この魔法師見習い、杖を振ればポンコツ、剣を振れば世界最強です。~魔法使いに憧れる俺、剣の才能だけが異次元チートレベルだった件~

真嶋青

第1話

 俺の名はルーカス。

 片田舎の貴族家に生まれた普通の子供だ。今の年齢は8歳。

 父から受け継いだ黒髪と、母から受け継いだ金色の瞳。どちらかと言えば母様似の中性的な顔立ちは、よく俺を女性と勘違いさせてしまうらしい。

 最近ではやっと間違われる回数も減ってきたが、数年前は基本的に初対面の相手からは女の子と思われていた。

 だからこそ、一人称は『俺』にしている。いつまでも性別を間違われるのは恥ずかしかったからな。


 さて、そんな俺には大きな夢がある。

 俺は、魔法使いに憧れているのだ──。


 

「お願いします! 俺を魔法師として育てて下さい! 俺はどうしても魔法使いになりたいんです! いつかグリモルさんみたいな賢者になるんだ!」

「ダメだ……お主に魔法を教えるわけにはいかないんじゃ!」

「何故ですか賢者様!」

「……残念じゃが、お主は魔法使いには向いていない。お主は剣でも振っていれば良いのだ」


 平伏する俺を見下ろす老人は、俺が住む領地では賢者と称えられている――名をグリモルと言う。

 これまで何度となく魔法を教えて欲しいと懇願しているのだけど、一向に首を縦には振ってくれない。

 いや、正確には、昔は俺に魔法を教えると約束していた。にも関わらず、いざ魔法習得の適齢期を迎えると途端にその言葉を撤回したのだ。

 理由はわかっている。少し前に屋敷で行われた鑑定の儀式だ。8歳になった子供に適正のある才能を見出すその儀式で、俺の魔法使いの才能値はたったの『1』だと判明した――平均的な才能値が50と言われている。


「お、俺に……魔法の才能が無いからですか……。いくら教えても魔法を使えるようにはならないと、そう言いたいんですか?」


 何度となくお願いしても断られ続ける俺は、ついに涙を流してグリモンさんに問いかける。

 物心ついた頃から魔法に憧れ続けてきた俺にとって、それは辛い現実だ。

 俺には魔法の才能がない。自分でもわかっている。

 けれど――――。


「いや違う。たとえ最初の才能値が低かろうが、努力すればいつか魔法は使えるようになるし、才能値だって伸ばせる。全てはお前次第だ……」

「では、何故⁉ 俺はどんなに辛くても修行に耐え抜く覚悟があります!」


 俺の言葉を受けたグリモルさんは固く目を閉ざし、うんざりした顔で投げやりに言い放つ。


「お主の覚悟は認めている……。ワシはお主が赤子の頃から知っているのだ。心から魔法を愛するお主の言葉に偽りがないことも知っておる……だが、それでもならぬ!」

「何故⁉」 

「……お主は剣の才能が高すぎるからじゃ! 才能値『∞』なんて見たこともないわ! なんでそんなに魔法に拘る? いいじゃろ剣で! ワシがお主なら喜んで毎日剣を振り回しとるわ! お主に魔法を教えて剣の才能を腐らせたら、ワシが怒られるわい!」


 そこに賢者としての威厳などない。駄々をこねる少年のようにグリモルさんは地団駄を踏んで喚いた。

 そして、俺も負けじと叫ぶ。

 

「嫌だ‼ 俺は魔法使いになりたいだぁ! 良いから俺に魔法を教えろクソジジィ‼」

「本性を表しおったなクソガキが! ワシは絶対に魔法は教えん! お主は剣を振れい!」


 この一帯を治める領主である父とグリモルさんは昔から仲が良かった。その関係で、グリモルさんのことは物心ついた頃から知っている。

 俺は、ずっと彼の魔法を見て育ってきた。彼の灯す美しい焔火が今でも大好きなのだ。

 だから、 

「それでも俺は、魔法使いになりたいんだぁぁああああ!!」

 俺の叫びが今日も屋敷に木霊す。




 名前:ルーカス・アラディア

 性別:男

 年齢:8歳

 身長:137センチ

 体重:33キロ

 適正職:剣士

 才能値:

  剣士:∞

  槍術士:400

  弓術師:100

  格闘家:50

  魔法師:1

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