第8話 最低の歓迎会

 ◇同日 PM18:30


「本日はお集まりいただきありがとうございます!ただいまより、川上雫ちゃんの歓迎会を始めさせていただきます!はい、みなさんかんぱーい!」と、酒を飲む前からハイテンションの禿。


「「「「「「カンパーイ」」」」」」


 ちなみに参加したのは部長以外の部署メンバーの7名。


 女性は川上を含めて5名であり、男性は俺と禿松しかいない。

言い忘れていたが禿松は40代後半のおっさんである。


 ちなみに席順は【禿 川上 俺】そして向かいに4人の女性社員。


「ね、しずちゃんは彼氏とかいるの?」と、一発目にセクハラ案件の質問をする禿。


「あー...そ、そうですね。居ます」


「えー!そうなの?どんな人?付き合ってどれくらいなの?」と、距離を詰めながらそんなことをいう。


 ちなみに女性社員は女性社員同士で盛り上がっている。

これは川上さんの歓迎会だろ?なんでそっちで盛り上がってんだよ...。


 そして、少しずつ俺に近づいてくる川上さん...。


「...すみません、先輩」


「気にすんな...。いったんトイレ行ってこい」と小声で伝える。


「す、すみません...ちょっとトイレ行ってきます」


「え?俺もついていこうかなぁ~?」


「あはは...」と言いながらどうにか脱出する川上さん。


 これ俺がいなかったらまじでやばかったんじゃないか?

よし、しゃーねーな...やるか。


 無理やりビールを一気飲みして、店員さんに「すみません!ビールと先輩は日本酒でいいですよね?」と、まだ酒が残っているがごり押しする。


「...あぁ」


「お願いします!」


 こいつとの飲みでどうすればつぶれるかはわかっている。

ここからは適当におだてて一気飲みを誘導して...あぁ、そのままアルコール中毒で死なないかな。いや、その場合罪に問われるのは俺か...。


 そうして、川上さんが帰ってくるタイミングで自然と席を川上とチェンジする。


 禿が文句を言ってきたが、小声で「川上は酒が強い男が好きらしいですよ?」と伝えて無理やり飲ませまくり1時間程度で鬼退治に成功する。


「おめぇはよぉ...いつになったら...しごとぉができんだよぉぉぉ...おれをぉみならえりょぉぉぉ...うっぷ...」


「あはは、本当先輩みたいになりたいです」


「...たりめぇだぁ...」と、言いながらテーブルに肘をつけ始める。


 よし、あと一押しだな。

そうして、少しするとそのままテーブルに突っ伏して眠る。


 すると、対面の女性社員がぽつりぽつりと話し始める。


「寝た?禿」


「...ぐーぐー...」


「おそらく...」


「いや...本当...早く死なないかなこの禿...」

「ねー、本当キモイ」「この前私お尻触られたんだけど」「マジキモイ」と、沈めた途端、禿の悪口大会が始まる。


「いやぁ、雫ちゃん気を付けて?この禿、本当限度知らないから。ほら、雫ちゃん若いし...きっと今後大変だと思うから」

「私たちも協力できることあれば手伝うからさ!」


「はい!ありがとうございます!」


「高橋くんもいつも大変だよねー」「ねー。よく耐えてると思うわ」


「あはは、ありがとうございます...」


 そういいながらもこの人たちが俺のことを助けてくれたことなんてないんだよな...。


 そうして、2時間が経過し、半分眠った禿を無理やり歩かせてタクシーにぶち込んで、住所を伝える。


「それじゃあ、私たちは2件目いくから!二人は来る?」


「あぁ、俺はここで」「私もここで...」


「そう!じゃあまた明後日ね!」


「...んじゃ、帰りますか」


「...はい」


 そうして、二人で駅まで歩く。


「今日はすみませんでした...先輩にすごく頼ってしまって...」


「別にいいっての...」と、禿に合わせてハイペースで飲んだせいで少しふらふらしながら歩く。


「...肩貸しますか?」


「いやいい...。ほら、こういうところを彼氏に見られて勘違いされたら困るだろ...」


「いや、あれは...嘘です。彼氏はいないです」


「あっ、そうなんだ...。へぇ...意外だな...」


「彼氏いるように見えます?もしかして遊んでるように見えます...?」


「いやいや...川上さんは可愛いから...もてるだろうし、彼氏いるんかなって...」


「私、可愛いですか?」


「おう...かわいいと思うぞ」と、酒のせいで余計なことを口走ってしまう。


「...そうですか。先輩は彼女居ないんですか?」


「...いるよ...」


「...そうですか。そう...ですよね。先輩かっこいいですし、優しいですし...」


「俺がかっこいい?w」と、半笑いで返す。


「...はい。かっこいいですよ?」


「そうかぁ...えへへ、うれしいなぁ...」


「先輩もだいぶ酔ってますよね」


「まぁ、そうだなぁ...」


「...今度、お礼はしますから」


「そういうのはいいって...」


 そうして、駅に到着すると川上は俺とは逆方向の地下鉄に乗って帰るのだった。



 ◇PM9:25


「ただいまぁ~~~」と、ふらふらと家に入る。


「思ってたより...早い」


「えへへ、葵ちゃん~」と、抱き着く。


「ちょっと...すごい酔ってます?//」


「うん...すごいよってる...」


「携帯...見てくれました?」


「けいたいぃい?」


「...何回も連絡したのに返事ないからすごく不安でした」


「ごめんえぇん...」


「...いいですよ?」と、優しく頭を抱きしめてくれる。


「ねぇ、ベッド行こうぉ?」


「...い、一緒にですか...?」


「うぅん...イチャイチャしたぃ...」


「...わ、わかりました...//」


 それからのことはよく覚えていない。

けど、めちゃくちゃキスをしまくったのは何となく覚えている。

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