鬼の嫁とり

ふうこ

いつかどこかのものがたり

 ぽん、ぽぽん、と鼓が鳴る。その音に合わせるように、行列は静かに村を出立した。

 いくつかの行李を載せた大八に、花嫁衣装に身を包んだ小柄な姿を乗せた神輿が1基。花嫁は綿帽子を被り深くうつむき、その顔を伺うことは出来ない。ただ唇に差した朱のみがぽつりと目立つ。

 神輿は萌黄の中を静かに進み、村はずれの朽ちた社に入っていった。誰もが言葉を発すること無く花嫁を、行李を置いて立ち去った。

 ぽつりと花嫁の唇から息がこぼれた。一人きりの社は虫の音が聞こえてくるばかりの寂しい場所だ。遠のく足音は忙しなく、半ば駆けているのだろうことさえ伺わせられた。それはそうだろう、誰だってそうだろう。


「お主が花嫁か」


 響いた低い声に、花嫁はびくりと肩を震わせた。小刻みに震える身体を鼓舞するように手のひらをぎゅうと握りしめた。

 花嫁の首が縦に振られると、呼びかけた声の主がその前に姿を現した。虚空から溶け出すように音もなく現れたのは一人の鬼だ。額には天を指す二本の深紅の角を持ち、笑みに歪んだ口には牙が見えた。目元は仮面で覆われており、表情はうかがい知れなかった。

 ゆくぞ、と告げられ、花嫁はその場に立ち上がった。その身体を、角を生やした男の手が掴む。ぎくりと強張る花嫁を気にした風もなく、鬼は腕の中に花嫁を抱きすくめた。俯いた姿そのままに鬼の腕に包まれ、花嫁はふたたび、ぽつりと息をこぼした。どうした、という様に鬼が花嫁の様子を窺えば、それから逃れるように、何でもないと答えるように、花嫁は静かに頭を振った。


 鬼の手からなにかが放たれた。かさりと乾いた音を立てて、ちょうど花嫁が座っていた場所に、小さな包みがいくつか落ちる。

 視線のみで、花嫁は己のいた場所を眺めた。これが見納めと思うのか、それとも他の何を思うのか。熱のこもらぬ眼差しは、けれど鬼の目には映らない。

 ゆらりと空気が淀み、歪み、2人の姿が少し離れた場所に置かれた行李と共に空中へと溶けるように消えてゆく。

 花嫁は鬼の腕の内に大人しく収まったまま、閉ざされた社の戸を眺めていた。2人が消えゆく、最後の瞬間まで、ずっと。



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 鬼は、自分の前でひれ伏す花嫁を困ったように眺めていた。

 それはそうだろう、花嫁の自分でも、鬼がさぞや困るだろうことは分かる。分かっていた。その上で、ここに来た。

 そう心の中で鬼の気持ちに同調しつつ、同情しつつ、『少年』は頭を地にこすりつけんばかりの勢いで頭を下げ続けた。


「いかようにして頂いても構いません。どうぞお好きになさってください」

「そうは言われてもな」

「すでに祝言は挙げています。オレはあなたの妻です」

「そうは言われてもな……!?」


 ガシガシと髪を掻きむしり、鬼は花嫁の前に腰を下ろした。正確には、『花嫁衣装を着ていた少年の前に』。

 少年の名はコウと言った。少年――それも13では未だ男ではなく、日頃満足に食えない為に筋肉の付かないほっそりとした四肢は女のものとも大差ないほどだ。だから大丈夫だと、彼は姉から花嫁役を奪い取った。


 先日、とんでもない出来事が村を襲った。

 それは村としても突然であり、ひどくはた迷惑で、かつ、恐ろしい申し出だった。

 鬼の里へ嫁ぐ嫁御を1人用意しろという知らせが、どこからともなく届いたのだ。


 鬼と呼ばれる者達の存在は古くから知られていた。人外のものであり、強大な、不思議な力を持つとも伝えられている。ただ、誰も本当にいるなどと信じてはいなかった。悪いことをすれば連れてかれちまうよ、喰われちまうよ、と子供を脅すのに使われていた程度のことだ。けれど、その申し出の手紙と、添えられたものを見ては信じざるを得なかった。ものが添えられていたのかそれとも手紙がものに添えられていたのかは微妙なところだったが。

 添えられていたものは、昨今村の近くで目撃され、襲撃を恐れられていた巨大な熊だった。その凶暴な獣の、無残に首をねじ切られ息絶えた骸に、その手紙と思しき紙は貼り付けられていた。


 人身御供だと誰もが思った。嫁という名の生贄だろうと。ただ、無下にも出来ぬ申し出だった。何しろ相手は『鬼』なのだ。断れば何をされるか分からぬが、可愛い娘をやるなど出来ぬどうしたものかと村の男達が額を付き合わせていたその時、追加の申し出が舞い込んだ。それこそ、会合をする男達の頭上から、紙が一枚、ひらりと舞った。

 その紙にはこう書かれていた。『花嫁と交換に、薬を5包遣わそう』、と。

 鬼の薬は、万病薬とも伝えられる幻の薬だ。願ったからと容易に得られるものではない。仮に存在するのであれば、値千金、それこそ、娘1人と1包とが等価でやりとりされるほどの代物だった。下手すれば娘の方が増えることさえ有り得る価値だ。それが5包。

 ならばと村は動き出した。ちょうど村の外れに、親を亡くして老婆に引き取られた子がいたぞ、と。


「お願い、姉さん」

「でも、コウ」

「姉さんは隣村にいい人がいるじゃないか、鬼に売られてくなんてあんまりだよ」

「そりゃ、あたしだって鬼に食われるなんて嫌だけど――」

「男だって知れたらきっと帰して貰えるよ。それにオレは男なんだ、姉さんより足だって速いし力も強い。鬼なんて山で撒いて逃げちまえば良いんだよ」

「でも」

「オレと姉さんは良く似てるもん。化粧して綿帽子被っちゃえば分からないよ。バレないように口を閉じてりゃ大丈夫さ」

「ダメよ、もしもバレたらどんな目にあうか――」

「だって、オレ嫌なんだよ、姉さんがこれ以上不幸になるなんて――」


 話し合いは平行線で、けれど、嫁入りの前夜、コウは姉を無理矢理逃がした。姉のいい人が偶然にもこの話を聞きつけ、姉を救いに来てくれたのだ。最後まで躊躇う姉を男に託し、コウは家へ戻った。姉には、別の道で自分もすぐに逃げる、姉のいい人の家がある隣村で落ち合おうと言って。


 逃げることは出来なかった。初めからする気もなかった。姉を確実に逃がすにはそうするのが一番だと分かっていたからだ。

 残された花嫁衣装と支度の品とその横で土下座するコウを見て、結局老婆はコウを罵りながらも、花嫁衣装を着せ飾り立て花嫁に仕立て上げた。娘を直前で逃がしたことを村に知られることを恐れたからだ。

 老婆によって花嫁として村人の前に突き出され、コウは大人しく従った。


 逃げなかったのは、姉の為だ。老婆から与えられる少ない食物をやりくりして、コウを生かしてくれたのは姉だった。

 姉には逃げる、逃げ切れると言いはしたが、到底逃げ切れるなどとは思わなかった。何しろ相手は鬼なのだ。そして逃げ切れなかった時、謀ろうとした自分を追うならまだ良いが、そもそもの花嫁を追うかもしれないという恐れがあった。

 同時に思ったのだ。娘1人に5包もの薬を寄越すような気前の良いお人好しの鬼ならば、男のものとは言え命を捧げて心から謝れば、姉1人くらいは見逃して貰えるかも知れないと。

 この命は姉に生かされた命なのだ。姉の為に遣って何が悪い。きっと姉は泣くだろうが、幸せにはなれるだろう。姉と思いあう男は一途で情けの深い……良い男だったから。


 元から村に居場所はなかった。コウの両親は旅の薬師で、子供2人を連れ街から街へと渡りながら暮らしていた。

 この村から少しだけ離れた所にある船宿で、両親は病を得て倒れた。偶然居合わせた老婆に宿で看病を手伝って貰った子供2人は、両親を看取った後、老婆のふるさとだというこの村へと連れてこられて、両親の骨をこの地に埋めた。

 多少はあったはずの両親の蓄えは宿代にと残さず宿主に取られ、無一文となった子供を老婆が哀れんで連れてきてくれた――ということに、なっている。それにしては老婆にとっての子供2人は体の良い働き手で、朝から晩まで休む間もなく働かされた。姉も自分もガリガリに痩せ細っている割りに、老婆はひどく血色が良く肥えていた。


 転移の前、鬼に身体を抱かれたときにはひやりとした。触れられればバレてしまうかもしれないと。鬼たちが神出鬼没とは知っていたが、まさかあのような術を使うとは知らなかった。鬼が鈍いのが幸いしたのか、それとも――確か鬼は五感も鋭かったはずだから、女の化粧粉の匂いで誤魔化されてしまったのか。


 祝言を挙げるまではと、コウは静かに鬼の言うままに動いた。式は簡易で、その場の鬼は目の前の鬼と神主だけだった。三三九度の杯を交わし、滞りなく式を終えた後、鬼はコウを連れて自宅らしき家へと戻った。

 こざっぱりとした家は大きくはなかったが住み心地は良さそうで、作りも随分しっかりしていた。

 そして寝具の用意された部屋へと入り、互いに衣装をくつろげて――先の通りとなったのだ。

 すでに化粧も落とし衣装も単衣になっている。


「なんで、こんな――」

「姉には思い思われる相手がいました。企てたのはオレです。罪はオレにあります。男の、やせっぽちのオレでは食いでもないでしょうが、なにとぞオレでご容赦ください」

「いや食べないよ……人なんて食べるわけないだろ……何、恋人いたの君の姉さん……初耳なんだけど……村の中にそんな奴、いた?」

「隣村の男です。あの村のヤツらで姉さん狙ってるのもいましたけど、オレが防いでましたんで」

「隣村! 盲点だった……!」


 ……何だろう、この会話。ふと気になってコウはちらりと視線を上げた。

 まず目に入ったのは額の両端から上へと伸びる2本の赤い角。髪は黒く肌は白い、そして仮面を取ったその容色は驚く程の美しさだった。思わずぽかんと口が開いた。男らしい色気の匂う凜々しい目元も口元も、これまで見たどんな男女のものより整っていたのだ。


 ……そんなに頭をかきむしっては、ハゲてしまわないだろうか。ふと相手の頭皮が心配になったが、鬼はどうやらそれどころではないらしい。大きな溜め息をついてはちらりとコウを見て、再び頭を掻きむしっては溜め息をつく、という仕草を繰り返していた。頬が僅かに染まっているように見えるのは、まさか本当に姉に好意を寄せていたのか。姉とコウとは良く似ていたから、コウを見て姉を想起するのは有り得そうだ。食べないのならば、まさか本当に、ただ嫁に迎えようとしていたのか。

 そういう姿を見ていると、なんだか男が鬼ではなく、美しいばかりの普通の男のように見えてきて、コウは思わずくすりと笑った。姉に一目惚れして口説き落とした隣村の男になんだか少し雰囲気が似ている気がした。勿論角は生えているし、容姿も全く似てはいないが。


「あの――」

「いや、もう良いよコウ。来てしまったのはどうしようもないし、祝言も君と挙げてしまったんだ。目論見とは違ったけれど、別に悪い方へ転がったわけでもないし、――……正直馬で我慢しとこうと思ったら将が直接乗り込んできちゃったみたいな感じだし――」


 あれ? オレの、名前……?

 名乗ったか? と疑問に思うも、そこは鬼の神通力かなにかだろうと思い口を閉じた。それにしても言葉の後半、なんだかもぞもぞと口の中で呟いてて良く聞こえなかったんだけど……、馬がなんなんだろうか。


「いいかい、コウ。鬼の祝言は絶対だ。挙げれば最後、互いに死ぬまで添い遂げなくてはならないんだよ。逃げることは許さない。ずっと俺と2人、夫婦として暮らすんだ。……君が逃げようとしても嫌だと言っても、もう帰してあげられない」

「逃げるなんてしません。その代わり、姉にも村にも、どうかご容赦を」

「いいよ、手は出さない。約束の薬もそのままにしておく。それでいい?」


 あっさりと男は頷いた。

 ウソみたいだ。こんなに、……都合の良いことって、あるんだろうか。


「あの、ところで、夫婦としてって、オレは一体何したら?」

「………………取りあえずは、この家で煮炊きや掃除、洗濯をしてもらう。俺の……つ、妻としてね」



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 妻として。……という言葉の裏に何かしらの意味があるのかと勘繰ってはいたものの、翌日からの生活は実に穏やかなものだった。

 朝起きて食事の支度をし、掃除洗濯をした後は夕餉の支度を調えて共に食す。――そう、『共に』食す、のだ。同じものを。最初はなにかの間違いかと思った。老婆は決してオレ達姉弟と同じ場所で食事はしなかったし、与えられるものも数段下げたものだった。家長とそれ以外に差があるのは当然だと教えられて育てられた。


「何言ってるの。別のもの用意する方が面倒でしょ?」

「あの、でも」

「それにコウはもっと食べないと。おかわりは? しないの?」

「いやでも、それは」

「量を食べられない? そんなことはないよね? ほら、お茶碗かして、よそって上げるよ」

「だ、旦那様にそんなことしてもらうわけには!」

「……だんなさま……いい……あ、今のもう一回言って?」

「そんなことしてもらうわけには?」

「そのちょっと前」

「え? えっと……だ、旦那様……?」


 時折会話の妙な部分を繰り返してくれと頼まれることはあったが、それ以外は特になんということもない。作ったものはどれも美味しい美味しいと食べてくれるし、会話も豊富だ。罵られることも怒鳴られることも怒られることさえまったくなく、それどころかねぎらいの言葉を掛けてくれるし、たびたび働きを褒めてくれる。

 食事の支度も掃除も洗濯も2人分しかなく、老婆の家での労働よりもよほど楽だった。なにしろ老婆の家での仕事は彼女の家の仕事だけではなく、村の家々の仕事も請け負ってのものだったのだ。

 時間があまると言えば、男は家の書庫にある本を好きに読んでも良いと言ってくれた。文字を読むのは不得手だったが、絵入りの書もあり十分に楽しめた。


 男は里の薬師だった。なるほど、薬を5包も差し出してけろりとしているわけだ。自分で作ったものだったからなのか。

 初めは調合の部屋は掃除も要らないから入らないようにと言われていたけれど、一月もたたない内に危険なものには×印を付けたからと出入りを許された。


「コウの親御さん、薬師だったろう? 興味があるんじゃないかと思ったのと、親御さんから何か教わったりはしていなかったかなと思って」

「……! はい、少しだけど、調合は学んでて! オレ、父のような薬師になりたかったんです」


 すぐに簡単な調合の手伝いも任せて貰えるようになり、共に過ごす時間も増えた。男は博学で色々なことを教えてくれたし、コウの両親の話も聞きたがった。

 村では老婆によって姉とさえ両親について語ることを禁じられていたから、もう2人のことは忘れてしまったのだと思っていた。けれどそんなことはなかったのだ。男に語るほどに様々なことを思い出し、時に涙することもあった。そういう時、男は大抵、コウを抱きしめて慰めてくれた。


 出来上がった薬の配達も任されるようになり、里のものとの交流も増えた。どこへ行っても鬼たちはにこやかで穏やかで、声を荒らげることも殴られることも暗がりへ引きずり込まれるようなこともなかった。薬を受け取れば誰もがきちんと礼を言い、お代にと色々なものをコウに渡した。


「鬼って怖いものだと言い伝えられていたんですけど、そんなことないんですね。村の人よりよっぽど優しい」

「はは、……そういうことにしときたかったんだろうね」


 そういうことってどういうことかな。そう思いはすれど、つまり「そういうこと」なんだろうと納得した。こんなにも綺麗で強くて優しいなんて知れてしまえば、娘はこぞって嫁に来たがってしまうだろう。そうなれば村は大変なことになるもんな。


 少しだけ不安のあった夜の生活も、実に穏やかなものだった。

 男は同じ寝具で横にはなるが、コウを抱きしめることはしても、それ以上は決して手を出してはこなかった。男だからだろうかと準備も済ませ交わることも出来るし知らないわけではないことも告げたが、男はほんの一瞬怖い顔をのぞかせはしたもののすぐに平静の表情を繕い、僅かに頬を朱に染めて小さく呟いた。「コウがもう少し大きくなったらね」と。


 なので、目下のコウの目標は、たくさん食べて大きくなることになったのだ。

 早くこの優しい男と、きちんと夫婦になりたかったので。



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 コウが男の――ヨタカの元にやってきてから、季節がいくつか過ぎた。彼の元でたくさん食べたせいだろうか、僅かの期間で随分とコウは肥え、伸びた。横幅は人並みになり、初めはヨタカの胸の中程までしかなかった背丈も、首に届きそうな程だ。

 大きくなったよと告げると、ヨタカは嬉しそうに微笑んで大きくなったね、とコウの頭を優しく撫でた。

 違うそうじゃない。……とは思ったが、そうして撫でられることさえも気持ちが良くて、もしもその手で頭以外を撫でられてしまえばどうなるだろうかと妄想しそれを夢に見ただけで下着が大変なことになった――ので、コウからはそれ以上を誘うことが出来なくなった。朝起きて初めて汚れた下着を洗った朝、そう悟ったのだ。だって大変なことになってしまいそうでちょっと怖い。なので、求められるまで大人しく待つことにした。


 平穏の中で毎日を過ごした。少しずつ積み上がってゆくヨタカへの思いは、やがてかつて微かに胸の内に潜ませていた思いを綺麗に上書きしていった。姉と彼女の想い人を思い出しては、無事でいるだろうかとただ温かな気持ちで懐かしく思うことも増えていった。

 そうなれた自分が嬉しくて、少しだけ誇らしかった。



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 その冬は寒かった。

 薬師のいる鬼の里であっても病が流行り、ヨタカは朝から晩まで忙しく働いた。

 その日彼は村長の家に呼び出されて出掛けていた。その彼を訪ねて、村はずれの家から女が訪れた。まだ幼い子がいる女は、子が高い熱を出したために薬を求めてやって来たのだ。ヨタカは主の帰りが遅くなると告げていたが、女はすぐにも薬を求めた。しかし、許可なく薬は出せない。コウは許可を貰う為に、彼の出先に向かい――そして、聞いてしまった。


「――しかし、先に薬は5包やった」

「それでは追いつかぬ程病を得た者が増えたのだろう。あの村の近隣の村にも随分広がっていると聞く」


 ――隣の、村。思わず戸を握りしめれば、ガタリと音が立った。その音に、村長とヨタカが振り向いた。

 聞くつもりはなかったのだと首を振ったが、ヨタカは会話を聞いたことを怒ることはなく、ただコウを労るように頭を撫でた。


「どうしたんだ? 何か用かい?」

「あの、村はずれの家の子が熱を出して、解熱の薬が欲しいって。渡して良いか聞きたくて、オレ……」

「そうか、聞きに来てくれて良かった。あの家の子はたしかまだ3つだろう? 普通の薬では強すぎるから子供用に処方しなくてはね。一緒に帰ろうか」

「でも、話は――」

「終わったところだよ、大丈夫」


 ヨタカは村長を振り返り1つ頷くと、彼も又ヨタカに小さく頷き返した。

 ……隣の村、とは、姉の嫁いだ村だろうか。だとしたら、姉は果たして無事なのだろうか。

 数日の間もんもんと悩み、思い定めた。


「里帰りさせて欲しい?」

「うん。……ダメ、ですか?」


 就寝前の一時、向かい合って寝具の上に座った状態で、コウはヨタカに願いを告げた。

 一目で良いから、姉の様子を知りたかった。なので、目的の場所は姉の住まう隣村だ。姉の村で病が流行っていないかだけが心配だった。


「だめではないけど……」


 ヨタカの様子は戸惑う色が強かったが、拒絶の色も滲んでいた。帰したくないと暗に言われているようで、それがなんだかじんわり嬉しい。


「ここに来てから結構経つので。……姉さんのことが心配なんです。病を得てやしないかって」

「それは大丈夫だよ。遠見の術が使える人に、たまに様子を見てもらっているから。息災に暮らしているよ」


 遠見の術で様子を見ている、と告げるヨタカに、コウはちくりと胸を痛めた。ああ、やはりそうなのか、と。

 彼はやはり、未だに姉を思っているのだ。姉を思っているからこそ、自分に優しくしてくれて、世話を焼いてくれて、……そして決して、手を出さないのだ。

 自分の内にわいてしまったその思いを、コウは密かに胸奥に沈めた。

 例えそうだとしても、彼が自分に良くしてくれた事実に相違はない。ただそれだけが大切なことで、忘れてはいけないことだ。


 己の想いを振り切るように、コウはヨタカと向かい合っていた頭を下げ、床にこすりつけた。

 無事を知らせたい。万が一の時に備えて、薬を届けたい。

 幾日かにわたって粘って頼み込み、やがて男は諦めたように「3日だけだよ」と許しをくれた。



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「忘れ物はない? 薬は持った?」

「はい! あの、こんなにたくさん、良かったんでしょうか」

「うんまぁ……ちょっと、大分広がってるらしくてね。それだけあればお姉さんの村には足りるでしょ。くれぐれも気をつけて」

「はい。必ず戻ります」

「……うん。3日経ったら迎えに行くから。絶対行くから」

「はい」

「あと、何かあったら俺を呼んでね。――何を置いても、助けに行くから」


 送られた先は元いた村の外れの、花嫁として送り出された社だった。

 とは言え、元いた村に寄るつもりはない。あそこには売り渡されたことでもう十分に恩は返した。

 頭の中に隣村への行き方を思い描きながら社を出る。荷物を背負い、さて行こうかと社から足を踏み出したところで、村の女と鉢合わせた。


「あ、あんた……! な、な、なん、なんで……!?」


 失敗した。

 コウは小さく舌打ちして、女が戸惑い指さす内に踵を返した。社に戻ったわけではない。そのまま道を外れて、山の中へと駆け入った。「待ちなさいよ! 疫病神!」と女の金切り声が追いかけてきたが、知ったことか。……しかし、疫病神、とは? と思いながら、ひたすらに駆けた。


 数年ぶりに会う姉は、元気そうに野良仕事に精を出していた。


「コウ……!? あんた、無事だったのね!?」


 出会うなり駆け寄り、泣きながら抱きしめられた。無事で良かった、良かったと、何度も繰り返されて「姉さんも、元気そうで良かった」と涙ぐんだ。

 姉は無事に思い人と結ばれてきちんと夫婦になっていた。すでに子にも恵まれて、共に暮らす男の両親との仲も良好だった。みんなから歓迎されて、貧しい中でもあれやこれやと工夫を凝らし歓待してくれた。男は家で仕込んだ秘蔵の酒まで出してくれた。


「大きくなったなぁ」

「鬼の里に嫁に出されたって、後から聞いて……私、どれだけあんたを置いてったことを後悔したか」

「ごめん、姉さん。でもさ、オレを娶った鬼はなんていうか、ちょっと変わり者で……優しい鬼でさ。その人の家で――小間使いみたいなことさせてもらって、元気で暮らしてる。だから心配はいらないよ。今日も土産にって、薬をたくさん持たせてくれたんだ」


 村の人達で使って欲しいと、ヨタカに渡された薬を渡せば、その量に姉も驚き目を見張った。こんなにあったら一財産どころじゃないよと遠慮する一家に、近隣で疫病が流行っていることを知らせて、万が一の備えとして持っていて欲しいし使って欲しいことを伝えた。


 ……鬼が、姉を密かに想い続けていることは、告げられなかった。

 良くして貰っていることも、彼が良い鬼であることも知らせたのに、そればかりは伝えられなかった。

 伝えてどうなるというのもある。姉は既に夫も子もいる。幸せに暮らしている。波風を立てる必要などどこにもない。ただ密やかに彼女を想うヨタカが報われず哀れなばかりだ。……でも、彼だって、姉の幸せを壊すことを望んでなんていないはずだ。だって彼は、優しく美しい心の鬼だ。


 だから、それを告げないのは、いじわるなんかじゃない。卑怯なんかじゃない。……嫉妬からの気持ちなんかじゃ、ない。


 そんな思いに捕らわれていたからだろうか。3日経ってすっかり姉夫婦一家と仲良くなり、そろそろおいとましなくてはと思いながら甥っ子の面倒を見ている最中に、元いた村の男衆に攫われた。



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 子には何の罪もない、放してくれと頼めば、簀巻きにした上で近くに転がし、足蹴にされた。止めろと怒鳴れば、コウは余計に殴られ、蹴られた。それまでも散々に拳を振るわれ踏みつけられていた身体は既に立ち上がることさえ出来ない。


「疫病神がよ、お前のせいで村は散々な目に遭ったんだ」


 男達が言うには、もたらされた薬は本物だった、それを売った庄屋は大もうけ、その金を元手に都に出て行った。その頃には老婆が差しだした嫁は男の子の方で、女の子は隣村に逃げ出し他の男に嫁入りしていたことも村には知れたが、鬼から文句が入らないのならば男も具合が良かったのだろう、満足したならそれで良いと不問になった。

 やがて巡り巡って薬を手に入れた都の貴人が「もっと調達して来い」と言い出した。そこから、すべての歯車が狂いだした。


 大金に眼が眩んだ庄屋は老婆に嫁入りさせた子にもっと薬を用意させろと迫り、しかし鬼の元に言葉を届ける術などなく、仕方がなしに、老婆は子らの親が残した道具を使い先に得た薬に似たものを調合し、鬼から得た薬として庄屋に渡した。

 それが、災難の元だった。

 当然薬は薬としては働かず、むしろ毒として作用した。流行病に掛かり薬を飲んだ貴人の娘が命を落としたのだ。貴人は怒り、村に兵を差し向けた。老婆だけでなく、庄屋も諸共に殺された。村には多額の賠償金を掛けられて、周辺と比べても重すぎる税が課せられた。あがないきれず、何人もの村人がその身を売った。


 オレには関係ないじゃないか。お前等の自業自得だろ。

 そう思いながら、理不尽な暴力にさらされながら、コウは甥の為に耐え続けた。

 止めて欲しいなら股でも開けよ、これまでも散々姉の代わりと言いながらやってたろうが、淫売が、と貶まれ笑われて唇を噛みしめた。乱暴に足を掴まれ、咄嗟にもがいた。抵抗した。苛立った男に張り飛ばされ、壁に身体を叩きつけられた。

 全身を強打して、目の前が霞んだ。乱暴に髪を掴まれ引きずられて、部屋の中央に投げされた。何人もの男の手が無遠慮に身体を撫で、服を引き裂き暴いていった。

 嫌悪に喉が鳴った。嫌だともがいた腕は纏めて上で拘束された。


 ああそうさ。あの村で暮らしていた頃、姉を守る為ならなんだってやった。自分から足だって開いた。痛みにも屈辱にも耐えた。

 その行為に後悔なんて欠片もしてない。けれど。けれども。


「……けて、……すけ、て……ッ!」


 掠れた声が空に消える。下品な男達の笑い声にかき消される。

 知っている。助けなんてこない。助けてなんてもらえない。全部自分たちでどうにかしなくてはいけない。だから、姉の為に、自分は身体を投げ出していたのだ。それで良いと思っていたのに。

 優しい手を知った。大切にされる心地よさを教えられた。あの人の妻になって、……もう、あの人以外、そういう意味では触れられたくないのだと分かってしまった。

 ――そういうことをしていた汚い自分だから、あの人は自分のことを抱かないのではないかと、ほんの少しだけでも、思ってしまった。


「……ヨタカ……ッ!」


 声に応えるように、空気が歪んだ。

 ごう、と大きな音が部屋を満たして、次にはどさりどさりと重いものが床に落ちる音が響いた。


「コウ!」

「……ヨタ、カ……?」

「そうだ、俺だ。なんという……ひどい、怪我だ。念のため薬を持って来て良かった」

「あ、の、……その辺りに、小さい子がいません、か……オレと一緒にさらわれて」

「ああ、いるな。しかし取りあえずは無事そうだ。まず、コウの怪我の方がずっと酷い」


 身体を起こされ、薬を口に含まされた。打撲に飲み薬……? と思ったが素直に口にすれば、たちまち身体の痛みが消えた。腕や足のアザさえも、薄くなった。

 流石は、鬼の薬……すごい効き目だ。


 礼を言ってすぐに甥を助けだし、ヨタカの薬をもらって含ませた。周囲には、さっきまで元気に乱暴を振るっていた男達が昏倒している。ヨタカを振り向けば不機嫌そうに「気を失っているだけだよ」と教えてくれた。こんなヤツら殺してしまっても良いんじゃないかな、とか思っていそうな顔と目だった。


 甥を姉の元に送るのにも、ヨタカはなぜか付いてきた。オレだけで大丈夫ですよと告げたけれど、ついでだから妻の姉に挨拶くらいさせて欲しいとにこやかに告げられた。

 村では客人と子供が共に行方知れずになったと、家族が総出で探していた。帰りが遅れたことを姉に詫びれば、無事に帰ってくれたからもう良いわよ、と許された。


「ところで、そちらは……?」

「あ、その、えっと、……その、オレの、旦那様で、す……」

「ヨタカと申します。お初にお目に掛かる、義姉上。コウは俺が責任を持って幸せにします。どうぞ、ご安心ください」


 がっちりと後ろから肩を抱かれて、ヨタカは姉に頭を下げた。初めて会った時の面を着けた鬼の姿そのままの彼に、姉は怯えることもなく真っ直ぐに向き合って、深く深く、頭を下げた。



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「……あの」

「無事で良かった」

「……それはその、ありがとうございました。助けて貰えるなんて、思ってなかったから」

「思ってよ! もっと早くに呼んで!? 指標がなくて大変だったんだよ、転移!」

「いや、でも」

「頼って貰えて嬉しいけど、あんなに傷だらけになる前に頼って欲しかった……本当に、無事で、良かった……」


 ヨタカにたくさん泣かれてしまった。

 家に入るなり抱きしめられて、お茶も淹れられないからと取りあえず一旦放してもらって、お茶を淹れて居間に行ったらまた抱きしめられて無事を確認するようにあちこち触診されて、食事の支度をしないといけないからと放してもらって、食事を終えた後片づけもしないままに寝所にひっぱり込まれて、服を脱がされ、今度は全身を診察された。

 飲んだ薬でアザも消えたと思っていたが、ヨタカに言わせればまだ消えてない、後から痛む可能性がある、ということだった。現状は体中湿布まみれだ。その状態で、抱きしめられて、泣かれた。


 ヨタカの泣き方はとても静かだった。じわりじわりと目尻に浮かんだ涙がほろほろと崩れるように頬を伝う。悲しいばかりではなくて、悲しいと悔しいと嬉しいが混ざったような涙に見えた。きっと、だから簡単には止まらないんだ。


「ごめんなさい」

「謝らなくて良いよ。コウは何も悪くないもの。……もっと早くに呼んで欲しいのも頼って欲しいのも、俺の勝手な願いだもの」

「……でも、オレは、……とても、卑怯だし、汚いし、そんなことまで、してもらう、なんて」

「汚くないし! 卑怯!? なんで!? そんなの全然ちっともないからね!?」


 ……そうだ。ヨタカは知らない。……だったらずっと、知らせないままだって……。


「オレ……オレ、気付いてた。知ってたんです。ヨタカが、姉さんのこと、今も忘れられないままだって」

「はい?」

「呼ばなかったのは、姉さんに会わせたくなかったからなんです。ヨタカはオレが呼べば姉さんに会えたのに、……そうして欲しかったって、分かってたのに……いじわる、したんです」

「いや、ちょ、待って? なんで俺が君の姉さん好きって誤解を?」

「良いんですよ、誤魔化さなくて。……だから、オレのことだって………………抱かないんでしょ?」

「違うよ!?」

「……じゃ、オレの身体が、汚いから――」

「そんなの余計に違うよ!?!? なにその誤解!? だ、だってコウはまだ、子供だよ!? 数えで15になったばかりでしょ!? まだ身体も出来上がってないのに……!」

「15は大人です! 嫁入りしてからもう随分オレ、大きくなりました! そ、それに……村では、10くらいから、…………いろんな奴に……オレ……」

「それは言わなくて良い。……そんなもの、思いださなくて良いから」


 強く抱きしめられた。ごめんね、と頭を撫でられて、やっぱり子供扱いで、……悔しいと嬉しいが混ざり合った気持ちになって、コウからもヨタカにしがみ付くみたいに抱きついた。


「コウが18になるまでは待つつもりだったんだよ。人の子は、それくらいまでは良く成長するものだろう?」

「……もうじゅうぶん大きいです」

「俺はもう300年くらいは生きているから、数年待つくらいは誤差なんだ」

「300!?」

「鬼は長生きなんだよ」


 旦那様の年齢も知らなかったとは。精々、20半ばくらいかと思っていた。


「これから長い時間を一緒に過ごすのだもの。きちんと育った姿でいたいだろう?」

「だから、もう十分育ちました! たくさん待ちました! 嫌でないなら、オレを………………ちゃんと、あなたの、妻、に……して、ください……」


 恥ずかしくて、最後の方は消えそうな声になってしまった。

 顔が熱い。

 姉の代わりだって良かった。だってずっと、そうだった。


 でも今は、そうじゃなくて、ちゃんと、『そう』なりたかった。


 分かった。と声が聞こえて、そのままゆっくりと寝具の上に身を押し倒された。


「本当に良いんだね? ……後悔はしないね?」

「するわけ、ないです」


 重ねられた唇を受け入れて、コウはヨタカの首に腕を回した。



 _/_/_/_/_/_/_/_/



「それで、その姿なの」

「そうだよ」


 姉は老いた。それはそうだ、彼女の産んだ子はもう成人して、隣の畑を開墾している。来月にはその子に孫が生まれるそうだ。月日の経つのは早いものだ。

 久方ぶりの再会だった。コウはヨタカから託された薬を姉に渡して、注意を告げた。今回のものはもう少し先に流行るだろう病の薬だが、余所には決して出さないようにと彼からも言い含められている薬だった。どうも、色々な食性が効能に絡むらしく、この村の人間以外には少々毒めいた働きをしてしまうらしい。


「変わらない若さを羨むべきか、時が止まってしまった弟の身の上を案じるべきか……難しいところね」

「普通に案じてくれたら良いと思うよ」


 コウの姿は、最後に姉と会った日からほぼ成長していない。ほぼ、というか、全く、というか、そこで成長が止まってしまった、というべきか。

 つまり15の姿のままだ。どこからどう見ても少年だ。


 このことが判明したとき、コウはほんの少しだけヨタカと喧嘩した。なんでも、鬼の精を受け入れた人間は、そこで成長が止まるのだとかなんとか。あのね、そういうことは先に言っておいてくれ! 通りで何度も念押しされたワケだよ! でも確かにそれらしいことは何度も言われたね! 分かんねーよ! もっときちんと説明してくれ!


 姉のことを思っている、というのが勘違いであることも、その後しばらくしてから判明した。

 元からヨタカはコウが好きで、コウを嫁に迎えたいと思っていたのだと。でも男が男に求愛しても断られるだろうし、ならば家族になろうと姉に申し込もうと思ったが、あの村の空気を読んだ彼は素直に求婚した場合色々良くないことが起こりそうだと予想して、あのような婉曲な方法を採ったのだとか。割と最低なやりようだったのでコウは怒った。そもそも姉をそんな風に利用しようとするな。

 一応想い人が居なそうということは確認したよ! と力説されて、そういうことじゃないんだと説教した。


「約束通り、ちゃんと幸せにしてもらえてるみたいで何よりだわ」

「……まぁ、それは、ね。うん。……幸せです」


 変わらない弟の姿に、姉の眼差しは優しかった。


「ありがとう、コウ」

「なに、突然。ああ、薬? お礼なら――」

「いろいろ、たくさん、ひっくるめて、ぜんぶ、よ」


 そう返されて、一瞬言葉に詰まった。

 ……それはどこまで? どこから? ぜんぶ……全部、彼女は分かっていたのだろうか。気がついていたのだろうか。


「オレこそ。ありがとう、姉さん」


 守られていた。守っていた。コウが姉に告げられずにいることがたくさんあるように、姉もまた、コウに告げられずにいることはたくさんたくさん、あるのだろう。だって老婆はひどかった。姉弟のことを、都合の良い、奴隷かなにかとしか思っていなかった。

 だから食べ物だって、ろくすっぽ与えられていなかった。……あの少ない食べ物を姉がどうやりくりしていたのか、どこからどうやって手に入れていたのかなんて、コウはちっとも、知らないのだ。


 薄暗い過去を振り切るように、コウは高く澄んだ空を見上げた。姉もまた、麗らかな日差しに目をすがめた。


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鬼の嫁とり ふうこ @yukata0011

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