随筆

伊藤東京

室外機

 赤く錆びたトタン屋根と古い土壁。土壁の上に塗られた白いペンキは灰色に汚れて、トタン屋根の錆が所々に縞模様を作っている。

 木枠の曇りガラスは割れていて、窓枠に置かれた小さな観賞用植物の葉が少しだけ外に飛び出している。

 曇りガラスでぼやけた輪郭が、割れたところから急にはっきりしていて、そのコントラストが見ていて面白い。

 その奥には、空いたままのドアと、その隣の壁に掛かったままのコートが見える。コートは煤けて、今にも崩れ落ちそうだ。

 そんな窓の隣には灰黒く汚れた室外機が設置されている。

 室外機の上には蚊取り線香の缶が置かれ、その隣に火を灯されなかった一つの蚊取り線香と百均ライターがある。

 真昼間の燦然とした太陽光がトタン屋根の形をくっきりと浮き立たせた陰を落とした。

 窓も室外機も、その陰に隠されて目立たない。

 しかし、劣化したトタン屋根の一部だけが縦に細く割れている。

 そこから漏れた一筋の光が、室外機から生えた黄色い小さな花を照らした。

 その花弁は白く眩しく反射し、花弁の色だけが黄色い輪郭を作った。

 黄緑色に透けた葉は、風に吹かれるたび、薄い色紙を揺らしているように光った。

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