第2期:行き着く先は夢か現か

第13話 過去とこれからと将来の夢

 バニラの香りを持つ亜麻色の髪のバニリィ。


 チョコの香りを持つ黒髪のショコル。


 二人が出会って、二年が経ちました。




早苗月 令舞 Presents


『メルティーメイツ』2nd Season




 やさしい香りが辺りを包む春の日。


 とある国のとある街にある、あなたが店主を務める喫茶店は、今日から新装開店です。お店の外装から内装まで綺麗に作り直され、お客さんを待ち侘びています。


カランカラン♪


 おや、早速お客さんが来ましたね。


「ここに来るのも、久しぶりね」

「新装開店、待ってたよーっ!」


 新装開店して初めてのお客さんは、やはりあの二人でした。バニラの香りのバニリィと、チョコの香りのショコル。二人はカウンター席に座ると、飲み物を頼みました。


「ミルクを一杯お願いします」

「アタシはそのミルクに、ココア大さじ9杯ね!」


 あなたは慣れた手つきでミルクを注ぎ、二人に差し出しました。


「では、いただきます」

「今日も盛大にいっちゃうよー!」


 バニリィはゆっくりと味わい、ショコルはいつものココアパウダーを許容量以上に投入して飲みました。


「相変わらずこちらにも、ココアの香りが伝わって来る」

「ぷはーっ!やっぱこの店のミルクがイッチバンだわーっ!」


 いつも通りの二人を見て、安心するあなた。


「アタシとバニリィがこうして付き合って、気が付けばもう二年が経っちゃったんだよねー!」

「ええ、全てはあの日から、物事が思わぬ方向に動き出しましたね」

「アタシショコルと、今ここにいる彼女バニリィ!二人が出会って、数多くの伝説が生まれたんだから!」


 何だか、誇張が激しい気がしなくもないのですけれど、バニリィとショコルは、初めての出会いの日から現在に至るまでの出来事を、ざっと砂糖をスプーンですくうように振り返りました。


「初めて会った日は、どこまでも追いかけてくるショコルが今でも夢に出てくるぐらいだった……」

「走った後のドーナツが美味しかったよねー!」

「その時のミルクに、許容量過多のココアを入れて飲んでいましたね……」


 一緒に服を買ったり、色々な本を読んだり。


「二人で買ったあの服は勝負の日には必ず着ているからね!」

「最近は、ショコルのセンスもクセになりつつあるの」

「その場のノリで、ショコル部なんて作っちゃって、何だかんだでずっと続いているよね!」

「生涯通して続きそうな気もしますね……」


 分かりやすいレシピを用いたクッキー作りをしたり、海の穴場スポットに行ったり。


「昨年も、あの暑い日と同じように海水浴行きましたね」

「この前来た時も、人が来た形跡がほとんど無かったし、まさに秘密の場所って感じ!」

「ショコルが持ってきたクッキーも美味しかったです」

「あの手作りクッキー、アタシでも簡単に作れた!」

「そういえばこの前ショコルが作ったクッキー、おみくじが入っていましたね……確か、『もっと濃厚な関係になれる』と」

「くじには意地悪な事は入れないようにしているからね!」


 カフェイの想いを託された友達と一緒に遊園地を楽しんだり。


「姉さんのお友達のおかげで良い一日になりましたね」

「カフェイさんのお友達、確か裕光と楓とか言ってたよね!」

「あの二人は今でも元気にしていると、姉さんが言ってました」

「またみんなで行きたいよね!スウィートパラダイスパーク!」


 焼きたてのケーキの香りのする花火が上がる夏祭りを楽しんだり。


「お揃いの浴衣で行った日も楽しかったです」

「めっちゃ映える浴衣見つかった時はテンションバリバリだったし!」

 

 入手困難なお菓子を求めて奔走したり。


「あれは思い出すだけでも、大変な一日でしたね」

「あのバチバチしすぎのやつ、出来ればまた食べてみたいかも!」


 出会う前のお互いの境遇を語り合ったり。


「あれから色々考えましたが、私はショコルに会えて良かったと思っています」

「アタシもバニリィがいなかったらどうなってたか分かんないよー!」


 お互いのメルティングの時を見届けたり。


「8月24日に、私バニリィがメルティングして……」

「翌年の2月14日にアタシショコルがメルティングした!」

「あの時以降、誕生日には香りは最初の時程ではないものの軽いメルティングを起こすようになったの」

「その時も、運命の関係として立ち会っているんだからね!」


 姉のカフェイと真摯に話し合えたり。


「姉さんの本当の気持ち、あの時に聞けて良かった」

「カフェイさんの夢、アタシも全力で応援してるよ!」


 この街に語り継がれる先祖の想いを託されたり……。


「なーんて話してたら……あらっ!バニリィちゃん、その胸に輝いているのは……!」

「あ……これ、いつも持ち歩くようになったんです」


 バニリィの胸元には、先祖のアリシアがカカオから貰い、大切にしてしていたペンダントがありました。


「今でも、遠い時代のあの子が持っていたチョコの香りがする。ショコルの香りに似ていても、どこかやさしい香りがね……」

「アタシもこういうのあったら欲しいなー!ワンチャンス、ママがご先祖様から受け継いだ何かがあったりして!」


 なんてお話していると……。


「あら、姉から連絡……!?」

「え、なんて!?」


 バニリィが姉からの連絡を確認すると、こう言いました。


「バニリィとショコルを、ザラメ社の工場見学に招待するんですって!」

「な、なんとぉー!?」

「日程の方も学校が休みの日。だから気軽に来てほしいって」

「アタシからも姉さんにありがとーって言っておいて!」

「分かったわ」


 姉からの思わぬ知らせを受けて喜ぶ二人。そろそろ帰る時間になりました。


「それでは、また来ます」

「これからもよろしくねー!」


カランカラン♪


 帰り道でも、バニリィとショコルは語り合います。


「これからの私達、このままどこへ行き着くのでしょうね……」

「もちろんアタシはバニリィと一緒にいるけど、将来何のお仕事しようかな……」

「今度の工場見学で、良いきっかけが見つかるといいですね」

「うんっ!」


   * * * * * * *


 ……別の場所。カフェイの住んでいるアパート。


「上司の思いつきとはいえ、バニリィとショコルを招待する事になるとは……でもこれは、二人の未来を明るくするためにやる事のひとつ。あの二人はこの一年でどんな道を進むのかしら……」


 遠く離れていても、妹を想うカフェイなのでした。


 第13話 おわり

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