第7話 刺客の来襲

 無駄口を叩きながら横を歩いていたキャメロンの顔が急に引き締まった。飛来した岩つぶてを顔を振って瞬時によける。ほぼ同時に前方の暗がりから四人の男が走り寄ってくるのが見えた。

 襲撃だ。とっさにジョセフを背中に回し、俺はすばやく刺客たちの様子を見まわした。

 こいつらはジョセフの身柄を狙っているのか。それとも単なる追い剥ぎか。前者なら生け捕りにして雇い主の名を聞き出す必要があるが、後者なら切り捨て御免だ。


 ナタのような刃物で切りかかられ、半分抜いた大刀でギンッと弾く。キャメロンが狙撃者を見つけたらしく、後方に岩つぶてを飛ばした。命中したようで、木から落ちたドサリという音が聞こえた。

 凶器を構えた男たちの一人が覆面の下で声を発した。

「さすがの腕前だ。あんたたちとやり合いたくない。その男を置いていけば、立ち去ってもらってかまわない」

 俺は肩をすくめた。

「悪いがそういうわけにはいかない。この人を連れて行かないと報酬がもらえないんでね」

 キャメロンがジョセフをかばいながら、俺に“どうぞ”と手を差し出した。

「はあ? どういう意味だ」

「僕は魔物退治の助っ人だからね。人間相手の戦闘はギャラに入っていないんだよ」

「…さっき狙撃し返しただろうが」

「自分が狙われて少しむかついたからね。まあ、サービスでいいよ」

 こいつの変にドライな性格はなんなんだ?


 こちらの内輪揉めをよそに刺客たちはじりじりと寄せてくる。大刀を抜き、右の男に向かうと見せかけ、中央の男の右足を払った。後は乱戦だ。

 さっきのやりとりでキャメロンが手を出さないのがわかっているため、男たちは俺を集中的に狙ってくる。囲まれないよう動き回りながら、何とか二人を倒した。


 残ったのは、先ほど言葉を発した男だった。どうやらこいつがリーダーのようで、一番腕が立つ。

 相当に手こずったが、時間をかけて切り伏せ、締め上げて気絶させた。覆面を剥がすと、現れたのはかなり年配の顔。勝てたのは腕のおかげというよりは、中年相手の体力勝ちだったようだ。

 後ろ手に縛り上げて肩に担ぎ上げ、他の死体は放置した。どうせ野獣か魔物が朝までに始末してくれるだろう。


 街道を進む間、身の危険を改めて感じたジョセフは青ざめた顔色で消沈しているが、キャメロンは構わずべらべらと与太話を続けている。

 俺は適当に相槌を打ちながら、肩に担いだ男の素性に思いを馳せていた。

 こうした荒事に加わるには少し歳が行き過ぎている。よく見れば武具も身なりも悪くない。それに、その体からは、控えめだがご丁寧にも香水の匂いがしている。

 こいつは何者なんだろう。

 少し嫌な予感する。

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