第3話 告げられたのは、「最悪の事態」


 自身を「神」と名乗った3人の男女によるツッコミから暫くすると、


 「いやぁ、まさか髪型の事を言われるとは思わなかったわぁ」


 と、その1人である「天照大神」ーー以下「アマテラス」と名乗った女性が、頬をポリポリと掻きながら言った。


 その言葉を聞いて、


 「す、すみません。生まれて初めて『神様』を見ましたので、どうリアクションすればいいのかわからず……」


 と、春風はアマテラス達に向かって全力で土下座した。


 そんな春風を見て、


 「はは。まぁ、そりゃそうだよね」


 と、「オーディン」と名乗った眼帯を付けた男性がボソリとそう呟くと、何処からか1冊の本を取り出して、表紙をパラリと捲った。


 その行動を見て、春風は頭上に「?」を浮かべながら首を傾げると、


 「雪村春風。光国みつくに春風。4月24日生まれの17歳……」


 と、オーディンはその本の内容を読み上げ始めた。


 「え? そ、それって、俺の事……」


 と、いきなり自分の名前が出た事に驚いた春風だが、オーディンはそんな春風に構う事なく、


 「私立常陽高等学校に通う2年生。家族構成、父・光国冬夜とうやと母・光国柊色ひいろは7年前に死亡。その後、父親の友人である雪村涼司に引き取られ、以後、雪村春風に改名。7年経った今でも彼との関係は良好。現在は高校に通いながら、涼司と共に喫茶店「風の家」を経営。趣味はトレーニングと漫画集め。特技は家事全般と機械いじり……」


 と、本の内容を読み続けた。

 

 「ちょ、ちょっとぉ……!」


 と、春風が焦った表情を見せたように、どうやらオーディンが読み上げているのは自身のだと理解した。


 そして、


 「因みに、は……」


 と、オーディンがも読み上げようとしたので、


 「わぁあああああ! 待ってぇ! 待ってくださいいいいい! わかりました! あなた方が『神様』だという事はわかりましたからぁあああああ!」


 と、春風は悲鳴じみた叫びをあげながら、大慌てでそれを阻止した。


 そんな春風を見て、


 「うん。わかればよし」


 と言ってオーディン本を閉じ、


 「「うわぁ……」」


 そのオーディンを見て、アマテラスと「ゼウス」と名乗った風の男性はドン引きした。


 その後、顔を真っ赤にしながら「ぜぇ、はぁ……」と肩で息をしていた春風は漸く気持ちが落ち着くと、「コホン」と咳き込んで、


 「あー、えっと。アマテラス様……でよろしいんでしたよね?」


 と、アマテラスに向かって話しかけた。


 「うん、アマテラスでいいよ」


 と、アマテラスがそう答えると、


 「その、今更で申し訳ないのですが、教室で俺を助けてくれたのは、アマテラス様でよろしいでしょうか?」


 と、春風は再び尋ねてきたので、


 「ええ、そうよ。まぁ、正確に言えば、私が腕を伸ばして、君が掴んだところで、ゼウスとオーディンと一緒にあの場からこの「狭間の空間」へと引っ張り上げたっていうのが正しいかな」


 と、アマテラスはゼウスとオーディン、更には今自分達がいるこの真っ白な空間を交互に見ながら答えた。そして、それを合図にしたかのように、ゼウスは「おうよ!」と笑顔で親指を立てて、オーディンは「ふふ」と穏やかな笑みを浮かべた。


 春風はそんな3人……否、「神」だから3と言った方が正しいだろう。とにかく、そんな3柱に、


 「そ、そうだったんですか。遅くなってしまいましたが、助けてくださってありがとうございました」


 と、深々と頭を下げてお礼を言うと、


 「あの。それで、先生やクラスメイト……俺以外の人達は……?」


 と、恐る恐るまた尋ねたが、その瞬間、アマテラスは申し訳なさそうな表情になって、


 「ごめなさい。あの時助け出せたのは、春風君1人だけなの」


 と答えた。よく見ると、両隣りに立つゼウスとオーディンも、アマテラスと同じく申し訳なさそうな表情になっていた。


 春風はその答えを聞いて、


 「そう……ですか」


 と、肩を落とすと、


 「あの。何度も尋ねるようで誠に申し訳ないのはわかっていますが、その、あの時何が起こったのか、アマテラス様達はご存知ありませんか?」


 と、また恐る恐るアマテラス達に向かって尋ねた。


 すると、アマテラス達は「う! それは……」と言わんばかりに気不味そうな表情になったが、春風の「教えてください!」と言わんばかりの視線に負けたのか、アマテラスは「仕方ないか」と口を開いた。


 「あのさぁ、春風君」


 「は、はい」


 「君はその……『異世界召喚もの』の漫画って見るかな?」


 いきなり妙な質問をされたので、春風は「は?」と一瞬ポカンとなったが、すぐに真面目な表情になって、


 「はい、結構読みますけど……」


 と答えると、


 「落ち着いて聞いてね。実は……『異世界召喚』は現実に存在しているの」


 と、アマテラスはもの凄く真剣な表情でそう言った。


 普通だったらこの後、


 「あははっ! そんな何言ってんのぉ!」


 と、馬鹿にするように笑いながらそう言うところだろう。


 しかし、春風はアマテラスが嘘を言ってないと感じたのか、


 「ま、マジですか!」


 と、大きく目を見開いて驚いた。


 そしてアマテラスに続くように、


 「ああ、マジな話だ。今も地球のあちこちで、誰かが別の世界へと召喚されてんだわ」


 と、ゼウスが答えたので、


 「ま、マジですか」

 

 と、春風はタラリと汗を流した。


 更にゼウスに続くように、


 「そう。そして今日、君のとこの担任教師とクラスメイト達も、その『異世界召喚』によって、別の世界へと召喚されてしまったんだ。そして君を助けた後、君に刻まれている『異世界召喚』の術式を調べた結果、それを行なったのは『エルード』という異世界の住人だというのがわかったんだ」


 と、今度はオーディンがそう説明したので、


 「そう……だったんですか」


 と、春風は納得しながら顔を下向けた。


 すると、


 「で、ここからがな事なんだけど……」


 と、アマテラスが口を開いたので、春風は「え?」とすぐに顔を上げると、アマテラスは先程以上にもの凄く真剣な表情で、

 

 「その『異世界召喚』の所為で……地球はに陥ってしまったの」


 と言った。


 春風はそれに対して、


 「……はぁ?」


 と、首を傾げると、


 「正確に言えばな、その『異世界召喚』の所為で消滅する事になった『エルード』に形で……」


 「地球もに消滅する事になったというのが正しいかな」


 と、ゼウスとオーディンがそう付け加えたので、それを聞いて春風は、


 「はぁ……はい?」


 と、何とも間の抜けた声を出しながら、頭上に幾つもの「?」を浮かべた。

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