第3話 告げられたのは、「最悪の事態」
自身を「神」と名乗った3人の男女によるツッコミから暫くすると、
「いやぁ、まさか髪型の事を言われるとは思わなかったわぁ」
と、その1人である「天照大神」ーー以下「アマテラス」と名乗った女性が、頬をポリポリと掻きながら言った。
その言葉を聞いて、
「す、すみません。生まれて初めて『神様』を見ましたので、どうリアクションすればいいのかわからず……」
と、春風はアマテラス達に向かって全力で土下座した。
そんな春風を見て、
「はは。まぁ、そりゃそうだよね」
と、「オーディン」と名乗った眼帯を付けた男性がボソリとそう呟くと、何処からか1冊の本を取り出して、表紙をパラリと捲った。
その行動を見て、春風は頭上に「?」を浮かべながら首を傾げると、
「雪村春風。
と、オーディンはその本の内容を読み上げ始めた。
「え? そ、それって、俺の事……」
と、いきなり自分の名前が出た事に驚いた春風だが、オーディンはそんな春風に構う事なく、
「私立常陽高等学校に通う2年生。家族構成、父・光国
と、本の内容を読み続けた。
「ちょ、ちょっとぉ……!」
と、春風が焦った表情を見せたように、どうやらオーディンが読み上げているのは自身の
そして、
「因みに、
と、オーディンが
「わぁあああああ! 待ってぇ! 待ってくださいいいいい! わかりました! あなた方が『神様』だという事はわかりましたからぁあああああ!」
と、春風は悲鳴じみた叫びをあげながら、大慌てでそれを阻止した。
そんな春風を見て、
「うん。わかればよし」
と言ってオーディン本を閉じ、
「「うわぁ……」」
そのオーディンを見て、アマテラスと「ゼウス」と名乗った
その後、顔を真っ赤にしながら「ぜぇ、はぁ……」と肩で息をしていた春風は漸く気持ちが落ち着くと、「コホン」と咳き込んで、
「あー、えっと。アマテラス様……でよろしいんでしたよね?」
と、アマテラスに向かって話しかけた。
「うん、アマテラスでいいよ」
と、アマテラスがそう答えると、
「その、今更で申し訳ないのですが、教室で俺を助けてくれたのは、アマテラス様でよろしいでしょうか?」
と、春風は再び尋ねてきたので、
「ええ、そうよ。まぁ、正確に言えば、私が腕を伸ばして、君が掴んだところで、ゼウスとオーディンと一緒にあの場からこの「狭間の空間」へと引っ張り上げたっていうのが正しいかな」
と、アマテラスはゼウスとオーディン、更には今自分達がいるこの真っ白な空間を交互に見ながら答えた。そして、それを合図にしたかのように、ゼウスは「おうよ!」と笑顔で親指を立てて、オーディンは「ふふ」と穏やかな笑みを浮かべた。
春風はそんな3人……否、「神」だから
「そ、そうだったんですか。遅くなってしまいましたが、助けてくださってありがとうございました」
と、深々と頭を下げてお礼を言うと、
「あの。それで、先生やクラスメイト……俺以外の人達は……?」
と、恐る恐るまた尋ねたが、その瞬間、アマテラスは申し訳なさそうな表情になって、
「ごめなさい。あの時助け出せたのは、春風君1人だけなの」
と答えた。よく見ると、両隣りに立つゼウスとオーディンも、アマテラスと同じく申し訳なさそうな表情になっていた。
春風はその答えを聞いて、
「そう……ですか」
と、肩を落とすと、
「あの。何度も尋ねるようで誠に申し訳ないのはわかっていますが、その、あの時何が起こったのか、アマテラス様達はご存知ありませんか?」
と、また恐る恐るアマテラス達に向かって尋ねた。
すると、アマテラス達は「う! それは……」と言わんばかりに気不味そうな表情になったが、春風の「教えてください!」と言わんばかりの視線に負けたのか、アマテラスは「仕方ないか」と口を開いた。
「あのさぁ、春風君」
「は、はい」
「君はその……『異世界召喚もの』の漫画って見るかな?」
いきなり妙な質問をされたので、春風は「は?」と一瞬ポカンとなったが、すぐに真面目な表情になって、
「はい、結構読みますけど……」
と答えると、
「落ち着いて聞いてね。実は……『異世界召喚』は現実に存在しているの」
と、アマテラスはもの凄く真剣な表情でそう言った。
普通だったらこの後、
「あははっ! そんな何言ってんのぉ!」
と、馬鹿にするように笑いながらそう言うところだろう。
しかし、春風はアマテラスが嘘を言ってないと感じたのか、
「ま、マジですか!」
と、大きく目を見開いて驚いた。
そしてアマテラスに続くように、
「ああ、マジな話だ。今も地球のあちこちで、誰かが別の世界へと召喚されてんだわ」
と、ゼウスが答えたので、
「ま、マジですか」
と、春風はタラリと汗を流した。
更にゼウスに続くように、
「そう。そして今日、君のとこの担任教師とクラスメイト達も、その『異世界召喚』によって、別の世界へと召喚されてしまったんだ。そして君を助けた後、君に刻まれている『異世界召喚』の術式を調べた結果、それを行なったのは『エルード』という異世界の住人だというのがわかったんだ」
と、今度はオーディンがそう説明したので、
「そう……だったんですか」
と、春風は納得しながら顔を下向けた。
すると、
「で、ここからが
と、アマテラスが口を開いたので、春風は「え?」とすぐに顔を上げると、アマテラスは先程以上にもの凄く真剣な表情で、
「その『異世界召喚』の所為で……地球は
と言った。
春風はそれに対して、
「……はぁ?」
と、首を傾げると、
「正確に言えばな、その『異世界召喚』の所為で消滅する事になった『エルード』に
「地球も
と、ゼウスとオーディンがそう付け加えたので、それを聞いて春風は、
「はぁ……はい?」
と、何とも間の抜けた声を出しながら、頭上に幾つもの「?」を浮かべた。
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