39 君たちをどうしよう?

 翌日の定時会議に、は第3集落からアクセスした。

 まずは予想通りに、ロキさんが爆発する。


「何で、よりによってサクヤを、最前線に出した?」

「仕方ないよ、ゴーレム絡みだし。ちゃんと守ってくれたもん」


 私本人が呑気に言うから、それ以上怒れずにぶんむくれてる。

 ……気遣い、ありがとう。

 それから、私が暗に仄めかせていたから、おおよそ察していた『ブレイク・ライン』を正式に定時会議のメンバーに加えた。

 本人たちは嫌がっていたけど、無理矢理加える。

 気に入らなければ、ずっと黙って聞いていれば良い。そうすれば、今までと変わらないじゃないよ?

 今回みたいに手を借りたいことも有るんだから、素直になって欲しい。

 大人なんだし!


 それから、これが一番問題なんだけど……。

 新入りのゴーレム2体を、どうしよう?

 一応、どうにでも出来るように、二人から指輪を回収してゴーレムの胸のスロットに収めてある。今は、御神体状態。

 テイタニアにはキャトル君一人いれば良いから、この子達の落ち着き先が問題。

 リルに欲しいかと訊いてみたら


「……可愛くない」


 の一言で切り捨てられてしまった。

 愛嬌のあるキャトル君を見慣れていると、怪獣型はちょっとねぇ……。


「何で、ペット前提なんだよ?」


 とハーディさんに突っ込まれた。……参加してるじゃん、会議に。

 暇な時には、あっちむいてホイして遊べるし、意外に可愛いんだよ?

 ちなみに『ブレイク・ライン』としては、移動がうるさいので、連れて行かないそうだ。


「平和な非戦闘員の意見はともかく、最前線の判断はどうよ?」


 ロキさん、さっきの優しさはどこに行った?

 まあ、彼らの処遇については、私は口を挟まないけど。

 ラドリオさんが、沈思して答える。


「こっちは、もう魔族からゴーレムは出て来ないだろうから、配備する必要はない。今まで通りにじわじわ前線を上げていく形で充分だ。ゴーレムも万能じゃないと解ったから」

「可能性が有るのは、あとは人族だけか……」

「でも、人族に見られて、刺激したくはないですね」


 ロキさん、すあまさんの第2集落の両巨頭が考え込む。

 先々を考えて、第2集落に置いておきたいけれど、置き場所と管理者をどうするか?

 アニメみたいに、プールの下から出てくるとか、巨大な岩が割れて中に入っているとか、大掛かりなことは、絶対に無理。

 指輪を胸に挿したままでは、盗まれてしまう心配もしなくちゃいけない。

 置き場所と管理者は、予め決めておかないとね。


 あれこれ悩んだ末に、結局集落に神殿のようなものを作って、そこに御神体代わりに置いておく事。管理者はメインパーティの後衛。ダリさんと、すあまさんの所のヒーラーさん、ティカティカさんという無難な線で決まった。

 さあ、リルも、キャトルくんも、アトリエに帰ろう。


 もう一度、リルとハーディさんに指輪を嵌めてもらって、ゴーレムたちを連れ帰る。

 ゴーレム複数持ちは、無理だと解った。

 この子達も、名前をつけて可愛がってもらえると良いんだけれど。


「別に名前はいらんだろう?」

「名前をつけてあげると、情が移るんだよ? ぬいぐるみでも、スマホでも」

「ぬいぐるみはともかく、スマホに名前をつけるか?」

「つけるよ? 私のスマホは、いろいろ喋る設定にしてあるもん」

「マジかよ」

「やってみれば解るって」

「やらねーよ、普通は」


 そんな心温まる会話(?)をしながら、のんびり家路をゆく。

 テイタニアに帰ったら、ケインさんたちみんなが迎えてくれたので、怪獣型ゴーレム君2体をお披露目する。さっさと逃げようとした人をふん捕まえて、焼きそばと、ピザの屋台に引っ張っていく。


「さあ、お礼を兼ねた私の奢りだから、しかと食べるがいい」

「何で偉そうなんだよ?」

「……わーい」


 素直に奢られるリルが、焼きそばを啜って目を細めると、渋々とハーディさんもピザを齧る。そして、目を見開いた。


「美味いな、これは」

「そうでしょう、そうでしょう」

「何で、お前が得意げなんだよ?」


 ぶつくさ言いながらも素直に奢られるあたり、本当に美味しかったんだろう。

 ふざけてはいるけれど、今回は本当に助かったよ。

 ゴーレム同士の戦いは、千日手。お互いに回復しながらだと、絶対に決着がつかないから、あんな手しか思いつかなかったんだ。

 上手くいったのは、リルとハーディさんのおかげです。


 逃げるように山に帰っていくのと入れ替わりのように、第2集落から、ダリさんとティキティキさんが到着した。

 いつもの流れで、捨て猫ネタでリルを紹介してから、怪獣型ゴーレム君をお披露目する。

 是非とも、名前をつけて可愛がって欲しいと力説したけど、ダリさんに


「これ、あんまり可愛くないよね?」


 と苦笑されてしまったのも否定できない。

 ゴーレム同士は無理だけど(試してみた)、対人でなら、あっち向いてホイも出来るし、見た目以外は、可愛い所も有るんだよ……。


「これを預かる係としては訊いておきたいんだけど、もし向こうがゴーレムを出してきたら、どう対処するのが良いかしら?」

「うーん……私がやった横取り作戦に注意しつつ、ゴーレム同士を戦わせて、あとは放っておく?」

「放っておいちゃうの?」

「うん。……だって、お互いダメージを回復しちゃうんだもん。決着つくわけがないから、そこはそこで戦わせておけば全体に支障はないでしょ? 後は、なるべく他の人を巻き込まないようにすれば、影響は無くなるよ」


 これしか、手はないと思うんだ。

 私の素直な思い付きに、ダリさんはしばらく考え込んでいた。

 前線に身を置く人だから、もっと良い使い方も考えつくかも知れない。

 私としては、あっち向いてホイの相手をさせておくのが、一番平和だと思うんだけどなぁ……。

 一頻り、呑んで食べて話して、前線に戻るのを見送る。

 幸せに暮らすんだよ……(ホロリ)


 久々にアトリエに帰って、キャトルくんには歌舞伎の見得を切らせて休ませる。

 採取してきたままになっていた鉱石から、原石を取り出しておこう。

 リルに使い方を教える意味で、先に私のを済ませちゃう。

 ルビーに、サファイア。

 とうとうここまで来ちゃった……。まだ採掘できない宝石は、ダイヤモンドのみ。

 実のところ、ルビーもサファイアも鋼玉コランダムという同じ石なんだ。その内、赤い石をルビーと言って、他の色はサファイア。

 あまり有名じゃないけど、ファンシーカラーサファイアと言って、ルビーも含めると虹の七色、全部有るんだよ。

 ゲーム上、解りやすくする為か、サファイアは皆ブルーで出てる。


 物理、魔法の攻撃にプラス3するのがルビー。同じく防御に+3するのがサファイア。

 それが基本性能だから、本当に強い。

 最後のダイヤモンドは、どんな事をしてくれるんだか……。

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