短編:オオカミVSおばあちゃん

MrR

*職場で書きました。

 むかしむかし。

 温暖な気候の森の中。

 あるところにおばあちゃんが木の小屋の中で住んでいました。 


 オオカミは、そんな一人暮らしのおばあちゃんを狙います。

 まず、おばあちゃんの家を下調べ。


 そうしておばあちゃんには赤ずきんの小さな孫娘がいるのがわかりました。


 オオカミはある計画を思い付きました。

 赤ずきんに変装しておばあちゃんを油断させ、食べてしまおうと言う計画です。

 


 計画実行当日。

 晴れ晴れとした空。

 暑くもなく寒くもない心地よい気温の中、オオカミはおばあちゃんを食べるために、赤ずきんに変装しておばあちゃんの家のドアノブに手を回します。


「おばあちゃん、私だよ」


 と、下手な声真似をしてオオカミはおばあちゃんの家に侵入します。

 そして家の中にはーー


「えっ」


 オオカミは言葉を失います。

 部屋の中にはおばあちゃんがいました。

 それは分かります。


「きおったかオオカミ」


 部屋の中央にドンと陣取り、ソファーに腰掛け、とても老婆とは思えない凄味と迫力を身に纏っています。

 なんなら想像できないような深い悲しみとかも背負ってそうです。

 

「お、おばあ.......ちゃん?」


 オオカミは震え声になりながら人を殺す数秒前な雰囲気のおばあちゃんに訪ねます。

 しかしおばあちゃんは返事もなく、ゆっくりと立ち上がります。

 漫画の効果音で言うなら「ゴゴゴゴゴゴ」とか聞こえてきそうです。

 

(ど、どうする? 逃げるか!?)


 ただならぬ雰囲気のおばあちゃんにオオカミは気圧されながらも襲うか逃げるか悩みます。

 そんなことを悩んでいるうちにおばあちゃんは完全に立ち上がって、何時の間にかリンゴを手に持ってーー


 グッシャア


 と、握力だけでリンゴを勢いよく握り潰します。


「う、うわああああああああああ!?」


 だんだんと、おばちゃんがホラームービーに出てくる不死身のモンスターにみえてきたオオカミは襲いかかります。

 

「ふんっ!!」


 しかしおばあちゃんは、老人とは思えぬスピードとパワー、まるで大砲のような拳の破壊力でオオカミを殴り倒します。

 オオカミは「ふげぇっ!?」と勢いよく玄関から家の外へ叩き出されます。

 おばあちゃんは鋭い眼光を赤く光らせ、ゆったりと一歩、一歩、近づいてきます。


「ふふふ、驚くのは無理もないワシは来るべき大国との戦争に備えて極秘裏に改造されたサイボーグよ」


「なに!?」


 衝撃の事実発覚。

 じつはおばあちゃんはサイボーグだった。


「この体ぁ!! 我が国の技術力の結晶でありぃ!! 我が民族の誇りであるぅ!!」


 急にテンションが上がりはじめたおばあちゃん。

 腹部の衣服を突き破り、現れたのは大きな銃口。 

 それをみてオオカミは目を見開きました。


「くらえぇ!! 戦闘機動中の戦闘機すら撃墜し!! 戦車の正面装甲すら貫く重機関銃じゃぁ!!」


「うわあああああああああああああああああ!?」


 オオカミは絶叫をあげて走り出しました。 

 遅れて耳がおかしくなるような轟音、大器が震えるほどの振動とともに木々が勢いよく広範囲に伐採されていきます。

  

 オオカミは振り返りませんでした。

 もう死ぬ気で、自分これだけ速く走れるんだと感じながら全力疾走します。


「この攻撃で5体満足で生きておるとは中々運のいいやつ!!」


「ああああああああああ!? なんなんだこのババア!?」


 しかしおばあちゃんは平然と追いかけてきます。

 機械的な規則正しい短距離走のオリンピック選手のような走り方で追いかけてきます。


「我が祖国の科学力はぁ!! 世界一ぃいいいいいいいいいいいいい!! くらえオオカミぃ!! 紫外線照射装置ぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


 今度は服を破きながら胸部を展開。

 そこからメカメカしいクリアパーツから光線を放ち、射線上の木々を焼き払います。

 それでもオオカミはどうにか避けました。

 無事です。

 もう泣きながらどうしてこうなったと後悔しています。


「どこだ!? オオカミはどこにいる!? 姿を表せぇえええええええええええええええ!?」


 腹の重機関銃。

 胸部と目から光線。

 左腕から火炎放射、右腕からガトリング砲、背中からキャノン砲、ミサイルポッド。

 質量保存の法則を完全にシカトした重武装のおばあちゃんによる苛烈な攻撃。

 

「これでトドメだぁあああああああああああああああ!! オオカミぃいいいいいいい!!」


 そして空高く跳躍し、口からバズーカの砲身のようなものが現れる。


「小型戦術核よ!! これで地獄に落ちろおおおおおおおおおおおおお!!」


 その日、核爆発が観測。

 おおかみの行方を知るものはいなかった。

 

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