君と雨に濡れ
@no_0014
弾む心臓
雨に濡れるのが好きだ。
放課後に傘を差さず、制服だろうがお構いなしに雨に打たれる。人が多い場所だけ、まるで初めから傘を差していましたとカモフラージュして人目を避けて傘を閉じる。
交差点で傘を差して、すれ違いざまに目が合った君は、制服に雨が弾いていた。水を弾く素材。同じ弾き方。傘を差していたらそこまで濡れるはずのない制服。
思わず立ち止まりそうになる。君も驚いた顔をしていたけれど、お互いに干渉することなくすれ違う。それが一番、無難な雨の日の偶然だ。
手首を掴まれて、引かれたその先に何が待っているかもわからないが、勢いよく引っ張るものだから傘がどこかへ飛んでいき、とにかく無我夢中で傘も差さずに雨の中を走って、雨に濡れているからもう関係ないのに、雨宿りのできる小さな空間に逃げ込んで、弾んだ呼吸を整えて顔を合わせる。
『君も、雨に濡れ……』
お互いに同じ言葉が同じタイミングで、同類を見つけた気持ちを隠せない弾んだ笑顔で、そして一緒に笑う。
君と雨に濡れ @no_0014
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