第7話 はぁ?商人になる?そんなことをして騙されて一文無しになったらどうするのですか?

「ユフィ!やはり人には信用が大事だ!僕は商人になる!」

「はぁ?」

前回は神官になり、さらに神殿長になるべく当家からの多大な寄進を受けて頑張った結果、恋焦がれた相手に裏切られて失職したことに何か思うことがあったのでしょうか?


残念ですが、あなたに信用という文字は似合いません。悪用なら似合うと思いますがいかがでしょうか?


ちなみにあなたが暴いたマクシミリアン侯爵家の不正ですが、昨今では面白おかしく話のネタになっているようですよ?

きっとそんなことを面白おかしく酔っぱらって語っている人たちが奥さんに言う一生のお願いという言葉と同じくらい信用と言う文字が似合わないですわね。


しかし、商人になって何か売るものがあるのでしょうか?

当家の大事な商品は絶対に触らせるつもりはありません。なぜなら信用が命の商品であり、商売ですから。

あなたには無理です。



「ちなみに何を取り扱うおつもりなのですか?」

「あぁ、これだ」

「はぁ……」

旦那様が自信満々に取り出したのは……これはなんでしょうか?なにかの板のようですが。


「なにかわからないか?そうか、そうだよな」

そのドヤ顔、殴りつけたい……。


「くっ、これは持っているだけで精神が安定すると言う魔法のお守りだ」

いけません。ちょっと殺気を放ってしまったせいか、動揺させてしまいました。


「これを昨今の不安定な情勢に心が乱れている民衆に売りさばいて大儲けするのだ!」

えーと。どう反応しろと?


錯乱状態にでもあるのでしょうか?

だとしたらそのお守りが効果を発揮しているとは思えません。


さらにここは王都です。

王都で『不安定な情勢に心が乱れているそこのあなた!』とか言うセールストークでも繰り広げるのでしょうか?


きっと不敬罪で投獄……あるいは処刑してくれて構いませんが、どうか当家に不利益を与えるのはやめて頂きたいのです。きっと公爵様のせいになるとは思いますが。


それに大儲けと言っていますが、それはいくらで仕入れていくらで売る予定なのでしょうか?


妖しいキノコでも食べたのかなと思うようなニヤニヤ顔を張り付けたバカには理解ができないかもしれませんが、一応聞いてみました。


「それは旦那様の作られたものではないですよね?」

「あぁ」

「どこからか仕入れたのですか?いくらで?」

「これはルートニー子爵家が作っているお守りだ。彼らは実は神殿にこれを販売しに来たんだが、どうも不採用になってしまったんだ。酷い話だろう?新たな神殿長は民心なんかに興味がないんだ」

バカなのでしょうか?


不採用と言うのは効果がないからで間違いないでしょう。

悪徳な商売は許さないと言う、神殿長の実家であるラヴェロア侯爵家の誠実な意向に沿ったものでしょう。


あと、ルートニー子爵家で思い出しましたが、昨年社交界で噂になった美しい令嬢がその家のご出身だったかと思います。

まさか子爵令嬢と浮気をしていることはないとは思いますが……。



「ルートニー子爵は大量に作ってしまったこれの売り先に困ったようでな。僕が全て100万ギルで買い取ったんだ!」

「このおバカ!!!!!」

「ぐはっ……」

それはこのまえ当家が神殿に寄進したお金全部ではないのですか?


不正により失職に追い込まれたということで、謝罪の意味も込めて……あとは神殿長になる応援を別に行ったお礼の意味も込めてラヴェロア侯爵家が返還してくれたお金が戻ってこないと思っていたのですが……。


しかも、庶民の年収の100倍の金額分のお守りを買ったと?

それを庶民に売りさばいて利益を出すのにどれだけ売るつもりなのでしょうか。

せいぜい1つ5ギルで売ったとして、20万個……。

まさか王都民全員に1つずつ売るつもりなのでしょうかこのバカは?


「くっ、くそっ。覚えてろよユフィ!全部きっちり販売して目にものを見せてくれる!!!」

全部売れたらビックリしますが、その場合には見直して差し上げましょう。

その動揺しまくりな状況が、そのお守りの効果が怪しいと言っているようなものですが……。


今気づきました。

もし全部販売なんかされたらこのクルスローデン伯爵家の悪評につながりはしないでしょうか?


明かに効果はないのです……。


はっ、として執事長を見たが、彼もマズそうな顔をしています。


「すぐに回収して。難しければ買い取ってください」

「……はい」

凄く不承不承と言った感じです。当然ですわね。

強欲な旦那様は100万ギル以上の売り上げを目指すでしょうから。


「ルートニー子爵家も調べなさい。いや、その前に神殿とラヴェロア侯爵家に効果確認を。全く効果がない悪質なものなのであれば、正式にルートニー子爵家に抗議して購入金額を取り戻します。あと、旦那様が利益を使ってしまった分についてはお小遣いから減らします」

「はい」


なんとか最悪な事態を避けることができました。


お守の効果を調べましたが、結果は当然ながら効果なし。

ただなんとなくそれっぽい色味、持ち心地があるので、ちょっと心が落ち着くとか、気が紛れると言った効果がもしかしたら発動する人もいるかもしれない。そんな程度の……つまりただの鉄くずでした。


当然返金させます。

返金しないと訴えると言ったらすぐに返金しました。

当家を敵に回したらまずい……。


これも1つの信用……信頼ですわね。



なお、完全に暴くまでの間、旦那様には商売をさせていましたが、当然ながら1つも売れませんでした。


真昼間から市場の端っこで鉄くずを売る怪しい自称貴族から何か買うほど民衆はバカではありませんでした。

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