転生魔剣士さんは破滅フラグから逃げ切る為に無能を演じる

皆月菜月

第1話 破滅フラグがたつ前に

 今の自分の状態を自己紹介してみようと思う。


「どうも、破滅フラグしか存在しないあまりにも悲しい人生が待っている男です。あまりにも詰みなんで誰か助けてください」


 ……土下座でもしたら運命が変わったりするかな?しないよね〜うん知ってた。

 はぁ。どうしてこうなった……まあ文句はこのゲームを作った開発者と原作者クソ野郎共に言うとしてと。

 どうするべきか……どうやって破滅フラグを回避する?


「────起きなさいネルラ!!今何時だと思ってんの!?早くしないとご飯無くなっちゃうわよ!!」


 あ〜、どうやら母親が呼んでいるらしい。うーんまあご飯食べてからこの問題を片付けますか。


「わかった、すぐに行くから残しといて!!」


 俺はすぐに部屋着のまま声の方に走り出した。


 ◇


 ゲーム【剣と魔法のイングリシア】と言うゲームがあった。

『魔剣と聖剣、魔法と奇跡が織り成す王道ファンタジーゲーム。君は君自身の無限の可能性を解き放て!』

 がキャッチコピーの3Dアクションファンタジー作品。

『魔剣と魔法が支配する国で、あまたの魔剣と魔法を携えて多彩な仲間と共に世界を滅ぼす邪悪なる邪神を打ち倒す!』


 と言うゲーム内容で、豪華な声優陣と圧倒的なグラフィック、そしてあまたの俳優著名人による宣伝まで行った作品である。当然メタスコアはオール9以上。非常に期待された作品だと言えたのだが……。

 まあプレイヤーからのユーザースコアは酷いものだったんだよね。


 一応このゲーム周回プレイが可能で、一周目は主人公である【プレイヤー名】を入れたキャラクターを操作するんだけど、問題は二週目からだったんだよね。

 二週目は基本、好きなキャラクターで始められるっていう神仕様だったんだけど……いざ蓋を開けてみたら───、

〈破滅フラグが多すぎる!〉〈全然進まない!〉〈敵強すぎるって!?〉〈これ主人公基準で作ったせいで鬼畜難易度になってね?!〉


 と。まあプレイヤーからは非難轟々でした。要は主人公は魔剣を四本まで自由に戦闘中に切り替えれるし、魔法も全て使えるからどんな敵にも対応出来たんだけど……その他のキャラクターは魔剣を"一本"しか持てないし、魔法だって一属性しか使えないわけよ。

 ……しかもむっだに破滅フラグばかりでさ?

 なんすかね、街の人に一人話しかけなかったので次の日全滅エンドとか。


 まあそんな感じの荒れに荒れた作品の中で……が一人いたのだ。それが───【ネルラ】……本名【クウネル・ネルラ】。

 名前ははっきりいってギャグだと思う。ただこのキャラクターは……として出てくるのだ。


 その世界最強の魔剣〈魔神剣ディアゴスティード〉と、闇魔法を使う彼は……はっきりいって主人公でなければ勝てないレベルの鬼畜攻略難易度だった。もちろん俺もこいつと何度も原作ゲーム内で戦ったよ。555回目のコンティニューでコントローラー投げ捨てたけどね。フロ〇ゲーが如く即死ばかりでまじクソキャラだったと思う。


 まあそんなキャラクターを二週目なら最初から使えるって事でめっちゃ皆ワクワクしながら始めた訳ですが……えっとその結果。

 このキャラはどう足掻いても破滅フラグしか無い。攻略不可。と世間は結論を出しましたね。いや妥当だと思うよ?だってデータマイナーによると破滅フラグが一人だけ5もあるんだぜ?

 ちなみにゲーム開始時に乱数がしたブレると、その時点でゲームオーバだぜ?意味わからんよね本当に。


 ◇


 まあ話を戻すと、そんな世界のそんなキャラクターに俺は転生してしまったらしい。

 ……なんで?え、なんで?俺なんかやっちゃいましたか?拷問?コレ。


 いやさ、朝目を覚ますじゃん?そしたらご丁寧に目の前に鏡があってさ?

 写ってたのさ。俺の姿……まあネルラ君の顔面がね?めっちゃ綺麗な黒髪と、ルビーのような瞳。人気キャラランキング第二位のキャラは伊達じゃなかったね、まじでイケメンだよこれ。子供なのに既にイケメンの片鱗しか無くて、羨ましいねほんと。


 で顔つねってみても、叩いてみても、ふて寝してみても何も変わらなくて……その瞬間脳裏によぎった訳です。


「あ、これ異世界転生しちゃったパターンだ」


 ってね。まー非現実的な話だけど、起こっちゃったもんは仕方ないよ仕方ない。でそしたら突然頭に君の記憶?みたいなものがバーッと走馬灯みたいに流れてさ。


 まあなんとなくだけどすっごいこのネルラ君可哀想だなって思っちゃったんだよね。

 幼少の頃に、親に質屋に借金のカタとして売り出され。奴隷のように扱き使われて……そうしてるうちに、その村に魔物が……あ、魔物ってのはこの世界の敵モブの事ね。ガチでちなみにデザインがグロいやつしか居ないよ?


 ……まあ魔物によってその村が襲われて自由の身になって、それで倒れてるとこをここの奴らに拾われて。んでタダ働きさせられてるっている現状ね。あ、ご飯は貰ってるからタダ働きでは無いか。


 たださ、思ったわけよ。……この子には休息が必要だなってね?なんか働くことが染み付いちゃってるせいで、休みの記憶がなかったんだよね……。

 だからこの子に休息を与えるって意味でも、俺はこの人生……怠惰に生きてやろうって思ったのさ。

 え?お前がただ怠惰に生きたいだけだろ?……勘のいいガキは嫌いだよ。まあ60%ぐらいは確かに俺も休みたいとは思ってましたけど。だって前世の俺、ブラック企業で扱き使われてた社畜だぜ?

 ───話を戻すけど。

 で、そこで思い出したわけですよ。この子死ぬほど破滅フラグしかないじゃんって。


 ◇◇◇


 ご飯は途方もなく微妙な味だったけど、前世からご飯はあんまり興味無かったからあんまり気にはならなかったかな?

 ──嘘です死ぬほど不味くてびっくりしました。魔物の肉を食べた感想は……人が食うもんじゃねぇぞこれ。でした。


「それで、あんた明日だよ?……あんたが魔剣を手に入れてくるかどうかで、うちらの運命がかかってるからね?!絶対、絶ッ対に魔剣を手に入れてきなさい!!」

「は、はい……」


 母親は、バシバシと俺の肩を叩いて外の納屋に歩いて行った。いや痛いって。あの母親子供のことサンドバッグか何かだと思ってんのかな?


 ……しかし参ったなぁ。あ〜、なんだよね。明日、俺の人生はおそらく詰む。というか着実に破滅フラグが作られてしまう。嫌だよほんと。


 ◇◇◇


『魔剣というものがある。それは魔神を宿した剣の事であり、この世界【イングリシア】の繁栄を支えた道具でもある。

 魔剣を使うことで人々は魔物を倒せるようになり、また魔剣から零れ落ちた残滓で人々は魔道具を作った。

 そして魔剣を手にしたものは、魔法にも優れた人物となり……そのものたちのおかげで人々は生活ができている』


 まあゲーム的に言うと、魔剣は魔物を倒す為の人類側の武器だね。別に魔剣以外でも普通に魔物は殺せるけど、時間がかかるんだよね〜。

 で、魔剣で魔物を倒すと魔剣は倒した魔物の魔力を吸い取ってより強くなる。

 逆に魔法で魔物を倒すと、魔法が強くなる。


 まあそんな感じでゲーム的に魔法も魔剣も同様に活躍させたかったんだろうね、開発陣は。

 だから魔法しか効かないやつやら、魔剣しか効かない奴とかを出して縛りプレーヤー達をブチ切れさせてたっけ?


 そしてその魔剣は、この世界の子供が10才になった時に協会で神様から手渡されるんだよね。

 もちろん全ての子供が貰える訳じゃ無いよ?だってそしたら魔剣の価値が無くなっちゃうし。


 だいたい100人いたら多くて3人とかかな?まあ基本ガチャだねこれ。

 しかも貰える魔剣もランクがあったりして、人によっては雑魚魔剣を手にする羽目になってしまう人もいるわけですよ。ちなみに魔剣を手にした人は自動的に魔剣士と呼ばれ、王都にある学院で魔剣士育成コースを歩むことも出来る様になるんだぜ?


 尚ネルラ君、そのコース行くと序盤で魔剣の暴走で死にます。なので学院だけは行っちゃあダメなんすよ。


 ……そして俺は多分確実に魔剣を貰える。そして俺はその魔剣による破滅フラグにより、悲しい死を遂げるのだろう。


 ◇


 ────あー!絶対終わった!明日になったら俺は魔剣士になって魔剣による破滅フラグで死ぬんだ!

 うっわ貰いたくねー!魔剣とか、!!!


 そう言いながら、頭を抱えたネルラの元に……一筋の光が差し込む。


 …………ん ??……ネルラ君はどのルートでも必ず魔剣を持っていたけど……、待てよ?

 ……魔剣フラグ回避出来るんじゃね?



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