IGNITE DELETE LIE

貝袖 萵むら

第1話 人生最後の日


「はあ。はあ。クソッ。プレイヤーの野郎どもめ。」

僕はひたすら走っていた。城下街を通り過ぎ、大きな商店街を抜け、大きな違和感を感じるほど街の中心にそびえたっている超高層マンションのように見える城に向かって走っていた。僕は作戦に失敗した。失敗したから今からプレイヤーに殺される。

この世界では3つの階級がある。プレイヤー、NPCそして奴隷だ。僕は反逆罪だから死刑にさせられる。

「追い詰めたぞ。宙気貝吹、覚悟しろ。」

「教師様、どうなさいますか。」

「こいつは、はりつけにする。足や腹を銃撃して、身動きを封じろ。」

「かしこまりました。全員構えろ。」

人間が死んだらどうなるのだろう。

まず人間だけが、死んだら転生するとか天国か地獄にいくというのは科学的には変だと私は思う。

結論から先に話すと最終的な考えは死んだら、転生であれ天国であれ地獄であれ、現在の世界とは別次元の場所に行くというものだ。

「がふっ。く、そ。」

「NPC3660宙気貝吹、確保。」

彼は頭の中で死に対する考察を述べ始めた。

順を追って私はこう思うということを話したい。

人間だけが他の生物とは違う点が意識、思考、煩悩に近いものだ。思慮が人にはある。それは、自殺を人間だけが行うといわれているところからだが、これはハチも同様にある。しかしハチは種族の繁栄を守るための犠牲に行うのに対して、人間のものは明らかに生物的な観点から逸脱している。

「教師様、今、無事に反逆者を逮捕いたしました。」

「よし。そのまま、磔台まで連れていけ。」

そしてこの意識のようなものこそが、生存本能だけではない部分、脊髄反射で、動かないほかの生物と違う少し変な部分が魂であると思っている。

古代文明にはマチュピチュやナスカの地上絵といったものがある。これらは明らかに空もしくはその先の宇宙からの視点を意識した位置、構図をとっており、なぜ、地上に生き、空を自由に航行できない状況下でこれを作ったのかというのはやはり、死んだら天に昇るという考え方だと私は思う。

「おい。反逆NPC、ついてこい。」

死ぬ間際は人の声がよく聞こえるとされており、ラジオや好きな音楽を聴くと反応すると私は思う。また、その際、質量が何gか減るらしく科学的には筋繊維の萎縮、力が抜けたからだといわれている。

「たく、国民選挙でのプレイヤ―の投票を一人に誘導させるか。よく考えたものだ。まあ、今その策略も無駄に終わった所だがな。はは。」

しかし、何gかすら減らなかったら、こんな考察はそもそも立っていただろうか。何gか減るという状況があったから、筋繊維の萎縮という考察が生まれたのであって、たとえそれが原因でも質量が減ったというのは何らかの可能性を捨てきれない。

まず、魂の質量が存在するなら気体だと私は思う。

この気体は意識の集合体のようなものであると私は思っている。

「磔台に到着いたしました。」

「よし、これより、NPC3660を磔で情報を吐かせたのち、首を落とす刑に処す。」

なぜ死ぬ間際に人の声がよく聞こえるのか。それは、意識の集合体となった状態だと、第六感的気配や、耳がなくともよく聞こえるような状態なのではないだろうか。

目の構造は目がないと難しそうだが、耳の構造とは、空気を吸収するためのもので機械的にも生み出せる可能性もあるもの。つまり、耳というものがなくとも空気が際限なく入ってくる解放された状態であれば、よく聞こえるのではないかというのが私の考えだ。

ではその気体はどこに昇るのだろうか。天なのだろうか。空には未知が多くあり、その可能性は高いですが、古代文明を建設した際は、気体や液体という分け方はあまりなく、現在のように検証できないでしょう。

であるならば、現在計測すればいいと思うかもしれないが、肉体から質量がなくなった直後に消えているというのであれば、それはもう現在の人間ではまったくもって視認できない、別次元へといったのではないかと考えている。

「さあ情報を洗いざらいはいてもらうぞ。」

「もし、死んで転生できるんなら、この星だけは嫌だな。」

NPC3660宙気貝吹は死に対しての考察が終える頃には、磔台に固定され、筋肉質の男に顔を殴られていた。

「おい、さっさと、吐け。」

NPC3660は過去を振り返っていた。

「レシート決済アプリと選挙のを組み合わせて選挙の投票用紙をレシート決済アプリで読み取ってお金をプレゼントする仕組みを作れば、NPCの投票率が上がるかもしれない。もし有名インフルエンサーがこの作戦に乗ってくれれば、プレイヤーのみが住みやすい街がNPCのものへと変わる。」

「おいおい。ついこの前、海の上に電動スクーターで走る交通路作りたいって言ったばかりなのに今度は、選挙か。忙しいな。未来の首相さん。」

学校が立ち並ぶ国の一つの教室で、宙気貝吹は国の未来を案じていた。

「今回は今までとは違う。レシート決済アプリ開発者とアポイントを取ってある。今回の選挙こそは僕らNPCの未来を掴んでみせるよ。」

先ほども伝えた通り、この現実世界では、3つの階級があった。プレイヤー、NPC、そして奴隷。プレイヤーの中でも上位の権限を持つ教師はNPCを奴隷にする事が可能だった。そのため、NPCの者はプレイヤーに逆らわず、慎ましく暮らしていた。

作戦を実行しようとレシート決済アプリの開発者と連絡を取っていると、選挙前日の計画実行日にアプリ開発者から、裏切られた。家の前には、反逆容疑者を捕らえるべくして集まった教師信仰軍がおり、彼は捕縛される事を恐れ、家の裏口から走って逃げていた。

そして現在に戻る。

NPC3660宙気貝吹は、兵の一人である筋肉質の男に殴られていた。

「がふ。かは。」

「おら、とっとと情報を吐け。誰かに唆されたて今回の作戦を実行しようとしたんじゃないか。」

「全て僕が計画した事だ。誰かに言われてやった事じゃない。」

宣教師の一人が筋肉質の男の肩に触れ動きを静止させた。

「無駄だ。どうやら本当に一人でやったことらしい。おい、断頭台を持ってこい。このまま殺そう。」

宙気貝吹は断頭台に自身の体を固定され身動きが取れなくなっていた。

首を落とされる前に宣教師は彼に最後の質問をした。

「最期に言い残した事はあるか。」

「ほんっとうに息苦しい人生だった。」

彼は死んだ。首を真っ二つに切られ無残な死を迎えた。

彼は死んだら無になると思っていた。だからこそ命を懸けた。

彼は死んだ。完全に終わった。何もかも。

「んじ。なんじ。汝」と声が聞こえる。

声がいきなり大きくなる。

「汝、拝聴し答えよ。」

え。

闇から声が聞こえた。

「生物は皆死んだら天に昇るか地に落ちるか。そして二度と戻ってはこない。夢の中のようなものだ。」

よかった。生物は死だけは平等だったんだ。

「しかし、私は汝のように【人の心を動かせる人間】は生き返らせてきた。脳が変わるのだから前世の記憶はない。

私は汝の国もその隣の国も全て星全体がすでに腐っていることに憤りを覚えている。

だからこれまで汝のような【人の心を動かせる人間】を何百人もの数を生き返らせてきた。

汝の星を見渡しても今までこの程度の数しか【人の心を動かせる】と判断できた人間は存在していなかった。

その上、これらの数を生き返らせても2回以上【人の心を動かせた人間】はほとんどいない。

最期まで生き返らせた人間は両手で足りる。」

へーそうか。神は傍観していたんじゃなかったのか。今まで散々神のせいにして申し訳ない気持ちになった。

「最期まで生き返らせた人間はどんな人。どうなるの。」

「………。どちらも私にもわからない。」

そ、そうなんだ。

「今から汝には神になることより困難な依頼をする」

神になることより?そもそも神ってなれるのか?

「今から汝には汝の惑星にある3つの国を建て直し一つにしてもらいたい。」

はあ。

「僕はもうあんな世界に戻りたくない。僕はもう無になりたい。自分のいた国の闇を知っただけで殺されたんだよ。」

国って3つだったんだ。鎖国だったから知らなかった。

「はあ。今まで人の心を動かそうとして亡くなった者はほとんど汝のように言う。そして無謀だけどここからが本番。」

ここからが本番?

「汝には国を一つにし、恒星間航行を実現し、そして数多ある他の星も救っていってもらいたい。」

え。どういうこと。今なんていった?

「恒星とは太陽が例だ。宇宙を無限に航行する船のようなものを作り他の恒星の周りの惑星に行ってほしいと言っている。」

いや。

「理解できない。そんなこと考えたことすらない。」

「だろうな。国の中の景色しか見ていないものには理解するのに時間がかかる。だから誰も実現できていない。だが他の惑星はさらに複雑で不可解で異質。問題も一目ではわからないだろう。」

他の惑星も大変なんだ。そうか。

「汝を今から強制的に生き返らせる。諦めたければ普通に生きろ。そうすれば次は呼ばない。」

もう無理だ。闇がこの国だけじゃないのに全部背負うなんて、僕程度では何もできなかったんだ。潔く生きるべきだった。普通に生きるのが一番賢いんだ。やっと気づいた。

次は普通に生きて普通に家庭をもって普通に暮らそう。国の人間に目をつけられたら簡単に奪われてしまう平穏を静かに慎ましく祈りながら怯えて過ごそう。でも。でもなんか。

「次は呼ばないって寂しいこと言うじゃん神様。」

「優しさだ。今まで多くの人間の心が壊れていくのを見ているからだ。」

はは。

はははは。

はははははは。

はははははははは。

「分かった。

じゃあ"俺"も心をぶっ壊しながらやってみるよ」

シー。神様が一瞬思考を止めた。

「ありがとう。その気持ちだけでうれしい。では勇敢なる死者よ。汝に幸運があらんことを。」

にぃ。

「失敗しちゃったらまた会おうね神様。」

そうして無謀な2度目の人生が始まった。

生まれ変わった世界に降り立った彼は、一度死んだ国で再び生まれた。

「マニーレック、ほらあなた、マニーレックが生まれたわ。」

「ああ。本当に生命の神秘を感じる。マニーレック。ユーべアレイル・マニーレック。我が息子よ、君の名前だ。」

マニーは母親の腹の中で夢を見ていた。

「こんにちは僕はskiqqu。

第一の国 教師の国へようこそ。」

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