第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌】二十首連作部門
猫宮さばか
みんなからだをもっている
手の甲に地図模様もつ我が祖母は「どこへも行ったことがない」と言う
何故に目は授かれり 毒リンゴ磨く吾映るぬばたまの夜
新聞を読まぬあなたは読めぬ字を飛ばすがごとく我のページを
さっきまで私の一部だったのにあなたはそれを摘んで捨てる
君の父死にたりと知る先月の古新聞のカステラの型
行くことも帰ることも出来なくて刺さったままの夜半の南瓜
人生の栞の愛の痕跡を火傷の痕に残せる女(ひと)あり
耳彫刻指でなぞって憶えれば夢の合鍵作れる気がした
信号の緑はなぜか青という「進め」は「止まれ」より不確かで
死ぬるまで生きねばならぬ嬰児に悲しみ似合う名前を付けて
死んだなら忘れてください墓標なき死獣が発するその美しさ
シネシネと鳴いても叱られない蝉が羨ましくて今日のわたしは
歩きにくい靴は自由だどこへでも行ける私の象徴である
我歩み来た証左として靴底を少し減らして置いてきた道
裸足ではもはや歩けぬ者たちの靴は蟲踏む為には非ず
はみ出した踵は世界に触れたくて靴に名前を書いていた頃
人工の涙差すとき悲しみも補給されたる心地するかな
「支払いはご一緒ですか」頷いてチョコと税金 帰りに桜
手羽先の骨を抜く手に訴えるこの抵抗が命なるかな
一握の砂をあなたに贈れども手渡すときに少しだけ減る
第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌】二十首連作部門 猫宮さばか @riiie7
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