第13話

キラズ様について行って、行きと同じように抜け道にから王城へと戻った。騎士の人は抜け道に入る前に別れた。

抜け道を知っているのは王族のみにしているらしい。

………ん? 王族のみ?

私は当然、王族だ。第一王子。

キラズ様は? 公爵令嬢だったよね……?

あれぇ?


「あの、バラン公爵令嬢。どうしてこの道を知っているのですか?」

「あら? わたくしは将来王族になるのですから、知っていて普通でしてよ?」


あ、あー………そうだね。貴女、王族になるもんね。

私、この人と結婚したくないんですけど。

なんか外堀から埋められてる気がする………


王城に着き、庭にある小屋へと向かう。

中には、変装をしていないスクリエマ・スローズがいた。


「お帰りなさい、キュリズ様。今日は遅かったですね………って、なんでバラン公爵令嬢がここに!?」

「あら、スローズ男爵子息?」


ああ、なんだか面倒な予感がする………


「そういえば、スローズ男爵子息は、キュリズ様のお世話係でしたわね? キュリズ様がバレていなかったので、協力者がいるからだろうとは思っていましたが……まさか彼とは」

「ユリス第一王子。もしかしなくても、御令嬢にバレたんでしょう?」


貴族という関係上、2人とも顔見知り程度ではあるようだ。

どんな説明をすべきか………いや、素直に話そうか。


「ええっと、バラン公爵令嬢。貴女の予想通り、彼が私の協力者です。そして、スクリエマ。察しの通り、彼女にバレた。というより、バレていた」

「なるほど……バレていたというのは………?」

「そのままの意味で、私が抜け出した数回目で、気付かれていた」


さすがの情報に、彼も驚いて目を見開く。


「それほど早く………!? いえ、この際仕方ありませんね。しかし、彼女はなぜ、今ここに?」

「それは………」

「キュリズ様は、裏路地の方に行ってしまわれたので、私が助け出したのです」

「裏路地………!?」


あ、あー………スクリエマには隠しておきたかった事実が………


「ユリス第一王子!? 貴女様はどんな所に行っているのです!? もし怪我や命を落としてしまった場合、どうしてしまうのですか!?」


案の定、スクリエマがキレる。


「それは、そのー………」

「やはり貴方様は危機感が足りなさすぎます! 暫くは、抜け出すのを禁止とさせていただきますからね!」

「えぇ…………」


抜け出すのも禁止にされてしまった。

数少ない楽しみが……


「ふふふっ。禁止にされてしまいましたわね、キュリズ様。仕方のないことだとは思いますけど」


キラズ様もこう言っているから、どうやら味方はいないらしい。悲しいかな、大人しく従っておこう。


「でも、キュリズ様。わたくしの"お願い"を聞いてくださるのなら……見逃してさしあげましょうか?」

「ぅぇ?」


キラズ様がこっそり囁いてくる。

見逃してくれるという提案には魅力的と感じるが、その前に付属している"お願い"とやらが、なんとも不穏で仕方がない。

まぁ話を聞くだけならタダか………


「話だけ、聞かせてくれますか?」

「あらあら……そんなにも、抜け出したいのですか?」

「いえ、それは……」


抜け出すのは別にどうだっていい。私は王家から見限られたいだけ。それはあくまで、手段でしかない。


「まぁお願いは大したことじゃありませんわ。わたくしのお側にいてくださいませんこと?」

「え? お側って……?」

「言葉の通りでしてよ? わたくしの家に、これから、着いてきてくださいな?」

「え? あ、え?」


私は話を聞くだけって言ったのに、なんで決定事項として扱われているんでしょうか……?

ちょっとよく分からないけど、そのままキラズ様の家へと向かうことになった。

ほんとになんで??

スクリエマは適当に帰らせてた。これが公爵家の権力っすか………


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