第55話
「本当にトール君には感謝する」
そうマフトレインさんがしみじみといった。
「ああ、トールのおかげだ......」
アスティナさんがそう涙ぐんだ。 ルナークはずっとアスティナさんに寄り添っている。
「あ、ああ、大丈夫ですよ。 泣かないで」
「それで、ルナークさんがもとに戻ったのですが、これからお二人はどうされますか?」
そうリディオラさんがきいた。
「王女から護衛をするように頼まれているのです」
「そうか、またほかの国から狙われるかもしれない。 ダレスも逃げるし......」
「いや、ダレスが追ってくることはもうないだろう」
そうマフトレインさんがいった。
「どういうことです?」
「ああ、もうダレスは私の力を必要とはしないと思う......」
「えっ、この装置はあなたがつくったものですよね。 なら......」
「ああだが、これ妻である【リーシュ】がつくったもの。 もうダレスはその方法をしっている。 リスク覚悟で私をさらう意味はないと思う。 実際、不完全だったモンスター軍を完成させていた」
(確かにアースラントはモンスター軍をつくっていたな)
「一応王女の命ですので、ダレス以外にも他の国からねらわれないとも限りませんから」
「なるほど、わかりました。 ただ私たちはこのレベクレイクに移りたいのですが」
「そうだね。 ルナークもいるし」
「キュウウ」
そうルナークも嬉しそうにないた。
「では、そう手配しましょう」
リディオラさんはそう笑顔で答えた。
「さて、ついにあれをつくるか」
ぼくは工房で新しいパンの試作にはいった。
砂糖と塩、天然酵母、強力粉、薄力粉をボウルにおく。 そして暖めた牛乳を混ぜて、バターを入れる。 できた生地を練りまとめていく。
「......よし、手につかないな」
生地が引っ張って切れるようになったら、丸めてボウルに濡れた布巾を被せる。
「ここで一次発酵...... その間に、野菜やお肉を切っておこう」
「ピィ?」
しばらく作業する。 見ると発酵が終わって生地が大きく膨らんでいた。
「発酵が進んで二倍になった。 フィンガーテスト、押しても元にもどらない。 よし発酵がうまく行った! さすがにもう大分なれたな」
そして平たく潰しガスをぬく。 すこし休憩したあと、二つほどガスをぬくように丸く成形して、魔晶剣で霧吹きをつくりふく。
「乾燥するとだめだから......」
これようにつくった鉄板に丸めた二つの生地をのせ発酵を促す。
「よし、今のうちに」
ボウルにパン粉をいれ牛乳を混ぜひたす。
ミンチにした合挽き肉に、塩と胡椒、溶き卵をいれ、パン粉を混ぜ成形する。
「ピィ!」
「まだダメだよ。 生肉は危険だから。 大きさはこのぐらいか」
成形したものに薄力粉をまぶして大きさを整える。 しばらくまつ。
「発酵が終わった」
その生地に溶き卵を上から塗ると窯へと入れた。
「焼き上がりをまつか......」
「ピィ、ピィ」
なにか食べたがっているこむぎ用に、成形に失敗した肉を焼いて食べさせる。
「ピイィ!!」
こむぎはパタパタと喜んでいる。
「そろそろパンが焼きあがる時間だ」
そこでフライパンに油をひいて成形した肉を焼き、焼き色がついたら、チーズをのせ上からふたをして蒸し焼きにする。
「チーズが溶けた! よし、パンも焼ける!」
パンを取り出し半分にきると、つくっていたケチャップをパンの下にぬり、レタス、チーズの乗った肉、輪切りにしたトマト、薄く輪切りにした玉ねぎその上から、マヨネーズをぬり半分のパンを乗っけた。
「よし! できたハンバーガーだ!」
「ぴぃい!!」
ひとつをこむぎに渡し、自分もひとつ食べる。
「おお! 美味しい!! ハンバーガーだ!」
「ピピピィィ~」
こむぎも感動したようにほうばっている。
「これは売れる! ただ、バンズは少し柔らかすぎたかな。 あとピクルスがないし、果実や野菜の発酵物をつかうか。 パティももう少し油を抑えて固く...... それに一番はソースだな」
(ケチャップはつくれたけど、ソースがなかったからいまいちだ。 果実、野菜、酢、塩、砂糖、油を煮詰めてつくるらしいけど、配合を考えないとだな......)
「ピィ~」
口にマヨネーズをつけて、こむぎは満足気だ。
「まあ、一応合格点だけど、少しずつ改良しよう」
そのハンバーガーは各地で反響をよんだ。 ぼくの店はしらぬもののない店へとなった。
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