第13話 カラオケ
「90年代縛りだぞ!」
レインはパワハラした
シュンはリモコンをピコピコやっている
メロンはマイクを取った
北京 ベルリン ダブリン リベリア〜
課長代理レイン
ミナアを課の長とした本社営業部2課のNo.2
酒好き、カラオケ好き、家族想い、優しいパワハラ好きの
42歳である
1981年生まれのレインのカラオケは90年代縛りだから
付き合いの良いメロン28歳は、
平成2年から11年の音についてずいぶんと鍛えられた
シュン26歳は
社内飲み会を極限まで拒む若者だったが
営業を外された頃から心境の変化か
レインの飲みに付き合うようになっていた
お手頃な均一価格が売りの居酒屋チェーンで喉を温め
カラオケで喉を鳴らす
レインの絶対的お供はメロンで酒好きな二人
二人は鉄板
シュンが加わり、もう一人いるが今日はいない
ミナア課長はボウリング以外は参加しないし、
係長チャリルは気まぐれであった
さて
レインだが
課長代理の42歳は会社の悪口を一切言わない
酒に呑まれても、
「俺たちは恵まれている」
才女メロンはボロクソだが
酒に呑まれなくても
「クソ会社が!」
「いや、メロンお前考えてみろ。食っていけるだけもらってるだけマシだって」
「正社員にしろ!レインさん、人事部のリーゼ課長なんて、ちらつかせるだけで全然その気ないんですよ」
「大丈夫だ。ミナア課長が今やってる」
「あの配置変更ってそういう意味ですよね」
「お前はやることやればいい、メロンなら大丈夫だ」
「はい」
「シュンはもっと頑張れ」
「はい」
「もっと考えろ」
「はい」
シュンには厳しい
「とりあえず、俺のいいところ言ってみろ」
「えっ」
「えっ、じゃねーだろ」
「ああ、すごい頼りになるっていうか、兄貴肌っていうか」
「行くか」
「はい」
メロンは同調した
「僕のスルーですか」
「行こうか」
「そっすね」
メロンはブラウンの営業鞄を抱えた
「ちょっと待ってください」
シュンはブラックの営業鞄を抱えた
レインの手はぶらぶらしていた
先般の配置転換があってから
メロンとシュンの関係はギクシャクしていた
1995年生まれのメロン
1997年生まれのシュンは4年目を迎えた同期である
メロンはハミルカンパニーの前に他の仕事をしていた
シュンは優秀なメロンに嫉妬していたし
敏感なメロンはそれを察知して
「めんどくせえ奴だな」
レインは不思議で
シュンにはイジワルな発言多し
メロンにはセクハラ的発言多し
でも、
慕われていた
実のところ
ミナア課長には管理職の距離感という不利があるが
レイン課長代理の方が人気が高かった
一緒によく笑っていた、彼は、みんなと
さて、PUFFY
シュンはまだリモコンをピコピコしている
課長代理レインはハンケチを持たない
トイレから戻ったレインの手は
アジアの純真からマイクを受け取った
90年代縛りのレインは歌った
"優しいだけのアイツを忘れて
激しい瞬間を夢見てたい夜"
平成元年の雨が降っていた
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