転生氷魔法使いと夢の果て
桃井桜花
序章
謎の青年・ロイド
私、ルナ・マーティンは一年前、別の世界でOLをしていた。本名は山本照子《やまもとてるこ》。
そして一年の月日が流れ、私たちは二年生に上がった。ミステリウム魔法学園では、今日もあの日がなかったかのように騒がしかった。授業も受け、放課後に部活や委員会活動をし、暇になった私は仲間たちと寮に戻ろうと廊下を歩いていた。
「ルナちゃん〜、今日の夜ご飯なんだろうねぇ〜」
私の右横にいるこの子はマリアンヌ・アイリーン。
私の親友。固有魔法は
「確かカレーだった気がするわ〜! アタシ辛いのは苦手だから、サラダ大盛りにしてもらおうかしら?」
マリアンヌの横にいるオネェ口調のこの子は、レオナ・アルフレート。
中身は男! 心は乙女! どこか聞いたことあるって? 見た目は子供、頭脳は大人! 名探偵コ〇ン! 的な感じだって? だって実際そうだし…。まぁ、そこは置いといて! レオナは私たち女子の味方で、美容や甘味についていろいろ教えてくれる! たまに女子会を開いてお菓子を作って食べたりしている。女子会の内容はほぼ恋バナだけどね!
「サラダ以外にも食え。それだと体力が持たない」
そして、私の左横にいるのが彼氏兼ライバル兼ファリス寮のおかんである、セド・レナード。
編入試験に目をつけられて以降、共に行動するようになった。そして、*ウィザード・セクト候補試験前に告白されて、最終試験前に返事を返して両想いになった。今となっては編入試験を受けなければ、セドたちとは出会えていなかったんだな~としみじみ思う。
「流石、ファリス寮のおかん!」
「だれがおかんだ」
セドは私の頬を抓った。すると、レオナがニヤニヤしながらこちらを見てきた。目つきの悪いセドはレオナを睨みつけ『なんだ』と問いかけた。
「何って…うふふ。セドちゃんが幸せそうだなって思っただけよ。いろんなことあったけど、やっぱりセドちゃんはルナちゃんがいないと生きていけないみたいね~」
「そ、そんなことないからな…」
レオナの言葉が図星だったのか、セドはそっぽを向いた。その際に見えた耳はほんのり赤く染まっていたのをみんな見逃さなかった。
「ところで、ユノちゃんは今日もルーカス先輩の見舞いらしいわね?」
「うん、ユノ先輩……いや、ユノさんもルーカス部長のこと心配しているからね」
そう、ユノさんは元々私たちよりも一年年上だったけど、
「そうなんだねぇ~。早く起きるといいね~」
「そうだな。んで、これから何をする?」
「うーん。今日の魔法史教えて?」
私はセドに両手を前で合わせてお願いをすると、ため息をつかれながらも了承してくれた。
「ルナちゃんは本当に魔法史が苦手だねぇ〜」
「生前も歴史だけは無理だったからね!」
「自信満々に言うことじゃないだろうが…」
おかんにツッコまれてた。褒められた気がしたんだけどなー(棒)。
冗談を交えながらいつも通り会話していると、前から誰かの肩にぶつかってしまった。私はすぐにぶつかってしまった青年に頭を下げ謝った。
「ご、ごめんなさい! ちゃんと前向いていなかったです…お怪我はありませんでしたか?」
「大丈夫ですよ。貴女様こそお怪我はありませんでしたか?」
「は、はい!」
顔を上げると黒いスーツを身に纏い、黒いロングウルフで、細いフレームの眼鏡をつけた青年が微笑んでいた。
「それならよかったです。ついでになんですが、校長室はどこなのでしょうか? 生憎、この学園の者ではないで……」
青年は周りを見渡しながら、私に校長室の道を聞いてきた。私は校長室の道を教えると、理解したのか『有難うございます』とお礼を言われた。
「いいえ! 気にしないでください!」
「では、失礼致しますね」
青年は私たちに軽く頭を下げ、その場を去ろうしたが一度立ち止まった。
「あ、もう一つよろしいでしょうか?」
顔をこちらに向け、青年は左人差し指を立てながら問いかけてきた。
「はい」
「貴女様のお名前をお聞きしても?」
「ルナ・マーティンです」
私は青年に名前を名乗ると、『有難うございますルナ様』とお礼を言われた。
「僕はロイド。ではルナ様また」
ロイドと名乗った青年は再び後ろを振り向き、今度こそその場を去っていった。
───これは謎の青年・ロイドと出会いと彼と出会ったきっかけをもとに、己の夢を探し、その夢を叶えるまでの物語。
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