最終話 ラストマーチ
立て続けに起こる殺人事件
容疑者が友達かもしれないという思想に囚われたワタルは体調が優れず仕事を休むことにした。
体調が悪いと言っても本当に悪い訳ではなく
ただ憂鬱で、本音を言うと
めんどくさかったからである。
また昼のワイドショーを見ながら
昼ごはんを食べる。
今夜はどうやら満月のようだ。
考えないようにしたが
ケイタの事は頭の片隅にずっと引っかかっていた。
お昼ご飯を食べ終わり少しダラダラした後
眠りにつく。
気がつけば19:00前になっていた。
「寝過ぎたな。」
1日中家にいたので少し散歩をする事にした。
小田急線沿いを何気なく歩いていたワタルは
目の前から歩いてくる1人の男性に目を奪われた。
年齢は20〜30代あたりだろう、だらっとしたオーバーサイズの服を着ているが
体型はかなり細めだ。
ガリガリという表現がピッタリだった。
その男性はワタルとすれ違うと高架下の角を曲がっていく。
ワタルはそのまま着いていき
街灯も無く人通りも無いところで
男性の後ろから首元を持参の骨スキ包丁で切った。
血が霧吹きのように飛び出してきたが
そんなのは慣れっこだ。
その場に倒れ込む男性はすでに痙攣している。
そのまま左手首を抑え左肩の根元から切り始めた。
今まで使ってたのは前回警察に証拠品として持っていかれたので新品のを買った。
新品の切れ味に感動しながらも
右腕、左脚、右脚とスムーズに切っていった。
四肢を切った後に男性がすでに死んでいることに気づいたワタルは
「どう?どう⁈
痛い?あっ死んでるかもう。
切られた時さ、どう思った?
恐怖心?それとも絶望感?
それとも、、、"殺意"?
なぁ、殺意は死んだらどうなると思う?」
その時だ
ワタルは思い出した。
「あ、そうか。
この質問、、俺が最初にケイタを殺した時に聞いた質問だ。」
そうだった。なんで忘れてたんだ。
忘れてたってより無かったことにしたのか。
入社してすぐだった。
ケイタと仲良くなり
よく遊ぶようになった時だ。
映画の話をしていた時だ
四肢を切る猟奇的殺人犯の内容だった。
ケイタが楽しそうに
俺ならこう殺すかな、細い人間だと切る肉の範囲が狭いから短時間で殺せそうだよな
と話しているのを横で見て
ワタルはケイタで試したくなった。
ケイタは細身でまさに実験するのにピッタリだった。
だから映画の内容通りにやってみたんだ。
ケイタの言う通りスムーズに殺せた。
それから女性ならどうだろう。
そう思うようになり男女問わず同じやり方で殺していった。
最近ケイタとか駅のホームから飛び降りた女
が見えたのは幻想か。
実際あの日人身事故なんで起こってなかった。
ただ殺した女が出てきてびっくりして気絶しただけだった。
ケイタの真っ赤なシミがついた服も
俺が殺した時に着てた服だ。
快楽が凄すぎるあまり
殺した人の事を忘れていたのか。
ワタルはずっと答えが欲しかったのだ。
殺される時人は何を考えるのか。
恐怖心や絶望感の他に感じるもの。
それは殺意なのではないか。
なんで俺が、なんで私が
殺されるんだ。
死ぬならこいつを殺してやりたい。
ワタルが気になっていたのはその先のことだ。
死んだあとその人の殺意はどうなるのか。
何人も殺してきたがその答えには今だに辿り着けていない。
ワタルは男性の目をくり抜き、その場から離れた。
後日。
「世田谷区で起きている連続殺人事件ですが今だに犯人は見つかっていません。
すでに12人の方が亡くなっていますが
警察は引き続き捜査を続けていく方針だそうです。」
「う、、かっ、だす、、、だすげて。」
「ごめんねぇ。答えが見つかるまでは辞めるわけにはいかないんだ。
濁りに濁りきったこの僕にあなたは教えてくれますか?」
「殺意は死んだらどうなると思う?」
「濁り/ insanity」 與座 宙
濁り/ insanity 與座 宙 @mimigo
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