第十弐夜 夜空の下で改造あったか飯。

「あら。鍵がないわ。会社に置いて来ちゃったのかしら。」


私は自分のアパートの部屋の前でかばんの中身をゴソゴソと漁る。


「はぁ……しょうがない。面倒だけど一旦会社に戻りましょう。」


と、私は来た道を戻り、再び電車に乗り会社まで戻った。


――――――――――――――――――


「あれ?あれ?ない……」


私はデスク周りを探すが、鍵の形すら見当たらない。


「どうしたのかね。竹内くん。」


そんな私を見かねてやってきたのか、牧野部長が心配した様子で話しかけてきた。


「牧野部長!お疲れ様です!実は家の鍵をなくしてしまったみたいで……」


「なんと。それは大変だね。私も協力しよう。」


部長は笑顔でそう言って探し始めた。


「部長〜!ありがとうございます!!」


そして私も探し始めた。


------‐-------2時間後----------------


「隅々まで探して見たけど〜……このオフィスには無いんじゃないかな?」


と、ホコリまみれになった部長が疲れた様子で私に言ってきた。


「そうですか……お騒がせしてすみませんでした……」


「いやいいんだよ。もしかして道に落としてしまったのかもしれないから、帰り道をよく見てみるといいかもね。私はまだやる仕事があるから、気をつけて帰りなさい。」


と、部長は自分の持ち場へと戻っていった。


「わかりました。ありがとうございました……」


私はそう言って会社を後にした。


――――――――――――――――――


「はぁ……結局どこにも落ちてなかったし、近くの交番にも届けられてなかったわ……」


私はトボトボと自分のアパートへと歩いて行く。


「申し訳ないけど、大家さんに開けてもらいましょ。」


私はアパートに到着してすぐに大家さんがいる部屋を訪れた


「……旅行に行くので5日間家を空けます?あゃ……?」


終わったわ。変な声出ちゃったし。ご丁寧に扉の前に張り紙ありがとうございます〜。


「じゃなくてっ!まじでどうすんのよ!!」


スペアキーも残念ながら部屋の中。もう少しで空も暗くなる。


「付近にホテルもないし……今からでも樹奈子ちゃんのお家に……って、今日お兄様のお誕生日で実家に帰ってきてるらしいからダメよね〜。どうしましょ……」


私は悩みに悩んだ末こう結論を出した。


「よしっ!もう1回戻ろう!」


自分でもアホかなと思ってしまった。


┈┈┈┈3時間後┈┈┈┈┈


「結局交番にも会社にもなかった……ここ周辺に落ちてなかったし……ホテルに泊まろうと思ったら財布に1400円しかなかったし……はぁ、とんだ不幸ね。」


私は寒い夜空の下で鼻水を垂らしながら落ち込んだ様子で歩く


「寒いわ……コンビニ、コンビニ行きましょ。とりあえず今日は野宿だからご飯くらいは食べなきゃ……」


そう言い私はコンビニに入店し、温めて食べる商品を買い、すぐにコンビニを出た。


「あー……ラーメン暖かいわ〜。冷たい指先が暖かくなるぅぅ〜……」


私は購入して温めてもらったラーメンを手のひらに乗っけて暖をとりながら、近くの公園に向かった。


「ひや〜。ここの公園休日になると子供たちが遊んでるのに今はだ〜れも遊んでないし人もいない。悲壮感あるわね〜。」


私はたった一つの灯りで照らされているベンチに座った。


「今日はコンビニによくあるスチロールの器に入った豚骨ラーメン。その中にマイ調味料で持ち歩いてるタバスコを入れる。」


と、私はタバスコと書かれた小瓶の中身を豚骨ラーメンの上に大量にかける。


「次にスライスタイプのチーズをお好みの枚数(いっぱい)入れて、追加のチャーシューを4枚入れる。最後に焼肉のタレをかけて……よし。完成ね!」


購入した豚骨ラーメンは私のタバスコにより、スープは赤くなり、チャーシューは増え、焼肉の匂いが漂っていた。


「ハックション!!あー……寒いからとっとと食べちゃいましょ……いただきます。」


私は手を合わせ、まずは麺を人啜り。


「うあああ。美味しっ。豚の程よい香りと濃い味が冷えた口内を温めてくれるわ〜。タバスコもちょうどいい量かかってるから辛さで体も暖まる〜。」


私は暗くなった寒空の下、しっかりと麺を味わう。


「お次はチャーシューいただきま〜す……うーん。元々味がある商品だからスープと絡まってさらに豚の旨みが増してる〜……はぁ、暖まるわ〜」


私は寒い風に吹かれてラーメンの味と共に黄昏れる。


「焼肉のタレもスープとの相性抜群なのになんで誰もやらないのかしら?」


私はそう不思議に思いつつ麺をすする。


「豚骨ラーメンはチーズと焼肉のタレ!チーズはスープと麺に絡み、溶け込んで、濃厚に濃厚を重ねて美味しくなるし、焼肉のタレは濃い味の麺とスープがさらに活性化されて、風味も良くなるし!いいアレンジなはずなのにね〜……ハックション!!」


そろそろ本番の冬がやってきそうな気温になってきた。家には入れなくなったが、誰もいない公園で一人ラーメンをすすり、黄昏れるのもまた良い。


「明後日には大家さん帰って来るらしいし、それまでできるだけ会社に近いネカフェに泊まって過ごせばいいか!明後日になったらスペアキーを作って貰いましょ。」


と、私は残りスープだけとなった器に目をやる。


「今日は寒いし外だし。スープも全部飲んじゃお……」


そう言うとゴクゴクと勢いよくスープを完飲する


「プハー!ぬるくなったけど辛みで体暖められる〜!さて、仕上げに……ビール飲んで寝ましょ!!この公園で!」


そう言ってビール缶をカシュっと開け、勢いをつけて飲む


「プハァァァ!お酒サイコー!食った後に飲むってのもまたいいわ〜!」


そう言って私は恍惚な表情を浮かべた。


(田舎みたいに星空は見えないけど、都会の寒空もまぁまぁいい物ね……)


「ふぁあ………色々歩き回っちゃったから眠くなっちゃった……野宿なんてこの世界に来て以来やってなかったからなんか久々ね……」


と、私はベンチに寝転び着ていたコートを毛布替わりにして眠りについた


┈┈┈┈翌日┈┈┈┈┈


「さてと、ここから近いネカフェは……家とは逆方向の電車ね。」


私は会社での仕事を遅く終え、電車に乗り込もうとしていた。


「今日になれば交番に届けられてるかなって思ったけど、そんなことなかったわね。まぁ、人生……悪魔生?そんなもんか……」


と、ニマニマしながら電車の改札に行こうとした瞬間


「あの!すみません!」


と、後ろから声をかけられたため、振り返るとそこには


「この鍵、昨日落とされませんでした?」


と、短髪の気前のいい青年が私の鍵を持って話しかけてきた。


「え?!そ、そうです!落としました!」


「良かった〜!昨日ここで落とされて届けようと思ったけど既に電車に乗られてしまったようで、声をかけられなかったんですよ〜!」


と、青年は後頭部をかき、鍵を私に渡した。


「それでは、失礼します!」


青年は一礼し、一緒に来たであろう彼女の元へと戻って行った。


(礼儀正しい子ね〜……あの子は彼女かしら?随分身長高いわね……あれ?あの彼女の方、どっかで見たことあるような……まぁ、いいか。)


「ありがとうございます!」


と、去っていく青年に向かって言うと笑顔で青年は振り返り、手を振ってくれた。


「やっぱり、悪いことがあったあとはいいことがあるわよね!よし!今日も夜更かししていっぱい食べちゃいましょ〜!」


と、私はルンルン気分で家に向かっていった。


┈┈┈┈おまけ┈┈┈┈┈


早朝の公園にて


「ねぇ、ママ〜!あのツノ生えたお姉ちゃん何してるの〜?」


と、母親らしき人物と手を握ってる子供が寝ている花子を指さす。


「こらっ!見ちゃいけません!きっと異世界から来たばっかでお金も稼げなくてホームレスになったのよ!だからあんなだらけた悪魔さんになっちゃったのよきっと!!だから見ちゃいけませんっ!」


と、母親らしき人は子供の目を隠し、引っ張って無理やり連れていった。


「むにゃむにゃ……まだいっぱいくえるぞ〜!」


と、寝ている花子はヨダレを垂らしながら大声で寝言を言った。







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