第6話 ワイバーン1



「そうだー。今だー。的

標的に向けて銛をはなてー。」


小型の捕竜機(プギデ)は推進器が付いているので受風航機(セルタ)とはかなり勝手が違う。


プギデは1人乗りの小型戦闘機の様なもので3連のボウガンを搭載している。


プギデは強力なバリスタを搭載した中型機の魔導飛機(プギアゼラ)の支援をする。


子供達は8歳になるとこのプギデの操縦の訓練を始める。


「うわー、上昇しながら加速しているよ。」


年長者の練習にゼデが歓声を上げる。


セルタでは上昇時に加速する事は出来ないし。


ワイバーンなどを狩るには高高度から標的の背後に回って高速度のまま一気にボウガンを放たないとワイバーンの硬い皮膚を貫く事が出来ないし捕まってしまう事があるからね。


ゼデと同年の子供達はセルタでの操縦訓練中だ。


魔力切れや推進器の故障時などセルタの航空術が生きる。


セルタの操縦はプミタスにとっては命綱なんだ。


子供達からすると自転車に乗っているようなもんなんだけれど。


まあ将来、狩りをするのか後方支援をするのか別の職業を選ぶのかは別として自転車ぐらいは乗れないとって言うぐらいのノリだ。


青い空に白い雲。


ヒラヒラと子供達のセルタが舞っている。



「あっ。」


上空を見上げていた子供が声を上げる。


年長の子供が操縦していた捕竜機(プギデ)が黒い影に弾かれた。


「手負いではぐれのワイバーンじゃ。」


何故か長老が嬉しそう。


弾かれたプギデの心配はどうした?


そこはその世界の最先端魔導飛機、即座に組み込まれた保護回路が作動して自動帰投モードになる。


同時に載っている子供の首に巻かれた小さな魔導浮動機(プミル)が作動して降下速度に干渉して安全を確保する。


ゼデもプギデに合わせてセルタを降下させる。


着地したプギデの操縦室で目を回している子供を教師が保護すると、駆け寄って来た長老がニヤリと笑って言う。


「ゼデよ、乗ってみたいんじゃろ。いいぞ、乗ってみろ。」


「わしらもプギアゼラ(中型の魔導飛機)で出るぞ。ああ気の早いやつがもう出ておるか。」


既に上空では沢山のプギデに混ざって教師達が操縦するプギアゼラが飛んでいる。


そしてそれを遠巻きにしてセルタが舞っている。


プギデは3本の銛を放つと補給のために降りて来る。


教師はこの機会に今セルタで飛んでいる子供達にもプギデを経験させるチャンスと考えた様だ。


降りてきた子を順次交代させている。


ゼデの同年の子供達は大喜びしている。


この人達は怖いとか危険だとかは考えられないみたいだ。


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