zero gravity
柊 奏汰
zero gravity
こんにちは、世界。
こちらは地球から遥か上空、高層ビルの最上階。
今、頭の中を通して、皆さんに話し掛けています。
皆さんは今日も慌ただしく、一日の始まりを迎えていることでしょう。
ある人は朝食を摂り、ある人は電車に揺られ、ある人は学校のホームルームが始まる頃。
私も昨日まではその中の1人でした。
しかし、今日は違うのです。
私は今、彼と共にこの世界を見渡せる場所を見つけたのです。
宇宙が好きな彼と出逢い、私は世界の美しさを知りました。
しかしそれと同時に、私達の生きる世界は途轍もなく残酷だと思い知らされました。
赦されない関係を続けることをどれだけ反対されたとしても、私達は共に在りたいのです。
だから、私達は今、此処に居ます。
私達の目に映るのは、夢にまで見た空の上、憧れの世界。
2人でずっと憧れてきた、どこまでも遠くまで広がる真っ青で美しい世界。
ねぇ、今日こそ“その日”に相応しいと思いませんか。
一歩踏み出せば、ふわりと身体が浮いている感覚。
きっと彼が話してくれたあの宇宙でも、こんな風に無重力の心地良い世界が広がって居るのでしょう。
いつまでもこうして浮いて居られたら、周りの目も気にせず、誰にも何も言われることなく、自由に生きていることができたのでしょうか。
けれど、そんな願いは叶わず、少しずつ身体は地面へ。
触れていたい青空は遠ざかっていく。
嗚呼、たくさんの人達の声と喧騒が近づいてくる。
さあ、往きましょう。
手を取り合った君と、私達だけの世界へ。
あと
3
2
1…
さようなら、私達の愛した世界。
zero gravity 柊 奏汰 @kanata-h370
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
聴覚過敏が聞く世界/柊 奏汰
★9 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます