サンタクロースの格好で児童養護施設に行った話

千曲 春生

第1話 参加に至るまでのそもそもの話。

 2024年6月2日。

 私は愛車であるホンダのGB350というバイクに乗って、滋賀県大津市の道路を走っていました。

 私だけではありません。

 前にも後ろにもバイク。沢山のバイクが隊列を組んである場所にむかっているのです。

 何より目を引くのは、バイクに乗ったライダーは皆、赤白のサンタクロースの格好をしているのです。

 私たちがむかった先。そこは児童養護施設でした。


 皆様は児童養護施設というものをご存知でしょうか。

 児童養護施設とは様々な事情で親(または親に相当する立場の保護者)と暮らせなくなった子どもたちが暮らす施設です。施設ごとに若干の差はあるようですが2歳から18歳くらいまでの子どもが暮らしています。

 では親と暮らせない事情というのはどのようなものでしょうか?

 最も多いのは虐待・育児放棄ネグレクトですが、それ以外にも、両親から適切な関わり方をされているものの両親が病気や怪我で長期間入院あるいは他界してしまった場合、または経済的に家族で暮らすのが困難な場合など、子どもが入所する理由は多岐にわたります。

 入所している子どもたちは施設から学校へ通い、学校が終わると施設に帰ってきます。まさに施設が”家”なのです。

 

 さて、そんな児童養護施設に私が関心を持ったのは2019年のことです。

 私は長年趣味として小説を書いていますが、当時新作の長編として書いていた「コンと狐と明日の少女」がきっかけです。

 これは、母親からの虐待がきっかけで児童養護施設で暮らしていた少女コンが、ある事件により命を落とし、幽霊となって母親と再会するというあらすじです。

 私はこの作品を書くにあたって、インターネットや書籍などで児童養護施設の情報を集めました。

 それらに目を通すうちに、自分にできることがあれば、という気持ちを持つようになりましたが、具体的に何ができるのかわからず、ただ気持ちを持っているだけという状態でした。


 ところで、この「コンと狐と」の舞台は鳥取県の若桜町わかさちょうという実在する町なのです。そのお隣八頭町やずちょうにははやぶさという地名があります。

 ライダーの方ならご存知かと思いますがスズキのバイクで「GSX1300R ハヤブサ」という車種があります。スズキの中ではもちろん、市販している全てのバイクで比較しても上位に入る性能を持ったすごいバイクです。

 地名と同じ車種があるということで、八頭町はライダーの聖地として親しまれ、道の駅ではバイクに関連するイベントが毎月のように開かれています。

 私もバイクを愛する一人として、小説の取材も兼ねて若桜町・八頭町へ何度もバイクで行っています。イベントにも参加させていただいたこともあります。 


 さて。

 これらのことから、私のパソコンは児童養護施設に関することと、バイクに関することを検索することが多かったのですが、近年の優秀なパソコンは全く繋がりのなさそうな2つの話題をくっつけた話題を「こんなんあるよ」と、見つけてきたのです。

 それが『トイランびわこ』でした。

 トイランというのは元々はアメリカ発祥で、クリスマスにサンタクロースに扮したライダーが児童養護施設にプレゼントを届けるという活動です。

『トイランびわこ』は同じことを滋賀県でやろうという活動です。関西に住む私には非常に参加しやすいです。

 私がこの活動について知ったのは第2回の少し前だったのですが、残念ながら予定が合わず参加を見送り、続く第3回もまた予定が合わず、結局、2023年12月10日の第4回で初参加。続く2024年6月2日の第5回にも参加させていただきました。

 ここまで読んでくださった皆様が何を考えているかわかります。6月って全然クリスマスじゃないじゃん、と思っていますよね。私も思っています。

 その真意について正確に訊いたことはありませんが、このトイランはオレンジリボン運動(子どもの虐待防止)の啓発活動を兼ねていますので、よい意味で目立つ、話題になることを行うことは意義があると感じています。

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