第18話 未知の世界
目を覚ますと、真っ白な部屋だった、椅子に拘束されている、腕には腕輪がされているが2つが鎖で繋がれてる訳では無い、のに一定以上に引き離すことは出来ない、足には重力の魔法でもかかっているのか、動かそうとしても動かない。
ハッキリしてきた意識の中、自分の右隣にはさっきまでの自分と同じように眠っているショウがいた
「ショウ! 起きろ!」
小さな声で大きく呼びかける、そうするとショウは目を覚ます
「んん…… 僕らどうなったんだ……」
「簡単に言えば捕まった」
「そう……」
「どうにかできないのかよ 魔法で」
「無理 この星についた時から 魔素があまりに無さすぎる」
ハルは船の中での出来事を思い出す、あの船にも何故か魔素はなかった、自分にはあまり知覚出来ないが
このままでは何をされるか分からない、そう思いながら足に力を入れていると、目の前の扉が急に開く
『これで! 私の仮説が間違っていないことが証明されたッ!』
そう手を上げながら入ってきた男は全身白の服、白のコートに身を包んだ謎の若い男だった、結局何を言ってるか分からず首を傾げる
『あぁ これじゃ何言ってるか分からないか』
男は耳にある何かをいじり、さらに首元もいじる
「これで伝わるようになったかな」
聞き馴染みのある言葉が聞こえてくる
「言葉がわかる!?」
「……」
ショウは彼を睨みつけたまま動かない、魔素がないからか気分も悪そうだ
「意志伝達能力はこれで大丈夫みたいだね」
そう言いながら目の前に現れた椅子に背もたれを前にして座る
「で 君たち何者?」
その怪しい目がどういう思惑を持っているかは彼ら2人には理解できなかった
「まずはあなたから名乗るのが礼儀じゃないんですか」
ショウが挑発的な態度をとる
「ほぉ 君達にもそういう礼儀作法があるんだね 以外だ」
ちょっと舐められてる感じがしてショウはストレスが溜まっていく
「私の名前は 木新一 この星で太陽の研究をしている」
「太陽の研究?」
「あぁ 君達が来た星はこっちでは太陽って呼ばれている」
「俺らの星からしたら青いそっちの方が太陽だけどな」
木新は首を傾げて考える
「ものの見事に食い違ってるな まぁ 何があったか想像は着くけど」
続けて彼は2人に質問をする
「んで どうして太陽に来たの?」
2人は何も答えない
「あぁ 別に研究者だからといって君たちの体をバラしたりしたい訳じゃない 私はただ単に太陽について知りたいだけだから」
それを聞くとハルが答える
「太陽に行けるって書いてある本を偶然図書館で見つけたんだ それを読んで」
「ん なんだそれ」
彼らは太陽探査船ソラリアに乗ってきた、それを知る人物など太陽にいるのだろうか、しかしその疑問もある程度予想はつく
「それ 持ってきてる?」
「持ってきてます」
「ハル!」
ショウが声を荒らげた
「なんでそんなに喋っちゃうのさ! もう少し隠そうとか思わないの?」
「別にいいだろ 黙ってたって開放されるわけじゃない」
ショウは呆れた、相手に情報を与えることが、今は些細な事でも後々に取り返しのつかないことになることを理解出来ていない
「カバンは大 小どっち?」
「大きい方です 見つけずらかったらすいません」
そして木新は「おけ」と小さく言うとそのまま部屋を出ていく、少しして戻ってくると手にはあの本を持っていた
「これ?」
「そうです」
「わかった ちなみにもう片方のカバンには何も入ってなかったよ」
もうどうでもよくなったショウは黙っている、どうせ魔素がないから魔法を維持できていないだけだ
「この本 誰が書いたか分かる?」
「わからないです 俺達太陽の行き方しか読めるところなかったから」
木新は「言葉が違うから当たり前か」とぶつぶつ言いながらページをめくり、最後に裏を
みる
「やっぱりか」
「何がですか?」
木新は全てを話す
「この本の著者は60年前 地球から太陽への調査船に乗り 行方不明となった」
木新は淡々と続ける
「彼女は研究者の体調確認の為に乗せて行ってしまったから 私もとても負い目を感じている」
「急に何を……」
その言葉を無視して続ける
「彼女の名は飯島明日」
その名前にハルは気がつく、何度も聞いたアスという名前
「君の祖母に当たる人物だ」
ハルは衝撃の事実に頭が追いつかなかった、ばあちゃんが太陽から来た人……
「これは彼女の日記だ 船に乗った日からの事が書かれている」
日記を閉じ、木新は問う
「読みたいか?」
ハルは即答する
「読みたいです」
「よしわかった 君達にも読めるように日記を複製しよう」
そう言いながら木新は部屋を出て行こうとする、それをショウの声が止めた
「僕はいいです」
「そうか」
「なんでだよ!」
ショウは俯きながら続ける
「あと 僕を1人にしてください」
「ショウ……」
「わかった ただ もう1人の私が来る そいつと話をして欲しい」
「分かりました」
ハルの拘束が解かれる
「ハル君 着いてきたまえ」
ハルは言われるがままについていく
「おいショウ 後でちゃんと話してくれ」
ショウは頷く
2人は出ていき、部屋の扉が閉じられた
「本の複製ってできるんですか? あと俺たちが読めるようにって」
「できるよー 今はもう動物との意思疎通も測れる時代だからね」
いよいよ訳が分からなくなってきた、狼と話せたりすると考えるとちょっとゾッとした
「というわけで ここが私の研究室だ」
扉を開くと、正直綺麗とは言えない空間が広がっていた、粗雑に積まれた機械と呼ばれる物が部屋に散乱している
「うわきったね」
「まぁ 私は昔のものにも価値を感じちゃう人だからね なかなか処分できない」
そして木新は奥の扉から大きな機械を引っ張り出す、隣には椅子があった
「ささ 座って」
「えぇ…… 電気とか流れたりしない?」
正直この星に来てから最初のショックがトラウマになりかけていた
「大丈夫 君の意識からどう言語化すればいいかを調べるだけだから」
「そうなんですか」
あまりにも未知の技術すぎて理解できない、そう思いながら椅子に座る。
昔を思い出しながら待つ、ばあちゃんとの記憶。
「終わったよ」
「え 早い」
記憶を全て思い返す前に声をかけられてびっくりした、装置の横から本が出てくる。
よく見なれた本と見た目は全く同じだった、だが裏面を見ると飯島明日と書いてあった、何故かそう読めた。
ハルは表紙を開く
西暦3658年 10月27日
今、船の中で日記を書いている、そこまでの日記はちょうどページが無くなったから新しくした
そしたら急にあの太陽馬鹿から太陽探査プロジェクトに船医として参加させられた
ふざけんなよ、データとして伝達できないけどここには愚痴を書き込める、バイタルチェックなんて機械で出来んだろって思ってたんだが、この中の奴らはめんどくさがり屋なのかそれをしない、めんどいけど私がいちいち部屋を回んなきゃいけなかった、帰ったら奴を殴る
10月28日
バイタルチェックを済ませると船内を赤いトカゲが走り回ってた、ジョーのペットらしい、言葉を理解できるんだと、名前はグヴァン、呼びにくいわ! あと檻に入れて大人しくしとけ!
10月29日
そろそろ太陽に着くらしい、事前情報だとあの馬鹿が色々と送り続けた結果、どうなってるかがわからんのだと、私は魔素の抗体持ってるからそこは大丈夫だけど、インフルエンザとかが蔓延してたらきついな
あとなんか船内が騒がしいな、何があった?
日にちはわかんない
目を覚ますと何処かの村にいた、どうやら墜落して高い山の山頂についらくしてたらしい、私はどうやら雪に埋まって冬眠状態で耐えていたらしく、山を登った村人が私を見つけたようなのだ
何よりもおかしいのは全く喋らずに脳内にテレパシーが送られてくる、そして私の考えも通じているようだ、そして何故かこの世界の人は名前しかない、だから私はアスと名乗る、そのままの名前でいいのは両親に感謝しかない
ここが太陽なのか、全くと言っていいほど分からない世界だ、言葉は通じず、なぜか魔法があり、テレパシーで会話する奴らもいる、これが昔流行った異世界転生ってやつか
どうやら異世界転生ではなく、ここは太陽のようだ、空に浮かぶ青く光る地球がそういうことだって思わされる
現地の人々は地球をなんて呼べばいいか分からないらしい、まぁ、青い太陽にしか見えないから太陽でいっか、彼らにはそう伝えた
流石に今から山を登って探査船に乗れるかと思ったが、壁が垂直すぎて無理だった。
これも全てあいつのせいだ、昔太陽をいじくって「山創っちゃった」とか頭沸いてるだろ、しかも高すぎんだよ、絶壁だわ!
腹いせも込めて私は村人に木新ってやつが造ったって言ったらキアラール山って名前になっちゃった。
良かったなお前の名前が太陽に刻まれたぞ
村では、謎の病が蔓延していた、と思ったらインフルエンザだった、だがこの世界の人々にはどうしようもないのだろう、魔法とやらも体の状態を安定させるだけで特効薬では無い
というわけで医者としてひとまずこの村で過ごすことにした、この世界の言葉を学びながら、いずれはこの世界の人々を救うための技術を広めていきたい、私の命を救った世界だ、今度は恩返しをする番
一通り周りの人と話せるようになるぐらいには覚えた、だいたい1年ぐらいかかったな、書けるようになるまで時間がかかった
私は医者として村を出た、残りの人生をどう生きようかな
色んな人を治療していくついでに少女を拾った、名前はステラって言うらしい、やりたいことなりたいものが見つからないから旅に連れて行ってって足にしがみつかれた
めんどいから連れていく、そろそろちゃんとした助手が欲しかったからだ、それでこいつがちゃんとやりたいことを見つけられたら、私はそれの応援をしよう
意外と物覚えがいい、医療器具の名前、人体構造などを割と直ぐに覚え、ちゃんと助手をやれている、更にはちょっとした魔法を使えるのが大きい、実質麻酔要らずなのはとても良い、更には過酷な砂漠も乗り越えられた、あの時の出会いは運命ってやつかなとも思った
砂漠の移動快適にできそうだけどな、サーフィンの要領で行けそうな…… ってもサーフィンがわかんないかこの世界は
ステラが1級魔法使いになると言い出した、既に25歳ぐらいで成長を止めてる彼女がついになりたい物を見つけたのだ、嬉しいが、ちょっと寂しい気もする、だが最初から決めていた、彼女の道を応援すると、別れた時、とても泣いていた、私は泣きたくなかった、いなくなってから1人で……
アステラ王国って所に着いた、川魚が美味しいらしく、食べてみたら本当に美味しかった、ちょっと暑いのが好みじゃないが、ちょうどいい、だいたい15年ぐらい旅をしてきたが、私の医療技術はもう十分と言うぐらいに広まった、ここで余生を過ごすのも悪くない
酒場で1人で飲んでると、陽気な男がやってきた、バイルという男は目の前に座ると、私にプロポーズしてきた、酒をぶっかけてやって、すぐに帰った、わけがわからん
1週間後、また同じ男が会いに来た、今度は飲んでないらしくプロポーズも本気らしい、1回ぐらいはデートしてやるか
あれから何度か彼と会い、1年だけ付き合ってやって、結局結婚した、正直残りの人生を共に生きるには最高だ、残りの人生を楽しくしっかり人として生きられると思ったからだ
好き、いや大好きだ、愛してるバイル
私達に娘が生まれた、娘の名前は2人で考えて、サクラにした、単純に私の1番好きな花だからだ、この世界には咲いていない、残念だが、いつかこの子にも見せてやりたい。
嬉しい、ちゃんと母になることが出来た、これから先もずっと母でいられたらいいと思う私の思う人としての人生をしっかり最後まで歩もう
娘に山を登るのは厳しいだろう、だからいつかこの本を手に取る者のために、この世界の言葉で太陽への生き方を書いておこう、別に誰に向けて書くわけじゃない、いずれこの日記を手に取る者の為に
娘が結婚した、相手は王国の副騎士団長ヘンリーという男だ、とてもいい人だと思ったから、許したし、ちゃんと挨拶に来た、旦那は反対していたが、娘が決めたんだ、私はそれを信じてる
旦那が先に逝ってしまった、享年64歳 癌で亡くなった、こればかりはどうしようもない、この世界の技術でどうにかできるものじゃない、命に始まりがあれば終わりもある、どれだけ技術が進歩してもそれはどうにもならない、この世界にそれをどうにかできるものはない、私がもっと…… もっと医者として上手くやれていたら……
彼の死から1年後、娘が妊娠した、私はまだ彼の死を引きずっていたが、まだ私には愛さねばいけない家族がいた、そしてそれがまたひとつ増える、私はまだ死ぬ訳にはいかない
それから1年、元気な男の子が生まれた、皆で産まれるのを見守る、私は動きにくくなった体を頑張って動かし、孫を取り上げた
涙が止まらない、今の地球だったらこうやって人として生きることは出来なかっただろう、旅の中で出会ってくれた皆、ステラ、セレス、バイル、サクラ、ヘンリー、そして孫のあなた
その全てに感謝したい
サクラは孫の名前を決めて欲しいと言ってきた、どうやら親2人はお互いにセンスがないらしく、2人にとって1番の恩人であるという私に名前を決めて欲しいとの事だった
私は悩みに悩んだ、母親とも関連のある名前にしたい、桜の咲く、私の一番好きな季節
ハル
それが私の孫の名前だ
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