第6話 トランプ
ニックはリットの執務室を後にし自室へと戻った。
ニックは即効性のあるものとして娯楽品を選んだ。
なぜ娯楽品を選んだのかというとそれは広まりやすさにある。この世界では娯楽というものが少ないのではないかと読んだからだ。目新しい娯楽品が登場すれば爆発的にヒットすることは間違いないだろう。
そしてその娯楽品としてニックはアレを選ぶこととした。
「自分がよく遊んだもの…そして誰でも出来る…アレしかないよな…よし!トランプだ!」
ニックが選んだもの、それはトランプであった。
トランプは、カードゲームに使用される52枚のカードセットのことである。通常、4つのスートであるハート、ダイヤ、クラブ、スペードに分かれ、各スートに13枚のカードが準備されている。そしてこのカードの中にジョーカーが含まれたものになる。
このトランプの良いところは遊びとしての汎用性が高いところにある。
例えば、ページワン、大富豪、大貧民、神経衰弱、ババ抜き、ブラックジャック、七並べ、ポーカーなどがあげられる。
「多種多様な遊び方ができるし、それに原価も安い…利益も出やすいだろう。」
何よりトランプは紙さえあればできてしまう。
これを作成できる環境さえ整えてしまえばあとは簡単である。
ニックはメイドを呼び、トランプの作成を指示した。
メイドによると街の絵師に描かせるといい、明日の朝までには出来上がる見込みである。
「よし、あとは完成を待つのみ!今日はゆっくり休もう。」
こうしてニックの一日が終わった。
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次の日、ニックの手元に完成したトランプが届けられた。
絵師に柄を描かせたため、とても綺麗な美しい仕上がりとなっていた。
「素晴らしいできだ、これなら父様も納得してくれるだろう…」
ニックは早速リットの待つ執務室へと向かった。
「父様、試作品を持ってまいりました。」
「な、なんだって!ほんとにもうできたのか!?」
リットは驚く。
「はい、では早速ですがお見せします。こちらです。」
そう言うとニックはトランプをリットに手渡した。
「ん?これは一体…小さな紙にそれぞれ絵柄が描かれているが…」
「これはトランプと言います!」
「トランプ…?」
「はい!では早速、いくつかこのトランプでの遊び方をお教えしましょう!!」
ニックはトランプでの遊び方をいくつかリットに伝授することになった。
そして1時間後…
「わ!負けてしまった!ニック、もう一度やろう!」
リットは見事にハマっていた。
リットに教えたのはババ抜き。至ってシンプルなゲームだが心理戦なところもあり、楽しいゲームである。
「父様、既に1時間ほど過ぎていますのでほどほどに…」
「ん?あぁ、そうだな…」
リットは少し恥ずかしそうにする。
「…ニック、このトランプ、とても面白い。他にもまだ遊び方がある。これは必ず売れるよ。」
「はい!そこでこのトランプを量産する体制について話したいのですが…」
「おお、もうそこまで考えていたのか。聞かせてくれ。」
「はい、このトランプは紙に印字するだけのとてもシンプルな物です。専用の工場を作り、印字するための版を作ります。」
「なるほど…よし、その手配はこちらでやっておく。それに商品登録もしておこう。」
「商品登録ですか?」
「うむ、商品を真似されないよう商務省に申請を出すんだよ。トランプは複製されやすいだろうしね!」
どうやら制度などは意外としっかりしているようである。
「次にこのトランプをいくらで売るかが問題だな…」
「父様、一応原価は小銅貨2枚といったところですね。」
このサリスタ王国ではサリスタ硬貨が使用されている。
白金貨 1,000,000円
大金貨 100,000円
小金貨 10,000円
大銀貨 1,000円
小銀貨 100円
大銅貨 50円
小銅貨 10円 である。
つまりトランプはひとつ20円で作れるということだ。
ここまで安いのは、この世界での物価が安いこともある。
「そうか…ではひとつ小銀貨3枚でいこう。」
「小銀貨3枚ですか。かなりの利益が見込めそうですね。」
「そうだな。本来ならまだとってもいいと思うが、トランプ広めるという意図もある。」
「そうですね。ではそれでお願いします。」
こうしてトランプがこの世界で最初の娯楽品として発売されることとなる。
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