1552年 妖怪の部下
橋本一巴様に銃の扱いを教わりながら、与えられた5石分の知行を活用するために色々と考えた。
女妖怪達も中途半端な広さの土地の活用に知恵を振り絞っていた。
「ふむ、水場から遠い故に稲作には向かんのぉ」
「となると畜産の方が良いかな。せっかく牛を捕らえてきたし」
「牛飼いと馬借をしないっすか? 需要はあると思うっすよ···また私が捕らえてきてもいいっすよ」
と草子が言う。
「水場が遠いから家畜に水を与えるのも苦労するだろう。それは無しじゃな」
「うむむ···」
「まぁ無難に里芋とか小麦じゃろうな。全く、管理するのも一苦労じゃな」
「そういえば新しい金策が思いついたのですが」
「なんじゃ?」
「蚕の飼育をしませんか? 与えられた土地の近くに桑の木が大量に自生していますので」
とお雪が言う。
「絹を作るか···ありじゃな。まだ余裕があるうちにやっておこう。なに、佐助ならば更に出世するであろう」
とお玉は更に出世するだろうと佐助に期待をするのだった。
信長様と信行様からの扱いの違いに苦悩しながら、鉄砲の技術をある程度会得した俺は足軽小頭として部下となる人物を探した。
足軽小頭は足軽の班長の様な存在で、5名から10名程の部下を従えて戦う。
組頭が30人、足軽大将が100人を指揮するので一番低い地位であるが、それでも足軽達の防具を揃えたりしないといけないのである。
油作りの部下達では駄目なのかと思うかもしれないが、彼らは俺に忠義を誓っては居ない。
あくまで信長様の命令だから従っているという与力(親会社から貸し出された社員)という立場に近い。
戦でも前田利家殿や津田盛月殿に率いられて戦っているので、戦で数に数えるわけにはいかない。
どうしたものかなと思い、そういえば河童のハマであれは何か強者とかを知らないかと思い、上司である村井様の許可を貰い、美濃に向かった。
瓜が好きだと言っていたので瓜を持って会いに行くと
「おや? 久しいな盟友! どうかしたのか?」
と聞かれて足軽小頭になったので部下を探しているのだが、何か知らないかと聞くと
「ふむ、そうだねぇ···前にも言ったが忍びを当たるのとかはどうかな? もしくは傭兵の里に行くとか」
「傭兵···」
「まぁ僕よりも君の近くにいる大妖怪達に聞いたほうが良いと思うが」
「そうかな···」
と言われてしまった。
結局お玉、お雪、チチ、草子に相談すると
「なんだ、今度は部下に困っているのね」
と言われたが
「なら私達の伝手を使うかい?」
と草子に言われた。
「え? 伝手あるの?」
「まぁね。私達元々良いところの出だし」
とお雪が言う。
河童のハマが大妖怪と言っていたので、信憑性が増したが、どんな部下が欲しいか聞かれる。
「そもそも佐助は自分の部隊をどの様にしたいのか? 弓隊、槍隊、石投げ隊みたいに主軸とする武器によっても違うだろうし、将来部隊を率いるのを支える人の方が良いのか、佐助みたいな怪力無双の人が欲しいのか···」
「今は老兵の様な経験豊富な人の方がありがたい。若い俺を支えてくれるような人が良い」
「なるほどっす、連れてくるから数日家を離れるっす」
「なら妾も連れてこようかのぉ」
と草子とお玉が言った。
お雪とチチは若手なら紹介できるけど老兵なら二人の方が知り合いは多いねと言っている。
数日後、二人の老人と二人の若者をお玉と草子は連れてきた。
異界にてお玉ことクズノハと女天狗である草子はまず部下である若い妖怪に声をかけた。
草子は妖怪では若者である白狼天狗に声をかけた。
「名家であり、日ノ本の皇族の血縁である■■■(草子の本名)様の役立てるならハクロウ、人に仕えるのも問題ありません」
「ハクロウでは正体がバレるかもしれないから苗字が与えられるまでは白右衛門(シロエモン)と名乗るっす」
「は! 誠心誠意お使えいたします」
一方お玉は孫悟空の子供の元を訪ねていた。
「な、なんでしょうかクズノハ様」
「相変わらず引きこもって書物を読んでいたのか···力自慢で暴れん坊だった父親とは大違いであるのぉ」
「父は仏になるほど偉大でしたが、私は私生児ですし、徳を積む為には三蔵法師様の残した書物を読み、教えを広めるまでのこと···」
「そんなお主に妾の夫と子供を支えて欲しいのだが」
「安倍晴明以外にも子供をお作りになったのですか?」
「ああ、苦悩まみれの男よ。主からも冷遇されて色々と悩んでいる。偉大な親が居て悩んでいるお主に似ていると思ってな」
「しかし···」
「三蔵法師と出会ったことで孫悟空は天竺を目指し、立派に成長した。ならばお主も主を見つけることで一皮剥けると思うがのぉ」
「クズノハ様がそこまで言うのでしたら···」
「夫を頼むぞ孫善財よ」
若者を誘った二人は長生きしている妖怪を誘った。
草子は護法童子に声をかけた。
「ふむ、天狗の認める魂を持つ男か···仕えがいのありそうな御人じゃな」
「直臣が今居なくて···護法なら教養もあるっすから上手く導いてくれると信じてるっす」
「楽しみじゃのぉ!」
と快く快諾し、お玉はぬらりひょんに声をかけていた。
「平安の百鬼夜行以降暇をしておるのだろう?」
「まぁな。暇を持て余している」
「なら若者を育ててみないかのぉ? 英雄の誕生を特等席で見たくはないか?」
「生憎儂は人に仕える気は無い。仙人もどきに声をかけてみよ」
と断れてしまい、次点であった邪仙に声をかけた。
「邪仙いるか〜」
「何用かクズノハ」
「まだ仙人になれてないの?」
「やかましい。儂は儂のやり方で仙人を目指すまでよ。食を断つ等馬鹿馬鹿しい。欲を断つなど人の道に反する」
「俗物爺め、まぁ今、俗世が乱れに乱れているのは知っておるな」
「まぁ酷いことになっているのは知っておるが?」
「妾の旦那を支えてはくれんか? 安倍晴明にも勝るとも劣らない器を持った者なのだが師がおらん故にな。導く師となりうる存在を欲している」
「それで儂に声をかけたか···良いじゃろう。面白い。久しぶりに俗世の酒を飲みたくなった」
「お主、そういうところだぞ」
と邪仙改め道海、護法童子の護法に孫善財、白右衛門を引き連れて異界から俗世に戻るのであった。
四人はそれぞれの思惑で佐助に従ったが、白右衛門は佐助に武芸で勝負を挑み、佐助に負けて忠義を誓った。
善財は沢山の書物を読んでいたので教養があり、佐助と共に村井の手伝いをしながら仲良くなり、護法には正道を、道海からは邪道を教わるのだった。
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