切り抜き師の俺、同じクラスに推しのVtuberがいる

第6話 美優紀の心の葛藤

大森美優紀視点です。

大森美優紀は自分の机に座りながら、心臓の鼓動が高まるのを感じていた。冴木陽斗と中村亮太の会話に耳を傾けながら、内心では不安と期待が入り混じっていた。

「ソラちゃんの登録者数がもうすぐ1000人行きそうなんだけど、記念配信とかあるかな？」陽斗の声が耳に入ってきた。

「記念配信かー。やってくれたら嬉しいけど特別なことって・・・耐久配信とか？」亮太が答えた。

「料理配信とかも面白そうだけど身バレとかもあるし難しいよな。」

美優紀はその言葉を聞いて心の中で苦笑いした。自分が星野ソラとして活動していることを知られないようにするために、注意を払っているが、もしかしたらと不安もあった。聞こえてくる二人の会話を聞きながら、すぐそばで自分の話をされているのは恥ずかしくもあり、そして嬉しくもあった。

しかし、その会話を聞いていた川崎真由が興味を示し、陽斗たちに話しかけた。

「ねえ、何の話してるの？」

陽斗と亮太は一瞬驚いたが、すぐに笑顔で答えた。

「Vtuberの星野ソラの話をしてるんだ。最近、彼女の切り抜き動画を作ってアップしてるんだよ」

「Vtuber？星野ソラって誰？」藤田夏美も興味を示した。

「ソラちゃんはね、俺たちの推してる個人勢のVtuberで、歌が上手くて、英語もペラペラで、歌配信や雑談配信とかが面白いんだ。」陽斗が興奮気味に説明した。

「へえ、面白そうね。ちょっと見てみようかな」と真由が言った。

「じゃあ、休み時間に少しだけ見せるよ」と陽斗はスマートフォンを取り出し、星野ソラの切り抜き配信を再生した。

美優紀は内心ドキドキしながら、友達に自分の配信がどう受け取られるのかを気にしていた。陽斗と亮太が女子たちに話しかけられ、少し緊張している様子だったが、美優紀はそれ以上に緊張していた。

「これ、ソラちゃんの最近の歌配信なんだ。英語の曲も歌ってて、すごく上手いんだよ」と陽斗が言った。

美優紀は内心で自分の配信が友達にどう受け取られるのか不安だった。しかし、その反応はあまり芳しくなかった。

「うーん、なんかちょっと違うかも」と真由が言った。

「そうね、確かにかわいいけど…」と夏美も続けた。

美優紀はその言葉を聞いて内心悔しさを感じた。自分が一生懸命に取り組んでいる活動が友達に認められないことに、心の中で複雑な感情が渦巻いた。しかし、バレなかったことに少しホッとしている自分もいた。

陽斗は女子たちの微妙な反応に動揺しながらも、続けて説明した。

「でも、ソラちゃんは本当に魅力的なんだ。配信中のトークも面白いし、リスナーとのやり取りも楽しいんだよ。いろんな動画を見てもらえれば、もっと彼女の良さが伝わると思うんだけど…」

「でも、陽斗がこんなに熱心に応援してるのはすごいと思うよ」と亮太がフォローした。

「ありがとう、亮太。とにかく、もっと多くの人にソラちゃんの魅力を伝えたいんだ」

真由と夏美は少し興味を持ちながらも、完全に引き込まれることはなかった。

「まあ、今度また時間があったら見てみるよ」と真由が言い、夏美も同意した。

「そうね、また今度ゆっくり見てみるわ」

美優紀は友人にバレなかったことに安堵しながらも、反応が良ければカミングアウトする機会もあったのではないかと少し残念に思っていた。

授業が終わり、放課後になると美優紀は自分の部屋に戻り、パソコンを開いた。星野ソラとしての活動を続けるために、次の配信の準備を始めた。

「私のことを応援してくれている人がこんな身近にいるなんて…」

美優紀は陽斗と亮太の言葉を思い出し、胸が温かくなった。彼らが自分のために一生懸命に切り抜き動画を作ってくれていることを知り、感謝の気持ちが湧いてきた。

「もっと頑張らなくちゃ…」

美優紀は決意を新たにし、次の配信でさらに自分の魅力を伝えるために努力することを誓った。身近に応援してくれる人がいる喜びと、バレるかもしれないという緊張感が入り混じる中、彼女は星野ソラとしての活動を続けていく。

もう1話美優紀視点が入ります。