アンバランス・サーカス
つきみなも
Circus tent
夜も更けたサーカステント。
識らぬ視えぬが溢れ出す。
巨大タコの空中ブランコや魔女たちの酒場。
植木鉢の花は観客で、演者の化け物が危ない目に遭うたび拍手や喝采やらを大きくあげる。
人外以外立ち入り禁止の看板はトリチウムのライトで飾られ、ネオンライトのような哀愁を灯す。
ここだけ違う別の世界。人間立ち入るべからずは当たり前。
しかしまれに例外も立ち寄る。
『人間の』道化師だ。
人面を仮面で隠して棲み、人間のためになれぬのを隠すため道化師のような役割に徹する。
そのような人間は識らぬ視えぬたちと同じようで、相違点の方が少ないらしい。
人間の道化師は奇形にはできぬ器用な芸やジョークを披露する。
街に伝わる入ったら出てこられないとは話が別。
もはやそこが居場所となるのだ。
恐ろしいとはいうまいな。サーカステントの幕は招かれる時のみ開かれる。
他の住処を奪い棲む人間と違って、テントの幕のみで酒を飲む。
喜びも愛も悲しみもテントの幕から出てこない。
アコーディオンにトランペット、ドラムにバイオリン。
今日も識らぬ視えぬが飲めや食えやの大騒ぎ。
識れど視れどあなたとは別の世界。
入らぬが吉だが入りたければ入りゃんせ。
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