次の日の朝、冴木陽斗はいつもと同じように学校へ向かった。星野ソラの記念配信や美優紀の英語力に感心した彼の胸には、未だ高揚感が残っていた。

教室に入ると、すでに美優紀と友達の川崎真由、藤田夏美が楽しそうに話しているのが目に入った。陽斗は自分の席に座り、授業の準備を始めたが、ふと耳を澄ませると、彼女たちの話が聞こえてきた。

「昨日ね、うちのミルクが新しいおもちゃで遊んでたの。もう可愛くて可愛くて！」

美優紀が楽しそうに話していた。

「へえ、美優紀の猫、ミルクって名前なんだ。どんなおもちゃ？」真由が興味津々に尋ねる。

「小さな羽根付きのボールなんだけど、ミルクが一生懸命追いかけてて、すごく楽しそうだったの。」

「それ、可愛すぎる！私も猫飼いたいなぁ…」夏美が羨ましそうに言った。

陽斗はその会話を聞きながら、心の中で微笑んでいた。彼自身も猫が好きで、特に星野ソラが飼っている猫のことをよく知っていた。ソラは配信中に、自分の猫について話すことが多く、その可愛らしい姿が視聴者の心を掴んでいた。

（美優紀さんも猫を飼っているんだな…ソラちゃんも猫を飼っているって言ってたし、なんだか親近感が湧くな…）

陽斗は美優紀とソラの共通点を見つけて、嬉しく思った。しかし、猫を飼っている人はたくさんいるので、それが美優紀とソラの関係を示すものではないと理解していた。

授業が始まると、美優紀たちは自分の席に戻り、教室内は再び静かになった。陽斗は自分のノートに目を落としながらも、美優紀とソラの共通点について考えていた。

放課後、陽斗は亮太と一緒に帰りながら、その話を持ち出した。

「亮太、今日美優紀さんが猫を飼っているって話をしてたんだ。」

「へえ、そうなんだ。名前は？」

「ミルクって言うんだって。ソラちゃんも猫を飼ってるって言ってたよな。なんだか、共通点が多い気がする。」

「そうだな。英語喋れるのも猫飼ってるのも特別なことじゃないけどな。」

「そうだよな…。でも、美優紀さんがソラちゃんに似ているところがあるってだけで、ちょっと嬉しいんだ。」

「それはわかるよ。好きなVtuberと共通点があると、なんか嬉しいもんな。」

二人はそのまま楽しい話を続けながら帰宅した。陽斗は心の中で、美優紀と話す機会があればいいなと願っていた。

一方、美優紀もまた、自室で自分の猫、ミルクを撫でながら考えていた。今日の学校での会話が陽斗に聞かれていたかもしれないことをふと思い出し、不安な気持ちがよぎった。

（私が猫を飼ってることを話しちゃったけど聞こえてたかな。これでソラちゃんのことがバレたりしないよね…）

美優紀は心配そうにミルクを見つめた。星野ソラとして活動していることは、誰にも知られたくない秘密だ。しかし、同時に陽斗や他のクラスメイトたちともっと自然に話せるようになりたいとも感じていた。

（陽斗君も、ソラちゃんのことが好きなんだよね。だから、私がもっと近づいてもいいのかな…）

彼女はその思いを胸に、星野ソラとしての次の配信の準備を始めた。彼女の心には、陽斗との交流が深まることで、自分の正体が明かされるかもしれないという不安があった。

しかし、美優紀は同時に、応援してくれているクラスメイトとの距離を縮めてみたいとも考えており、ソラの話を一緒にしてみたいとも思っていた。

それでも1番優先すべきは星野ソラとして多くの人に楽しんでもらえることが何よりも大切だとその考えを振り払った。

（これからも頑張らなくちゃ。みんなに楽しんでもらえるように、ソラちゃんとして精一杯頑張ろう。）

美優紀はその決意を胸に、次の配信の内容を考え始めた。彼女の心には陽斗のことがちらつきつつも、星野ソラとしての活動に全力を注ぐことを誓った。

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