HIghschool Dream Live! BRILLANTIST編
薄氷 暁
第1話 音楽家なアイドル!?
「ねぇ!」
鳥のさえずりが心地良い早朝。
目が覚めてしばらくして、意識がはっきりしたあたしは、いつも一緒に学校に行く友だちであり、学生寮のルームメイトの月椿に、大きな声で話しかけた。
「どうしたんですの、海理ちゃん。そんな大きな声を出して」
あたしの突然の大声にも顔色ひとつ変えず、髪を整えながら静かに問いかけてくる月椿。でもきっと、その顔はすぐに大きな驚きを見せてくれるだろうな。
ねぇ、月椿。
「一緒に、ハイドラに出ようよ!」
シーン、なんて効果音を入れたくなるような痛いほどの静寂、そして……
「へっ?」
気の抜けるような、普段の月椿からは想像できないような間の抜けた声がしたのだった。
「わ、私がハイドラに……アイドルになるんですの…?え、ハイドラってあのハイドラ……HIghschool Dream Liveのことですよね?」
驚きのあまり口をパクパクさせる月椿を放っておくこと数分。やっと落ち着きを取り戻した月椿はそう呟いた。
「うん、そうだけど?」
あたしがそう返すと。
「へぇ、そうなんですの……ってそうなんですのじゃありませんわ!私がアイドルに……ハイドラに出るなんて……私には無理ですわ!不特定多数の方に笑顔や愛嬌を振りまくなど……そんなこと、恥ずかしくてできません!それに、ここがどこだかわかって言ってるんですの?ここは私立アポロン音楽大学付属高等学校ですわよ、音!大!付!属!ですわよ!?音楽関連の部のみ設立を許されるこの学校において、そのような部の設立は相当難しいと思いますわ。理事長先生もお許しにならないでしょうし……」
お淑やかでお嬢様らしい、気品に溢れた普段の様子からは想像出来ない勢いで話し出した月椿。が、最初の勢いはどこへやら、後半はぶつぶつと呟いている。
ていうか、よく噛まないね……??しかも最初ノリツッコミみたいなことしてたでしょ、月椿、今日、テンションおかしくない…?
「おーい、月椿さーん?つーばーきー?ねえ、大丈夫ー?」
と言いながら月椿の顔の前で手をブラブラさせていると。
「と、とにかく!考えさせて頂きますわ。そして、私がおかしいわけじゃありません!いきなりそのような事を言う海理ちゃんが悪いのです!それより……今日は実技試験がある日ですけれど、大丈夫ですの?ここ最近、あんなにも出来ない出来ないと喚いていましたけれど」
あっ……
露骨に話題を変えられた感はあるけど、そっちの方が重要だ……実技試験のこと、すっかり忘れてたよ……というか、嫌すぎて現実逃避しちゃってたの方が正しいのかもしれないけど。いやー、起きたばかりで頭が回ってないから気が付かなかっただけだよね!!うん、そういうことにしておこう!私はまだ起きたばかりだ!!
じゃなくて、本当にやばいから今はとりあえず、朝練したい!
「あっ……やばい!月椿、急いで学校行こ!今回ガチでやばいからさ、ちょっとでも腕ならししたいよ〜!テストは一時間目に終わるし、話は昼にご飯食べながらでもするからさ!」
そう言うと、月椿はクスッと笑って、
「もう……海理ちゃんったら、本当に都合のいい人ですこと。でもまあ、そんな海理ちゃんに甘い私も大概ですね」
と呟いた。そうしてそのまま鞄を手に持ち、あたしが準備を終えるのを待ち始めた。
そんな姿も絵になるくらいの美少女で可愛い月椿なら、きっと素敵な高校生アイドルになると思うんだけどな。あれ、美少女と可愛いって同じ?ま、いいよね!
というか、今はとりあえず、実技テストの準備だね!テストに合格しなかったら追試受けなきゃいけないし、そうなったらハイドラの話をするどころじゃないもん。月椿にはまた後で、テスト終わってからゆっくり話そっと!
「よっしゃ、月椿、行こっ!」
そう言いながら、カバンを手に持ったあたしは、空いている手で月椿の手を握り、部屋のドアを開いて駆けだした。
「え、ちょっと、海理ちゃ〜ん!!」
あたしの名前を叫ぶ月椿と一緒に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます