三年間の時の中で

すばる

第1話 出会い

 入学式が終わり、クラスの自分の座席に戻った時、隣の席の彼女は僕に、

「これからよろしくね」

「うん、よろしく」

初めましての挨拶を終えると、担任から今後の説明が始まった。

 その説明が終わると、クラスで自己紹介をみんなで、することになった。

次々と自己紹介が終わり、彼女の番となった。

「みなさん、初めまして、漣時雨と言います」

「これから1年間よろしくお願いします」

 男子生徒が時雨の方をずっと見ている。

それもそのはず、なぜなら同じ世界に生きているとは思えないような、絶世の美女だからである。

男子生徒が、ざわざわしている中、自分の番が回ってきた。

「田中奏多といいます、よろしくお願いします」

早く済ませようと短めの言葉になり、席に座ると、

「緊張してたんですか、ちょっと震えてましたよ」

 時雨がツッコミを入れてきた。

「知り合いが一人も、いないから緊張するよ」

と奏多は恥ずかしそうに、時雨に返した。

 クラス全員の自己紹介が終わり、帰宅の時間となった。

「ねぇ、漣さん」

「はい、なんでしょう」

かなりヤンチャそうな、男子生徒が時雨に話しかけた。

「今日って暇かな、暇だったらこの後どう?」

と、目的があからさまな誘いをする。

「こいつ、早々にナンパすんなよ」

と奏多は思ったが、

「いえ、この後は母に、すぐ帰ってくるよう伝えられてますので、すみません」

 時雨は、よくある事のように、上手く交わして、誘いを断った。

「そっか、じゃあまた今度誘うね」

と言い放って、男子生徒は他の女子生徒と、帰宅して行った。 

「ヤバい奴がクラスメイトになってしまった」と、ボソッと独り言を言った奏多に時雨が、

「あの、田中さん、良かったら一緒に帰りませんか?」

奏多には想像もつかない、誘いをしてきた。

「いいよ、じゃあ帰ろっか」

緊張しているのを、一所懸命に出さないよう、

頑張って涼しい顔をしながら了承した。

「田中さん、バレバレですよ」

と、微笑みながら、時雨は奏多のことをからかった。

慣れない帰路を、二人で歩いていたら、2本の分かれ道にぶつかったので、奏多が時雨に質問をした

「漣さん、帰り道はどっちの道?」

「俺は商店街の方なんだけど」

と、自分の帰り道のことも触れつつ話したら、

「私も、商店街の方なんです、一緒ですね」

と、奏多の方を向き、夕暮れの太陽に照らされながら、時雨はこう言いながら微笑んだ。

「この笑顔、心臓に悪いな」

奏多は、目線をはずし時雨に聞こえないくらいの声で呟き、目線をそらした。

商店街のアーケードの中を、通りながら他愛もない話を、していたら気付かぬ間に、家の近くまで帰っていた。

「じゃあ、私の家ここなので、また明日」

と、時雨が別れの挨拶をしてきたが、奏多は

「ちょっと待って、俺も今日からここに住まわせてもらうんだけど」

 奏多が、こう言うと

「え?」

時雨は戸惑ったように返事をした。

二人して立ち往生していると、家の中から、

「あら、二人とも帰ってきたのね」

「奏多くんいらっしゃい、今日からよろしくね」

と、こちらに歩きながら出迎えてくれたのは、

時雨の母、白雨だった。

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三年間の時の中で すばる @subaru2463

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