抜け駆けOK!

崔 梨遙(再)

1話完結:1300字

 あれは、20代の半ばくらいだったか……? 詳しくは思い出せない。会社の先輩2人と、年上の後輩と4人で繁華街にナンパしに行った。しばらく夜の繁華街を女性に声をかけながらさ迷った。


 すると、先輩が1人“別行動する”と言い出した。その先輩はテレクラマスターだったので、テレクラに行くということだった。残ったのは黒田先輩、年上の後輩の堀さんと僕の3人。


 3人組か4人組を狙っていたが、なかなか上手くいかなかった。すると、終電が終わった時間になった。一気に人通りが少なくなったが、残った者は時間を気にしなくていいということだ。チャンスかもしれない。


 そこで、座り込んでいた女性2人組を見つけた。


「飲みに行こう!」


と誘ったが、


「初対面でお酒が入るのは怖い」


と言われたので、喫茶店に入ることになった。女性陣は、長い黒髪でなかなかの美人の雫(しずく)21歳と、茶髪を肩の上で切っている華子(かこ)、20歳(まだ誕生日が来ていなかったが、もうすぐ21歳になるとのことだった)。華子ちゃんは雫と比べると美人ではないが、小柄ということもあって愛嬌があった。


 ここで、女性2人に対して男性3人になった。女性が1人足りない。ということは、取り合いになる。男3人のアピールタイムが始まった! みんな、前へ前へ出ようとする。当然だ、最悪、相手がいなくなるのだから。


 とりあえず、食事、パフェ、コーヒーを雫と華子に提供した。お腹が膨れて、甘い物が入ると、女性は少し機嫌が良くなる。


 話が盛り上がる。だが、その内、男性陣は足の引っ張り合いをするようになった。全くもって見苦しい。みんな、雫狙いなのだが、もし雫に選ばれなかった時のことを考えると、華子をキープしておきたい。しかし、男性陣の思惑通りにはいかない。


 やがて、僕が攻勢に出た。


「2人は、この3人の中で付き合うとしたら誰を選ぶ?」

「えー! 付き合ってるイメージが湧かへんわ」

「どうしても選ばないとアカンとしたら?」

「えー! 選ばれへんわ-!」


 まだ、誰もリードはしていないようだ。


「私、彼氏がいてるし」


 雫の発言で風向きが変わった。


「華子ちゃんは?」

「彼氏? 今はおらんけど」


完全に風向きが変わった。黒田先輩と堀さんが華子を集中攻撃するようになった。僕は、逆に雫に狙いを定めた。


「雫ちゃん、ホテル行こうや」

「ダメです-! 彼氏がいるから」

「そりゃあ、それだけキレイやったらおるやろう。でも、それは偶然僕よりも早く出会ったというだけの話やろ?」

「うわー! なんでそんなに自信満々なんですか?」

「自分に自信を持てる男の方がええやろ? さあ、今の彼氏から僕に乗り変える時やで、ホテルに行こうや」

「ダメー! ダメです-!」

「ほら、ダメとは言うけど、嫌とは言わへんやんか」


 などと攻めあぐねていたら、朝陽が上ってきた。


「あ、始発の時間やわ」



 雫も華子も去ってしまった。連絡先も教えてもらえなかった。結局、男性陣に勝者はいなかった。僕等は、いったい何をやっていたのだろう?







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