一話 C
パワハラ上司はいないのにも関わらず、音を立てずに退室した。カメラは持ったまま。
魔王。扉を開けて速攻で倒せるようなコアモンスターじゃない、紛れも無い本物。
もう一回扉を開ける。しかしそこには、かの姿は無い。
屈強なコアモンスターがいた。
勇者というのは、死んだ瞬間に、誰かに受け継がれる。
継がれる、というよりかは、新たに選ばれるものだ。
勇者が死んでから数秒で、全世界にその情報が広がり、全世界の人々の再検査が行われる。
籍がいつの間にか無くなってた俺は、とうとう国籍不明の浮浪者になってしまったが……気にはしない。
さて、弔い配信だ。
「勇者パーティーのカメラマン、黒宮です」
《何これ、新しい配信?》
《誰こいつ》
《カメラマン?》
《何この目、死んだ魚?》
《チャンネル乗っ取り?》
《終わったと思ったら、なに配信してるんだよ》
一旦、さっきまでの配信を切った上で、新しく題名無しで枠を作った。
……思ったよりも、やる事が、淡々と思い浮かんでくる。
「こちらのチャンネルは、二週間後に削除されるように設定致しました。誠に残念ですが、どうか、ご理解いただけますよう、お願い致します」
《まあ歴代だってそうやけど》
《泣けよマジで、ユーシャ達、死んだんだぞ》
《お前、空気読めよ》
《いや……泣かなくてもいいけど、悲しもうぜ》
《カメラマンじゃないの? 何? そっくりさん?》
チャットの反応は、悪い。
いや、蝿だらけの半分生肉モンスターを差し出されないだけマシか。
「付きましては、所属ギルド、勇者プロテクトも、法に則って、解散となります」
《何でこいつが仕切ってんの》
《死んだってのに》
《お前も死ねば良かった》
《株はどうすんだよ! おい!》
「詳しくは、過去の勇者の死亡時による世界共通の対処法をご覧下さい」
死んだのだ、彼は。
見せ場もなく、呆気なく、先代より圧倒的に弱いまま。
葬式より先に、することはある。
「また、こちらの目黒ダンジョンについては」
カメラマンになる必要はない、だが、ブレなく、扉の先、本来のボスを映し出す。
カメラを一旦床に置いて、下からの固定視線で、フレーム数等関係なく、残像が幾重にも重なって見えるくらいの瞬間移動で――
倒して帰ってくる。
さっきの言葉の間にスペースは挟まない。
「ご覧の様に、破壊しましたので、近隣住民の方は破壊の余波にお気を付け下さい」
カメラでは、残像の俺が全部倒したのが一瞬映っただろうが、まあ仕方がない。
もう、勇者ユーシャは死んだ。
「今回はご迷惑をお掛けして、誠に申し訳御座いませんでした」
俺の謝罪で……配信を、切った。
案の定終了後にも、
《冷たい》
《マジで誰》
《お前が代わりに死ねばよかったじゃん》
《感情見せろ誠意見せろ謝罪しろ》
など、散々な言われようだ。
確かに、現実として処理するには、あまりにも呆気ない幕引きで。
確かに、俺はそんな彼らから見ると、異常なのかもしれないが。
それでも……
幕は、閉じた。
作者から。
ざまぁに関しては別の軸でやるよ(やるとは言ってない)
スレネタもノルマなので出来ればやりたい(やるとは言ってない)
一応今回は、ダンジョンネタをやったら(主にPV数が)どうなるのか、というのをやりたかっただけなので、あんまり次回からは期待しないで下さい。
ダンジョンの説明に関しては(中略)で済ませましたが、イレギュラー(お察し)やパンデミック(ニュアンスでお察し)等、読者がある程度ダンジョンモノを嗜んでいる前提でございますので、ぶっちゃけ必要なことやセオリーから外れたモノ以外は説明しません。
タイトル回収はしません。なんやかんやあって新勇者ともう一回旅に出る流れまでは作りましたが、それ以降はちらっと出てきたギルドにざまぁするまでしか考えてない。
ではまたいつかお会いしましょう。さようなら。
(いつかはPV数やハート、星の数次第で決まる)
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