第43話 推し
星野ソラとしての活動や宿題に追われる美優紀は、忙しくも充実した夏休みを送っていた。朝配信ではリスナーと共に楽しい時間を過ごし、日中は勉強に励み、夜にはまた配信を行ったり、次の配信に向けての準備や企画を考える。そんな彼女の日常はリズムよく進んでいた。
しかし、ある日SNSをチェックしていた美優紀に衝撃的なニュースが飛び込んできた。彼女がずっと推しているVtuber「水色こむぎ」が卒業を発表したのだ。
「えっ、水たんが卒業…?」美優紀はそのニュースを見た瞬間、言葉を失った。
心の中に湧き上がるショックと悲しみを抑えられず、美優紀はしばらくスマホの画面を見つめたまま動けなかった。こむぎの明るく元気な声や笑顔が脳裏に浮かび、彼女の配信で楽しい時間を過ごした思い出が次々とよみがえってきた。
その夜、美優紀は予定していた配信を行うことにした。しかし、気持ちを切り替えようとしても、こむぎの卒業発表が頭から離れず、元気がないまま配信を始めた。
「こんばんは、星野ソラです…。今日は皆さんと楽しい時間を過ごしたいと思ってますが、正直ちょっとショックなニュースがあって…」
彼女の元気のない様子にリスナーたちもすぐに気付き、コメント欄には「水たんの卒業だよね・・・」「大丈夫じゃないと思ってたけどやっぱり?」と心配の声が飛び交った。
「実は、私がずっと推している水色こむぎちゃんが卒業を発表して…。すごくショックで…」美優紀は涙ながらに話した。
リスナーからも「水たんの卒業悲しいよね。」「前兆っぽいのはあったけどショック…」「水たんの配信大好きだったのに…」と共感のコメントが次々と寄せられた。
美優紀はリスナーたちのコメントを見て、少し落ち着きを取り戻した。「皆さん、ありがとうございます。本当に悲しいですよね。でも、推しが決めたことだから、私たちは応援するしかないと思います。」
彼女は自分に言い聞かせるように話を続けた。「水たんが新しい道を歩むことを決めたんだから、その決断を尊重したいです。私たちのエゴで無理に続けてもらうのも違うし、これからも表舞台に立ってくれるのかどうかもわかないけど、幸せになってくれるのが一番の喜びだから。」
リスナーたちも「そうだね」「こむぎちゃんの決断を尊重しよう」「これからも応援し続けるよ」と同意のコメントを送った。
「水たんがやりたいことをやれるのが一番です。彼女の笑顔を見られることが、私たちにとっても幸せなんだから。だから、これからもずっと応援し続けます!」
美優紀は強い決意を込めて宣言した。その言葉にリスナーたちも感動し、コメント欄には「ソラちゃん、いつまでも活動続けてね」「一緒に応援し続けよう」「これからもずっとファンでいるよ」といったメッセージが溢れた。
配信の終わりが近づくと、美優紀は感謝の気持ちを込めてリスナーたちに語りかけた。「今日はみんなに支えられて、本当に助かりました。ありがとう。これからも一緒に応援していきましょう!」
「それじゃあ、また次の配信で会いましょう。おやすみなさい!」美優紀は笑顔で配信を終えた。
配信が終わった後、美優紀は深呼吸をして、自分自身を励ました。「水たんの卒業は悲しいけど、彼女が選んだ道を応援し続けることが、私たちにできる最善のこと。これからも頑張ろう。」
彼女は新たな決意を胸に、再び前を向いて歩き出した。星野ソラとして、そして美優紀として、リスナーたちと共に素晴らしい時間を共有するために。
【あとがき】
☆いただけたので何か書きたいと思ったタイミングでのこの話です。
この話は某Vtuberさんの卒業発表のタイミングで書いた物です。
「湊」使ったばかりで、もうちょっとネーミングセンスなんとかならんかと思いながら直接的に「水たん」です。すみません。
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