第5話 真実の影

選挙戦の熱気がますます高まる中、大樹と夏美は新京都庁の不正を暴くために全力を尽くしていた。彼らは地下倉庫から入手した決定的な証拠を手にし、次の一手を考えていた。


その日、大樹と夏美は再び「カフェ・デュ・ミラージュ」に集まっていた。カフェの静かな雰囲気が、外の喧騒とは対照的だった。美奈子も合流し、三人は真剣な表情で話し合っていた。


「この証拠をどうやって公にするかが問題だ」と、大樹は手元の書類を見ながら言った。


「まずは、信頼できるメディアにリークするのが一番でしょう。公正な報道をしてくれる記者を探さなきゃ」と、美奈子は冷静に答えた。


「私が知っている記者に連絡してみるわ。彼ならきっと協力してくれるはず」と、夏美は自信を持って提案した。


「それがいい。時間は限られている。早速動こう」と、大樹は決意を新たにした。


その頃、岩田真一はますます焦燥感に駆られていた。彼のデスクには、大樹と夏美の動きを追う報告書が積み上げられていた。


「このままではまずい…。奴らを止めなければ」と、岩田は独り言をつぶやいた。彼は部下たちにさらなる監視と圧力を指示し、自らも動き出した。


一方、竹内孝志は街頭パフォーマンスを続けていた。その日も大勢の観客が集まり、彼の演説に耳を傾けていた。


「新京都を変えるためには、都庁をぶっ潰す必要があります!」と、竹内は熱く叫んだ。彼の言葉は観客の心に響き、拍手と歓声が湧き上がった。


「都庁の腐敗を許してはいけない。私たちが新しい風を吹かせるんだ!」と、竹内はさらに訴えた。


その夜、大樹と夏美は美奈子の紹介で、信頼できる記者と会うことになった。記者の名前は山田亮太(やまだ りょうた)で、長年にわたり公正な報道を続けてきたベテランだった。50代後半、灰色の短髪に深いシワが刻まれた顔。カジュアルなジャケットにジーンズというラフなスタイルで、いつも冷静沈着でありながら、鋭い目つきが特徴的だった。


「はじめまして、山田です。話は聞いています。早速ですが、証拠を見せていただけますか?」と、山田は真剣な表情で言った。


大樹は持ってきた書類を山田に手渡し、一つ一つの内容を説明した。山田は資料をじっくりと読み込み、次第に顔色が変わっていった。


「これは確かに重大な証拠ですね。これを公にするには慎重に進める必要がありますが、私は協力を惜しみません」と、山田は力強く答えた。


「ありがとうございます。これで一歩前進ですね」と、夏美はホッとした表情を見せた。


「まずは、記事を作成し、掲載の準備を進めましょう。私も全力でサポートします」と、山田は心強い言葉をかけた。


三人は山田と共に、証拠の整理と記事の作成に取り掛かった。新京都庁の不正を暴くための戦いが、本格的に動き出した。


その一方で、白鳥蓮花も街頭演説を続けていた。白鳥は市民一人一人との対話を重視しており、商店街や住宅地を訪れ、市民の声を直接聞く活動をしていた。ある日、彼女は地元の商店街で選挙カーから降り、市民たちと談笑していた。


「2位じゃダメなんです!」と、白鳥は笑顔で言った。「私たちは勝たなければなりません!新京都を本当に変えるためには、トップに立たなければならないんです!」


「蓮花さん、応援してますよ!」と、おばあちゃんが笑顔で声をかけた。


「ありがとうございます!一緒に新京都を変えましょうね!」と、白鳥は手を振った。


その後、白鳥は子供たちと写真を撮り、商店街の店主たちと意見交換を行った。彼女の真摯な姿勢と人懐っこい性格は、多くの市民に親しまれていた。


しかし、その動きはすぐに岩田真一の知るところとなった。岩田は部下に指示を出し、大樹たちの動きを阻止するためにあらゆる手段を講じた。


「絶対に奴らを止めるんだ。新京都の未来は俺の手にかかっている」と、岩田は冷徹な表情で命じた。


新京都の街は、真実を求める戦いの中で揺れ動いていた。光が影を照らし、真実が闇を暴くその時、新京都の運命は大きく変わろうとしていた。選挙戦の行方は誰にも予測できず、街全体がその結果を固唾を飲んで見守っていた。

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