第9話 アルセルタス(古飛空術)



ぐわああっとウェルが大あくびをする。


ウェルは熊獣人だからあくびも迫力ある。


まあるい耳がぴこぴこ動いてかわいい。


ゼデも瞼が半分しか開いていない。


ナイクになるともう机の上に丸くなって寝ている。


ほとんど猫。


「お前たちー。ここ、大事なんだぞー。」


セルタス(飛空術)は万一位置確認の出来る機器を搭載したプギアゼラ(魔導飛機)やプギデ(捕竜機)を失ってセルタ(受風航機)だけで生き延びなければならない時の必須技術だ。


すでにセルタでプミタスグリに来るような子供はセルタスをマスターしている。


一人前のプミタスとしてはアルセルタスと言う古代の航海術から発展させた方法を習得する必要がある。


アルセルタスでは天測儀 と羅針盤を失っても手指で太陽や島の位置を測ったり空気の匂いや風で自分の位置や方角を把握する。



事故の時に必ずしも天測儀や羅針盤を持っているとは限らないのだから。


とはいえ座学が子供達にとって退屈なのは仕方がない。


教師は仕方がないので天測儀や羅針盤を預かって実地でのアルセルタスの指導をする。


「みんなー。表に出ろー。」


今まで半分寝ていたのが嘘のような機敏な動きで子供達が駆け出す。


教師は子供達の態度がはっきりし過ぎていてつい笑ってしまう。


子供達はセルタでもプギデでもいいから空を飛んでいたいだけなんだ。


「エルサ先生、これは?」


「みんなの位置がわかるようにする発信器よ迷子にならないようにね。」


そう言いながらエルサ先生は腕輪のような物を子供達に配る。


「教練が終わるまでつけておくのよ。」


セルタス教練をすると聞いて応援に3人の教師が出て来た。


子供達をプギアゼラに乗せて島から離れた所でセルタで出し、自力で帰って来れるかの試験をする。


子供を連れて行く教師や周囲の魔物や空賊(これはプミタスとは別に存在する盗賊の飛行版だ。)を警戒する教師、子供達の位置や行動を把握する教師など手分けしている。


セルタス(航法)はプミタスにとって重要な技術なんだ。


プギアゼラはプギデを搭載していなければ結構沢山の子供が乗れる。


「このクッキーあまじょっぱい、変な味。」


子供達は遠足気分だ。


「それは非常時用のレーションなんだから今食べちゃダメ。ポーチにしまっておくように。」


子供達を乗せたプギアゼラは島が見えなくなった頃合いでぐるぐると旋回するとハッチを開く。







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