運命の出会いってこういう事を言うのかな

紅葉

第1話

 修学旅行2日目、快晴。某有名テーマパーク園内。

 アトラクションの中で屈指の人気を誇るジェットコースターを乗り終えると、オレは直ぐに近くのベンチに腰を下ろした。


「やっぱり無理みたいだ。前言った通り、オレを気にせず皆だけで楽しんでくれ」



「やっぱり無理みたいだ。気にせずみんなだけで回ってきてくれ」

「そっか……残念だけど仕方ないよね。園田そのだくんも無理せず───でも折角来たんだから楽しむんだよ。乗り物に乗らなくても楽しいからさ」

「そうするつもり」

「集合はほんとに19時にお土産コーナーで良いの?やっぱり食事は一緒の方が───」

「乗り物乗るんだったら食事の時間決まってる方が都合悪くなる事もあるだろ?有難い誘いではあるけど、遠慮しとくよ」

「そっか、あ、でももしレストランで私たちを見かけたら声掛けてね。1人だと心細いかもだから」

「ありがと、そうするよ」


 班のリーダーとの会話を終え、次の目的地へと足早に向かう班員を見送って、一度溜息を吐く。居心地の悪い環境からの解放に対しての溜息だ。

 あぶれ者のオレに対する担任の気遣いで望まれてないメンバーとして迎えられた人間として、ベストな行動だろう。


「この後どうすっかな」


 乗り物酔いしやすと事前に班のメンバーに伝えていた通り、その体質は事実で、だけど、酔い止めを事前に飲んでおけば、かなり軽減される。

 正直、離脱する必要性も、こうしてベンチで休む必要性も無いほどに体調に変化は起きていない。

 ただ口実が欲しかっただけだ。

 1人になる口実が。陽キャの男女混合グループは、陰キャのオレにはハードルが高すぎる。

 ということで、19時までの時間をどう過ごそうか、地図を開き、そして班の行動スケジュールを照らし合わせ、会わない道順を考える。

 会ったところで合流しない選択をとればいいだけだけど、会わないにこしたことはない。

 気を遣わせるだろうし、気を遣われるだろうから。

 

「どういうこと!?」

 

 地図と睨めっこしてると、隣のベンチから怒声が聞こえた。思わず視線を向けると、スマホを耳に当て、電話相手と言い合いをしている金髪の女性がいた。


「もういい!!」


 話を一方的に切り上げ通話を終え、頭を抱えて俯いた。おそらく、約束の相手からの突然のキャンセル───しかも、落ち込み方から見ておそらく……。


「フラれたか」


 思わず口から漏れた言葉が届いてしまったようで、睨まれてしまった。

 逃げても追いかけて来そうな気迫がある。

 ここは空耳だと思わせる事にしよう。


「うっ……」


 泣き出したら、話が変わってくるじゃないか。


「隣座るぞ」

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