あなたの夜を教えて【短歌・二十首連作部門】
碧乃そら
『あなたの夜を教えて』
終点は約束のない明日でした 春の終わりの花のあとさき
そっと肩ふれあわせれば緑さすひかりをまとうあなたの香り
くちなしの花が淋しく散るまえにきっとわたしを迎えにきてね
交差して、絡まって、ほどけなくなる 運命なんてつくりだすもの
とろけゆくなめらかプリンのしたざわり はつなつの夜に交わすくちづけ
この恋を終わらせたかったミルフィーユ地層をくずすフォークの役目
薔薇香る雨の日曜はまもられぬ約束をただ待ち続けている
その花は毒だとあなたは言うのです それでもわたしは愛したいのです
白き窓枠はわたしを閉じ込めて
ひそやかに小指を絡めまどろみのほとりであなたの夜を教えて
くちづけをひとつ 願いが叶うならあなたとふたり海に沈みましょう
月が砕けたならきっと光れるわ 星座になれないわたしを見つけて
コズミック・ラテにえがいた紋様はわたしだけに送られる暗号
朝焼けのひかりのなかでさようならあなたの心にわたしは棲めない
夏空の青さにきっと泣くのでしょう ぐずぐずと甘く嘘がとけゆく
涙さえ流せぬわたしを許してね 夕陽に染まるネモフィラの海
目隠しをすればふたりきり、束縛も障壁も愛もうつくしく咲く
絡まった糸はほどけるのかしら デッドエンドの絶壁で待つ
さらわれてゆけばよかった あのときの手首の痕はないけれど、
あなたの夜を教えて【短歌・二十首連作部門】 碧乃そら @hane_ao22
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