空き瓶
悪本不真面目(アクモトフマジメ)
第1話
木に縛り付けた少年の喚く声が心地よかった為、俺は寝てしまってたようだ。目が覚めると焚火のゆらゆらと動く向こうにその少年が目を見開き俺を睨んでいる。俺は奴に目が合うように視線を動かした。ピタと合った時、目をカッっと見開きまた喚きだした。
「お前、許さないぞ!僕の、僕たちの村を!両親を!妹を!みんなを!よくも!」
俺は転がっていた瓶を手袋をしていない左手で持ちながら奴にフラフラ酔っ払いのように近づいた。その間に瓶の中の何かを飲もうと口に運んだが何も入っていなかった。俺は奴の目の前に来た時にそのことについて奴に聞いた。
「なぁ。この瓶の中身って最初っから入ってたか?」
「・・・・・・知るか!そんなことよりお前は何なんだ!何で村を燃やしたんだなんでなんだ!」
「そうか、知らないか。どうだっただろ、空き瓶だから拾ったんだっけか?酒入ってなかったか?というか俺は酒とか飲んでただろうか?今俺は酔っぱらってるように見えるか?」
「だから知らないって!!そんなことよりも僕の質問に答えろ!」
「そんなことって何だよ!俺にとっては大事なんだよ」
俺は空き瓶を眺め、中を覗いた。俺の目は昔女から意外と綺麗な瞳と言われたことがあった。だから空き瓶も見られてもそんなに嫌じゃないだろう。中には何も入ってはいない、空っぽだ。どうも何か入ってた形跡も感じない、臭いもそんなにしない。俺はしばらく空き瓶の中身を瞳をぐるぐるさせ見ていた。親近感を覚える。空き瓶は似ている、いや俺自身だ。これが正しいかどうか少年に聞いてみた。
「なぁ。俺って空き瓶だよな?」
「・・・・・・お前はさっきから何を言ってるんだ!?いい加減にしろ、目的は何だ!何で僕だけ、僕だけ生かしたんだ!?」
少年は俺の顔を見ると、成長したというよりも老けた顔をしていた。眉間にシワがより口角も下にグンと下がっり皮膚も乾燥していて潤いを感じなかった。俺は可哀そうと思い、瓶を奴の顔にかけようとしたが、空っぽだった。そうだこれは空き瓶だった。
「ごめん」
「・・・・・・お前それ空き瓶って自分で言ってたろ・・・・・・」
人生の先輩の目をして少年は俺を軽蔑していた。俺はその目でそろそろ本題に入ろうと思った。
「じゃあ今からダラダラ話すから別に耳に入れなくてもいいし、喚きたいなら好きに言ってもいい、ただダラダラ話すから」
「・・・・・・」
俺はダラダラと話し出した。意外にも少年は黙って聞いていた。
「5歳で自分の村を燃やした。燃やした。魔法で。俺魔力が多いんだよ。先天性の病気みたいでさ。体内にある魔力の袋がパンパンで破れてないのが不思議みたいで、そこの病院の街も燃やした。魔力が溢れちゃうんだ。酒飲んで吐くみたいな感じなんだ。そうだから俺は酔っぱらっているんだよ魔力に。ひっくひっく。でもさやっぱりやっぱりなんだよ。ほら見てくれよ。」
俺は手袋をしていた右手を少年に見せる。
「・・・・・・」
少年は軽蔑な目をしていたのに、老け顔だったのに俺の右手を見て可愛い顔をしてくれた。うるうるとした怯えた目をしていた。俺はそれが嬉しいと思えたらよかった。せめて空き瓶らしくどうでもいいと思えたらよかった。が、俺は凄く気分が悪かった。その目が、だからやろうと思った。
脱いだ手袋が風に
「わぁーわぁー!わぁー!」
少年は暴れだした。酷いじゃないか。やはりあの目は嫌いで正しかった。結局予定通りにやることになった。俺は腰に付けていた剣を取り出した。
少年は俺の涙のせいか、充血した目で剣を見ていた。魔力の袋って言うのは・・・・・・俺は声を出して喋ることにした。
「魔力の袋って言うのは、心臓の下にある、別名心臓の別館って言うところにあるんだ。お前にもあるはずだ。」
「・・・・・・僕にはない」
「そう魔力はお前にはない、それは分かる。ただ袋はある」
「・・・・・・」
「それが理由だ」
俺はそういうと剣を心臓の別館に突き刺した。血がドボドボ出てくる。心臓に当たってもよかったが、 別館がそれを守るから恐らく当たってはない。本当に面白いようにドボドボ血が出ている。そしてこの剣は魔力を吸収できる剣だ。俺が作った。太古の技術を使って、そもそも人間は元々魔法が使えなかったらしく、色々な実験の元、現在では魔法が使える人間が多くなったんだ。ああ、、今のも声を出して喋ればよかった。少年に聞かせた方がよかった。剣が錆びたような色に変色していく、ドボドボと血も出なくなってきた。チラっと少年を見ると目を瞑っていた。俺はそうなんだねと思った。
俺は吐くほどの魔力が段々なくなっていき、この剣に吸収されていっていると実感していた。しかしそれでも腐った右手は腐った右手のままだった。ただ時間がかかってしまい、夜から朝になっていて眩しく、どぼどぼと流れていた血が輝いて見える。
少年は目を瞑ったまま眠ってしまっていた。俺はモーニングコールのように少年の心臓の別館に魔力たっぷりの剣を突き刺した。
「ガァ!」
少年らしくないしゃがれた声でそう言った。ドボドボと見飽きた血が流れていた。空っぽの袋に魔力が注がれていく、しかし残念なことになった。少年は少量の魔力に耐え切れずあっという間に全身腐りきってしまった。
「ヴェェェェ!」
腐った少年の力は強く縛っていた縄をなんなく引きちぎった。初めての魔力に興奮しているようだった。俺はその様子をしばらく見ようと思い後ろへと下がり、俺が眠っていた場所まで戻った。そして腐った少年は俺を追いかけるが、さっき掏った風とは別の風が吹いてしまい、焚火の火が腐った少年を襲った。
「ヴォヴァヴァヴァヴァ!」
腐った少年は黒焦げになり倒れ動かなくなった。俺は刺さった剣を抜いた。剣はきれいな顔をしていた。俺は気持ち悪くなった。ふらふらと俺はしばらく歩いた。賑やかな街を見つけた。俺はここで吐くことに決めた。その時には魔力が俺の傷口をふさいでいて、俺はヒビすらも与えられてもらえなかった。空き瓶なのに変だろ?
空き瓶 悪本不真面目(アクモトフマジメ) @saikindou0615
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