第38話 帰省②
朝、冴木陽斗は目を覚まし、窓から差し込む柔らかな朝日を感じながら布団から起き上がった。見上げた天井は見慣れぬ天井であったが何故か懐かしい感じがした。
朝食を終えた後、陽斗はふと凛奈の部屋の方を見る。昨日のVtuberの話の続きを話したいと思っていた。ちょうどその時、凛奈が自分の部屋から出てきた。
「陽兄ちゃん、おはよう。昨日の話の続きしようよ。」
「おはよう、凛奈。もちろん。昨日の話、すごく興味深かったよ。友達もVtuberやってるって言ってたけど、どんな感じなの?」陽斗は興味津々に尋ねた。
「うん、湊って友達がカナデって名前でVtuberやってるの。今はそんなに積極的に活動してないけど、続けてる少ない友達の一人なんだ。」凛奈は説明しながら、スマホを取り出した。
「ちょっと見てみる?」凛奈は陽斗にスマホを差し出し、カナデのチャンネルを開いた。そこにはいくつかの動画が並んでいて、カナデの元気な声が響いていた。
陽斗は動画を一緒に見ながら、
「湊ちゃん、元気でかわいい感じだね。どんな配信をしてるの?」
「雑談がメインで歌とかかな。スマホで配信してるからたくさんのことができいみたいで。配信頻度は多くないし今は暇なときに友達同士でしゃべってるくらいの感覚じゃないかな。とはいえ、人気になりたくてやってるんだろうと思うから協力してよ。」
「まぁ時間が合えば見たりコメントしたりはできるけど…」
「いいじゃんいいじゃん。まずはチャンネル登録よろしく!後は切り抜き作ってあげてよ」凛奈は目を輝かせて言った。
「昨日も言ったけど切り抜いて貼り付けてテロップ入れてるだけだよ。それでもいいなら夏休みの空いた時間にでも作ってあげられるけど。」
「さすが陽兄ちゃん!湊も喜ぶよ!」凛奈は元気にお礼を言う。
「じゃあ、どの動画を切り抜くか選ぼうか。」陽斗は凛奈と一緒にカナデの動画を見ながら、面白い場面や印象的なシーンをピックアップしていった。
「パソコンないし、ここで編集するのは難しいから家に帰ったらヒマ見て作ってみるよ。」陽斗はメモを取りながら、動画の編集をイメージした。
その時、リビングから両親の声が聞こえてきた。「陽斗、おじさんに乗せてもらって伊勢参りに行こうか。」
「暑いからやめとこうかな。」と陽斗は一瞬思ったが、せっかくの帰省だし旅行気分を味わいたいと思い直した。
「行こうよ、陽兄ちゃん。今日居るかどうかわかないけど、おはらい町で湊がバイトしてるんだ。もしかしたら会えるかもしれない。」凛奈が陽斗を説得する。
「じゃあ、行こうか。」陽斗は笑顔で答えた。
車に乗り込み、おじさんが「凛奈が外に出たがるなんて珍しいな。」と言うと
「私だってたまには家から出るよ。おはらい町で友達がバイトしてるから会えるかなって。」
「そうか。仕事の邪魔はしたらあかんぞ。」
「わかってるよ。ちょっと顔見て話しできなたらいいなって思ってるだけ。」と親子の会話を続ける。
「湊さんって、どんな人?」陽斗は興味を持って尋ねた。
「湊は元気で活発系かな。夏休みはガッツリバイトするって言ってたからいると思う。」
「それはすごいね。湊さんに会えるといいね。ただ、俺が会っても話することないけど…」
「私がちゃんと紹介するよ。天才切り抜き師だってね。」
「ちょっと!嘘はよくないって。」陽斗は焦り凛奈に詰め寄る。
「ウソウソ。でもほんとに切り抜きは作ってあげてね。今の時代何がきっかけでバズ
るかわかんないんだから。」
「そりゃ力になって上げられたらうれしいけどね。期待はあまりしないでよ。」
「そうやって言いながらちゃんと良い動画作ってくれるの信じてるよ、陽兄ちゃん。」
道中の景色を楽しみながら、陽斗と凛奈は湊のカナデの話で盛り上がった。伊勢参りの旅は、思い出深い一日になる予感がしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます