zero gravity

柊 奏汰

zero gravity

こんにちは、世界。

こちらは地球から遥か上空、高層ビルの最上階。

今、頭の中を通して、皆さんに話し掛けています。


皆さんは今日も慌ただしく、一日の始まりを迎えていることでしょう。

ある人は朝食を摂り、ある人は電車に揺られ、ある人は学校のホームルームが始まる頃。

私も昨日まではその中の1人でした。


しかし、今日は違うのです。

私は今、彼と共にこの世界を見渡せる場所を見つけたのです。

宇宙が好きな彼と出逢い、私は世界の美しさを知りました。

しかしそれと同時に、私達の生きる世界は途轍もなく残酷だと思い知らされました。


赦されない関係を続けることをどれだけ反対されたとしても、私達は共に在りたいのです。

だから、私達は今、此処に居ます。


私達の目に映るのは、夢にまで見た空の上、憧れの世界。

2人でずっと憧れてきた、どこまでも遠くまで広がる真っ青で美しい世界。

ねぇ、今日こそ“その日”に相応しいと思いませんか。


一歩踏み出せば、ふわりと身体が浮いている感覚。

きっと彼が話してくれたあの宇宙でも、こんな風に無重力の心地良い世界が広がって居るのでしょう。

いつまでもこうして浮いて居られたら、周りの目も気にせず、誰にも何も言われることなく、自由に生きていることができたのでしょうか。

けれど、そんな願いは叶わず、少しずつ身体は地面へ。

触れていたい青空は遠ざかっていく。


嗚呼、たくさんの人達の声と喧騒が近づいてくる。

さあ、往きましょう。

手を取り合った君と、私達だけの世界へ。


あと


3


2


1…


さようなら、私達の愛した世界。

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