体のない子供たち

天川裕司

体のない子供たち

タイトル:体のない子供たち


私は或る夕暮れ、公園に行った。いつもの最寄りの公園。

ちょっと落ち込んだことがあったから。


私は恋人に捨てられ、お腹の中にいた赤ちゃんも捨てられた。

私の家はド貧乏で、

「…悲しいけど…」

の両親の一言で、赤ちゃんを天に返す事になってしまった。

罪。自分の罪を本当に思い知らされた。それに加え、元カレ(あのひと)の罪も。


遊び半分で付き合ってた私たちだったから、

先の事は何も考えず、その先の事の内に赤ちゃんの事もあったんだ。

いつもあとから気づかされる私。


そうして公園に1人たたずんでいると、

どこかから子供のような声が聞こえてきた。

「えっ…?」と思い辺りを見回した。


すると、ドラえもんの公園に置かれてたような

あのコンクリのドラム缶の向こうから、

子供たちが数人遊びに出てきた。


「……え、え?」と思っていると…


子供「ねぇ、私たちの姿見える?私たちの姿見える?」

と何度か言ってきた。


「…いや、見えるけど…?」


どうやらここいらの子供達じゃない、そう感じた私。


子供「でもね、僕たち私たち、姿を消すこともできるんだ。ほらっ…」


と言うとその子たちはパッと体を消して、見えなくなった。


ぎょっとした私は「幽霊に会っちゃった!?」なんて

一瞬からその後少し、心底から恐怖した。


それから子供たちは見えないまま、

まるで私の心に喋りかけてきたようだった。


子供「僕たちはねぇ私たちはねぇ、生まれて来たくても来れなかった子供たちなんだ。だから体がないの。でも存在はあるんだよ?さっき見たよね?」


子供「現実の子供たちはいいなぁ。みんな自分のする事に向かって、与えられた物事に向かって、夢に向かって、その体を動かして近づいて行けるんだから」


子供「用意が出来てない親元には生まれないほうがいいのよ。そのほうが子供たちにとっても幸せ、そうは思えない?」


子供「これは経済的なことだけじゃなくて、親の精神状態、子供に対する気持ちの準備も含まれてるの」


私まだ準備ができてなかったの?でも子供の幸せは…

その答えは未だに出ていない。


でもなんとなく励まされた気もしていた。

これからは真っ当な人生を送ろうって心に決めた。

その上で、今後、一生独身だったとしても私は後悔しない。

存在のない子供たちなんか産みたくないし、

たとえ存在があっても無視されるような子、

辛い目ばかりを課されるような子を迎えたくない。


これは私が10代の時の話。

私は今、50歳。変わらず独身で子供もおらず、

最近よくあの子たちのことを思うんだ。


両親も旅立って、1人になったからこそ

そんなことをよく思うのかもしれないけれど。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=tAPOwYFAuXU&t=10s

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体のない子供たち 天川裕司 @tenkawayuji

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