第4話

 仕事が見つからなかったぼくは、リディオラさんに呼ばれた。


「すみません...... あの方はああいう方なので」


 リディオラさんは申し訳なさそうに謝る。


「い、いえ...... でも本当ですか? さっき土地を与えると言ってましたけど......」


「ええ、私についてきてください」


 そういうと、話をしながら町を出て森のほうに来た。


「さっき魔力のことを少し話しましたよね」


「えっと、魔力はこの自然の中にある力ですよね? ぼくも昨日なにか光を感じられるようになりました。 人とかものとか」


「そうです。 この世界に満ちる万物を生み出す源泉...... それが魔力、そしてあなたはその魔力を多くもっているのですね。 ですから魔力を感じられたのでしょう」


(あれが魔力...... なんだろう...... 何かざわざわする。 向こうから光を感じる。 でも人間や動物とはちがう...... 黒い光......)


 話を聞きながら毛が逆立つ。


「......きますよ」


 奥の茂みから、のっそりと人のように歩く木があらわれる。


「な、なんですか、あれ!?」


「ええ、トレントというモンスターです」


 トレントは枝にある葉っぱをうち出してきた。 それは真っ直ぐこちらに飛んでくる。


(あの葉っぱから嫌な感じがする!! 危険なものか)


「あぶな......」


 そういおうとした時、リディオラさんは剣で葉っぱを切り落とした。 


「こんな風にモンスターは魔力を操ってきます!」


 金属のように飛んできた葉っぱは地面に落ちると、普通の葉っぱへとかわった。


(魔力で葉っぱを金属のようにしたのか......)


 リディオラさんの体がほのかにひかる。 そして何度も葉っぱをうちだしてくるトレントに近づくと華麗に剣で胴を切り裂いた。


(リディオラさんはかなりの剣の使い手みたいだ。 それに......) 



「魔力のこと、わかりましたか」


 森を歩きながら、リディオラさんはいった。


「ええ魔力は強度なんかを変えられる。 リディオラさんも使ってるんですね」


「ええ、私も体や剣にまとわせています。 それで軽さと切れ味をましているのです。 やはりすぐわかるとは、さすがケットシーですね」


 そうリディオラさんは笑顔で答えた。 それからリディオラさんに魔力のまとわせ方をおそわった。


「なるほど...... こうやって魔力をながすのか」


 ぼくの体がほのかにひかる。


「さすがトールさん。 もう魔力を体にまとわせられてますね」


 驚くようにリディオラさんがいう。 


「......実はアシュテアさまから、この森を抜けた草原にいるモンスターを排除すれば、その土地をあなたに与えると言われています」


「草原のモンスターを倒せば...... それってリディオラさんがカマキリと戦ってたあの草原ですか?」


「ええ、町の住人から、モンスターがでるとの話しが、城に届いたため、あそこにいたのです」


「そのモンスターは倒せそうなのですか?」


「まだなんとも、魔力の高いモンスターがいると、それに他のモンスターがよってきますので、おそらくは強いモンスターがいるとは思います。 ただあまりにも強ければ逃げましょう」


 ぼくたちは草原が見える位置にきた。 魔力を調べるとかなりの数のモンスターがいる。


「遠くに多くのモンスターがいる。 でもそこまで高い魔力はいないな...... この中に強いモンスターが」


「おそらく...... ですから、ここ数年、この土地は使えなくなっているのです。」


(それで、広大な土地が使わずに放置されていたのか...... こののび放題の草原も、もとは多分畑かなんかだったんだな)


 遠くに家も見える。


「でもそれをリディオラさん一人で...... 他の騎士や兵士はいないんですか?」


「......少々事情がありまして、いまは王女つきの近衛騎士の私以外は、戦えないのです」


(それで王女さまはぼくに土地を与えるから、リディオラさんのサポートをするようにと命じたのか)

 

「トールどのと私ならばモンスター討伐は可能でしょう。 ですがもし嫌ならば......」


「いえ、どうせいくあてもないし、モンスターを倒しましょう」


(そうしないと、枕へ一直線だから)  


「ええ、そう言っていただけると助かります」


 リディオラさんはそう笑顔でいった。



 魔力を感知させつつ、モンスターをさぐる。


「そんなに魔力を使って大丈夫ですか?」


 リディオラさんが不思議そうにいった。


「ええ、でもなぜ?」


「魔力を全身にまとわせつづけるのは、かなりつらいんです。 全速力で走つづけるようなもの...... だから必要な時だけ発動するのが普通なんですが......」


「特に疲れは感じませんね」


「......やはり、とてつもない魔力量をもっているのかもしれませんね」


「それはケットシーだから?」


「多分、私もあまり詳しくはおりませんが、ケットシーは昔から子供たちが読む本によく登場するのです」


「子供たちの読む本...... 童話とかですか」


「ええ、騎士や勇者、パン屋などいろいろなケットシーが存在します」


(なんかキャラクターなのか...... まあ幻の種族らしいし、ん?)


 何かを遠くから近づくのを感じる。 とてもいやな感じだ。 毛が逆立つ。 より集中する。


「どうしました?」


「モンスターが近づいてきます......」


「まだ私は感じませんが......」


 かなり遠くから大きな嫌な感じのモンスターが、凄まじい速さで近づいてくる。


 ザザザザザザザ...... 


 大きな音をたて地平線から何か大きなものが近づいてきた。


「おおきい...... すごい、魔力だ...... なんだあれは」


「まずい......」


 身を潜めていたリディオラさんがいう。


 その何かは草から身をのりだした。 それは大木のような巨大なムカデだった。


 

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