恋模様、汗疹様~とりとめのない恋の話~
タヌキング
汗疹
僕の名前は丸山 正一(まるやま しょういち)。
しがない会社員をしている僕だが、26歳にして女性経験がなく出会いが無い。
もう出会いが無ければ、このまま独り身でも良いかな?とか自分の住むアパートの部屋で考えていた時、ピンポーンとチャイムが鳴った。
僕が玄関の戸を開けると、そこには黒い長い髪の黒いジャージ姿の女の人が立っていた。確かお隣さんの大黒(おおぐろ)さんだったかな?
大黒さんは僕の部屋の左隣に住んでいる、何をしている人なのか不明な女の人で、とにかく家からあまり出てこないレアキャラである。それで僕は彼女は引きこもりなのかもしれないと失礼な推測を立ててしまっている。
「あ、あの・・・。」
何故か目に涙を貯めて、何かを訴えかけてくる彼女。近くで顔を見たことは無かったが色白で目が大きくて可愛らしい顔をしている。
「どうしたんですか?何か困ってそうですが?」
僕がそう聞くと、彼女はモジモジし始めた。どうやら言いにくい事らしい。言いにくいことを隣人の僕に言おうとしているのか?面倒事なら正直ごめんこうむりたい。
しかしながら彼女から予想外の言葉。
「あの、私の背中に薬を塗ってくれませんか?」
「・・・はい?」
女の人が背中に薬を塗ってくれと頼まれたことが無いので、一瞬頭がフリーズしてしまった。えーっと、こういう時どう対応したらいいのだろう?・・・ダメだ全く見当もつかない。
「お、お願いします‼それでは失礼します‼」
「うわっ‼」
僕を押しのけて、彼女は強引に部屋に入って来てしまった。女子が自分の部屋に入って来るなんてイベント今まで無かっただけに、僕の頭のアラートは鳴りっぱなしである。
彼女はサンダルを脱いで、居間の部屋に正座して僕のことをジーッと見つめている。まるで餌を待つ子犬の様ではないか、ちなみに僕は犬は大好きだ。
僕は玄関の扉を閉め、居間の部屋で彼女と向かい合うように座った。
ワケを聞こうと思ったのだが、彼女が突然ジャージを脱ぎ始め、白い柔肌と純白のブラジャー姿になったので、僕は大いにたじろいだ。これで分かったことは彼女は着やせするタイプで、ジャージの下には立派なモノを持っていたということだ。彼女の白くて柔らかそうな胸がブルンと揺れたのを見て、僕はゴクリと生唾を飲みこみ、彼女はクルリ回って背を僕に向けた。
そうしたことにより、彼女が僕に薬を塗って欲しいと言った理由が分かった。
彼女の背には赤い発疹がポツポツといくつもあり、色白の肌も相まって結構目立ってしまっているのだ。
「背中に汗疹が出来て痒いんです。助けて下さい。」
確かにこれは痒そうだ。なるほど、なるほど。
聞けば深夜に彼女の家のエアコンが壊れてしまい、寝苦しい夜を過ごして、汗だくになった際、背中に汗疹が出来てしまった様なのである。
新しいエアコンを取り付けて部屋は快適になり、皮膚科の病院で薬を貰って来たのは良いのだが、背中の手の届かないところに汗疹が出来てしまっているので薬を塗れずに困っていたらしい。
「もう痒くて痒くて・・・頼れる友達も居ないし、家族は遠くに住んでいるし、もう丸山さんだけが頼りなんです。助けて下さい。」
再び僕の方を向いて土下座までしてしまう大黒さん。ブラジャー姿の女の人に土下座させてしまうのは男としてどうなのだろう?
そんなことを考えながらも目線は胸の谷間に向かおうとしているので、僕は自分で自分の顔を思いっきり殴った。
“ゴッ‼”
「だ、大丈夫ですか⁉どうして急に自分の顔を??」
「い、いやいや、大丈夫です。気にしないで下さい。それより本当に僕なんかが薬を塗って良いのですか?」
「はい、丸山さんにお願いしたいんです。」
ふむ、なるほどな。どうやら僕の体からにじみ出ている童貞のオーラに気付いたらしい。コイツなら手は出してこないだろうと思っている様だな。舐められたものである。僕だって心の中に狼を住まわせている。いつだってその狼が暴れる準備は出来てい・・・。
「うぅ、痒い‼早くお願いします‼」
「あっ、はい、それじゃあ、塗らせて頂きます。」
こうして僕は大黒さんの背中に塗り薬を塗ることに相成った。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます