青い太陽
シエル
第1話 青い太陽
その国は常に暑い、年間を通して気温はだいたい25度ほどである、それもそのはずでこの国では陽の当たり方が常に変わらないからだ。
国の名前はアルフ王国、大きな川を跨ぐ白く大きな城が目を引く国だ、他国から見れば小国なのだが、国をまたぐ川から採れる魚は色々な国で取引されており、その需要は高い。
城下町の中を少年達は走る
「待てぇい!」
「追いつけるもんなら追いついてみろ!おばさん!」
「お、おばさんですってぇ!」
「さすがにおばさんはまずいよ」
「ばばあじゃないだけマシだろ」
「そういうことじゃないと思うけどな」
そういったやり取りをしながら2人は走る
本を片手に走るハルとその隣を走るショウ、ハルは図書館から一冊の本を盗み出し、今まさに管理人のおばさんに追いかけられてる所だ、ショウはまさか盗んで来るとは思っておらず、ただ慌てふためいたままハルと一緒に走っていた。
細い路地に逃げ込んだところで2人はスピードを緩めた
「はぁ はぁ さすがに撒けたと思うけど」
「そうだな 大丈夫か?」
「うん はぁ ちょっと疲れただけ」
「本当にショウは体力ねーな ははは」
ショウは体力に自信が無いためそこまでの距離を走った訳ではないのにも関わらず息が上がってしまっていた
「あと少し先まで行けばいつもの木があるからそこまで歩こうぜ」
「そうだね 頑張って歩くよ」
2人はいつもの木を目指して細い路地を抜けるために歩き出した
「じゃあ早く読もうぜ!ショウに読ませたい所があるんだ!」
大きな木の下で2人は座りながら話す
「そういえば太陽がどうとか言ってたね」
「そうだ この本には太陽の行き方が書いてあるんだ!」
「えっ?太陽の行き方?」
あまりに突拍子のない話にショウは混乱した。
太陽、朝から夕方にかけて空に浮かぶ青い巨大な星だ。
一説によると自分たちの住むこの星とは距離が近いために、夜に浮かぶ小さな星々達とは比べ物にならないほどに大きく見えるとされている。
さらに太陽は常に燃えている星でその温度が高いため星そのものは青く光っているという、炎の温度を上げると炎は青くなるように太陽が青いのも温度が高いからと昔の学者がそう言った説を提唱している。
距離が近いから大きく見える、高温に燃えているから青く見えるといった話はあくまで説でしかない、だがその説を立証できたものは今までの歴史上誰もいない、それもそのはずでどんな技術を使っても、どんな魔法を使っても太陽に近づくことが出来ないからだ、
ここまでの知識は学校で必ず習う知識だ。
だが隣にいる友人は太陽の行き方を見つけたと言っている。
ショウは少し考えて頭のおかしくなった友人に語った
「あのねハル 太陽の行き方なんてある訳ないよ だいたいそんなものがあるなら太陽に関する色々な仮説がおかしいよ」
「嘘だと思うなら読んでみろよ」
「どうせしょうもないことが書いてあるだでしょ」
「いいから読めって」
「はぁ わかった わかったから読むよ」
ショウは呆れながらも本を開く
「あ 太陽の所の端っこ破いといてあるから」
「これ図書館の本でしょ……」
本の端を破って開きやすくするという賢さはあるのに、どうしてこうも変なことを信じてしまうのかと隣の友人のことを考えながらその部分を開く。
その中に書かれていたのは
「世界の中で最も高い山に登れ そこに太陽の行き方がある」
小さな声で読み上げながら思った、ばかばかしい、自分は10歳だがこんなことを信じるほど子供では無い、こんなものを信じる人がいるとは思えなかった、文の意味を理解した直後、彼にすぐさま言わなきゃいけないと思った
「あのさ こんな突拍子もないことまさか本気で信じてるわけじゃないよね?」
「ん 世界一高い山の頂上に行けば太陽に行けるんだろ?」
「はぁ ひとつ聞くけど世界一高い山は?」
「んー コロボ山?」
「キアラール山 それはこの国の北にある山脈」
同じ学校に通っている友人とは思えない、まさか彼がここから見える山脈が世界一高い山だと思っているとは思わなかった。
確実に授業を寝ているとしか思えなかったが今はその話をする場ではないと思った
「じゃあその山登ろう!キア何とか山に」
「キアラール山 どこにあるかも高さも知らないのにどうやって登るのさ」
「ショウは知ってるだろ?」
「それは……知ってるけどさ……」
キアラール山 学校の授業で必ず習う世界一高い山だ、神キアラが世界を引っ張った際に山になったという伝説が名前の由来である。
しかしそこまでの道のりは遠く果てしない、この国の南門を出て歩くと見えてくる山を超えること3回、その先のソロスという港町からさらに船で3日程航海した先にある、そこまでは学校で習うのだがそこからはショウ自身も知らない、道中には魔物や獣も出ると教わっている。
「道のりは果てしなく遠いんだよ とてもじゃないけど今の僕達には見ることすらできないと思う」
「だったらそこまで体を鍛えて強くなればいい!」
「簡単に言わないでよ 僕ただでさえ体力に自信はないんだから……」
「ショウは体力じゃなくて魔法を鍛えればいいと思うぞ」
「魔法を鍛えるかぁ……」
実際ショウ自身は魔法の適性がある、そのため学校卒業後は魔法を教わるために魔法学園への進学が決まっている。
対してハルは魔法の適正はかなり低い、その代わり運動神経が良いため学校卒業後は王国騎士を育てるための騎士学校に行くことが決まっていた。
「だいたい2級ぐらい取れば旅ができると思うけどな」
「そう簡単に言わないでよ 2級は1級ほどじゃないけどすごく難しいって聞くよ」
「ショウならできるって」
「まぁ 頑張ってみるよ 旅のために」
「本当か!」
「山に観光しに行くだけだけどね」
「そこは頂上まで登ろうぜ」
「いやだね あくまで観光だよ」
実際のところ少し興味が湧いてしまった、世界一高い山を身近で見てみたい、世界各地の景色を見てみたい、そして何より2人で旅をしてみたいとは前々から思っていたことだ。
「しょうがないけど 決まりだな!」
「うん」
「とにかくまずは俺達はそれぞれの学校を卒業する!俺は旅のために強くなれるように ショウは旅ができるぐらいの魔法が使えるように」
「そうだね 頑張るよ!」
「おう!」
「ハルの方こそ頑張ってね!」
「当たり前だ!」
少年達の幼き夢がふたつの拳をぶつけることで1つとなる、これから先の道で2人は少し離れてしまうがこの誓いが彼らの力であり動力源となる。
「ショウ!」
「何?」
「ありがとな」
「こちらこそ」
初めての心からの感謝にショウは心から親友で良かったと思う、それはハルも同じ事を思っていた。
それから7年が過ぎ、2人はお互いの学校を卒業した。
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