二〇二四年四月一日

 忘れていた。

 つぶあん大福の牛皮が柔らかく伸びることを。

 あんの粒が唇の圧で潰れ、粒の中身がカフェラテのように甘くまろやかな味わいだということも。

 この大福が「あの店」の商品であれば、自分が和菓子好きだということを永遠に思い出せなかったかもしれない。

 海面の反射光で映えるあのショッピングモールの地下に「あの店」がある。自分はそこで半年間も働いていた。

 「あの店」での経験をもとに、人生における私のモットーが追加された。

 一、レギュラー従業員として、食品を含むあらゆる販売職には就かないこと。

 二、ショッピングモール内のチェーン店で働くなど、なおさらお断りだ。

 それが、現代の社会問題で自分の心を痛めないための、唯一の防衛法だ。

 あのショッピングモールは、必要最低限の食品と百円ショップの商品購入で十分だ。

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