れ故に何処を走りをる吾かと思ふ同じ景色を
百年時代まだ間に合ふと言はれたり血管浮き出る手の甲さする
やる事があつて良いねと足下の蟻見る花に水やりながら
夜中に出る咳のための水透明な器の中に立つてゐる水
昔より紙の匂ひは薄くなり固き画面にニュースは並ぶ
甘きもの食べても食べて満たされぬ雨後の庭草が茫茫
悔しさが抜けないソーダ若くても年をとりてもさして変はらず
座布団をよけてしばらく正座するどう転んでも正解はない
くつきりとしたものが欲しい手の中にお金かいいねかそれも曖昧
未定 たなちゃん @Tanka556
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