五行の手紙と青春譚

大鷹 涼太

00_プロローグ~A Message to Myself~

 『幸福の神は前髪しかない』という、古くからのことわざがある。


 これは『チャンスは訪れた瞬間に掴まなければならない』という意味で、決してチャンスの不平等さを嘆いて神様をおとしめるために作られたものではない。


 ただ、誰だってチャンスがうまくいかなくて悔しい思いをしたことがあるはずだ。


 例えば、テスト勉強で山を張ったところが全然出なかったり、せっかく課金したガチャで欲しいキャラが出なかったり、気になる異性の前で格好つけようとして、逆に失敗してしまったり……


 チャンスは何度も巡ってくるように思えるけれど、実際にそれを本当に活かせることは意外と少ない。


 だからこそ、誰かは勉強して学力を高め、誰かは働いてお金を稼ぎ、また別の誰かは自分を磨いて魅力を増す。そうやって、人は少しでも多くのチャンスを逃さないように、時間を惜しんで日々を過ごしているのだ。

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