第16話 ママ
美優紀視点です。ここから数話美優紀視点で進みます。
大森美優紀は、週末の午後、ある喫茶店にいた。今日は特別な日で、中学時代からの親友であり、ソラのママでもある高村玲愛と会う予定があったからだ。
「やっぱりママの絵は最高だな…」
美優紀はスマホに映る自分のアバター、星野ソラのイラストを見つめながら、感謝の気持ちを胸に抱いた。玲愛は彼女の活動を支える大切な存在であり、唯一ソラを演じていることを知る理解者でもあった。
玲愛と美優紀は高校が別々になってしまったが、連絡は頻繁に取り合っており、お互いの活動を応援し合っていた。
「美優紀、久しぶり!元気だった?」玲愛が笑顔で言う。
「玲愛、久しぶり!元気だよ。玲愛こそ、最近どう?」美優紀も笑顔で応じた。
二人はカフェの奥の席に座り、話を始めた。
「ソラちゃん、登録者数1000人おめでとう!配信も最高だったよ。」と玲愛は祝福し、
「ありがとう。玲愛、ソラのママになってくれて本当にありがとう。ママがいるからソラとして活動できるんだよ。」と美優紀は感謝を伝える。
「そんなことないよ、美優紀。私はただ描いてるだけ。美優紀が頑張ってるから、ソラちゃんが輝いてるんだよ。」玲愛は美優紀を称える。
「そういえば、最近切り抜き動画が増えてきたよね。ありがたいよね。」玲愛が話を続ける。
美優紀は少し躊躇しながらも、ある秘密を打ち明けることにした。
「実は、その切り抜き動画を作ってるの、たぶん私のクラスメイトの男の子なんだ。」
玲愛は目を見開いて驚いた。
「えっ、ホントに!?世間って狭いね!でも、大丈夫?」
美優紀は小さく頷きながら答えた。
「うん、今のところバレてない。少し話す程度だし。すごく嬉しいんだけど、熱心に応援してくれてるのが伝わってきて…ちょっと複雑だけど。」
玲愛は真剣な表情で美優紀を見つめた。
「本当にバレてないの?そのクラスメイトがソラちゃんを熱心に応援してくれてるってことは、美優紀のことをよく見てるってことだよね。」
美優紀は少し考え込んだ後、答えた。
「さっきも言ったけどそんなに親しいわけではないし、学校での私はソラの時はとは雰囲気も違うと思う。クラスには他にももいっぱい居てわざわざ私に注目する理由もないしね。それに、まさか推しのVtuberがクラスメイトにいるなんて思わないでしょ。」
【そうか…。でも、美優紀がソラちゃんだって知ったら、きっとその男子も喜ぶと思うよ。美優紀は可愛いし絶対目で追っちゃうと思うし。】
玲愛はそう言いたかったが、美優紀の決意を尊重して、その考えを胸にしまった。
「まぁ美優紀を目で追う理由はたくさんあるけど・・・。確かに推しが教室にいるなんてドラマとか小説の世界だよね。」
「そうそう、だからきっと大丈夫だよ。これからもっと気を付けるようにするしね。」
「ちなみになんだけどその男の子の事どう思ってるの?かっこいい?それともオタク系?」玲愛は少し興奮気味に美優紀に尋ねる。
「ん~、特に特徴はないかな。クラスメイトとしては知ってたけど、目立つタイプの男の子じゃないし、ソラちゃんの話をしてるのが聞こえてきてちょっと話したくらいだよ。」
「Vtuberと切り抜き師、禁断の愛!的なストーリーを期待したんだけど。美優紀って中学の頃からモテるのに全然浮いた話ないし。」
「今はソラちゃんでいっぱいいっぱいなの。そんなこと考えてる暇なんてないよ。」
「じゃあ、今後に期待ってことで。今後の配信内容とかって何か考えてる?」
「この前のサクラちゃんの300万人達成記念配信みて思ったんだけど、オリジナルソングと3Dはすごくうらやましかった。」
「そのライブは私も見たよ。すごかったよね。あの規模は事務所の力というか個人じゃできないレベルだよ。オリジナルソングも3Dもどっちも個人じゃ難しそうだよね。曲っていくらくらいで書いてもらえるんだろ。」
「ほんとはデザインや衣装だってお金かかるはずなんだよ。玲愛がいらないって言うから甘えちゃってるけど、大きくなったら恩返しするからね。」
「そこはほら、ソラちゃんが有名になるのが一番の恩返しだよ。趣味で書いてるだけだし親友からお金取れないよ。そんな話はよくて、他にはないの?」
「いろいろやりたいことはあるけど・・・。ゲーム配信、同時視聴とかも考えてる。あと、できたらコラボとか。」
「おぉ、いろいろ考えてるね。準備は必要だけど今のソラちゃんがすぐできるね。コラボは相手探しからだから時間かかっちゃうか。」
「そうだね。まずはゲーム配信か同時視聴で考えてる。コラボはほんとに可能ならって感じかな。」
「ゲームとか同時視聴をアイドル衣装だと配信微妙じゃない?」
玲愛はそういってカバンからタブレットを取り出した。
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