第6話 新入社員の登場
◇翌日 6:15
昨日と同様、既に起床して朝ごはんを用意してくれている葵ちゃん。
「...おはよ」
「おはようございます」と、変わらずかわいい笑顔で笑う。
二人で食卓につき、ご飯を食べ始めたところで「...ごめんね」と言う。
「何がですか?」
「いや、その...結婚するって言ったのにすぐに結婚できなくて」
「いいんです...。大坂さんの言ったことはもっともです。私も逆の立場ならきっと止めていると思います。それに、悠人さんは結婚してくれるとは言ってくれましたけど、今すぐとは言ってませんしね...?私も...もっとお互いのことを知ってからでも遅くないかなって...思いましたし」
「...うん」
「その代わり...もっと...イチャイチャしたいです...//」と、上目遣いでそんなことを言ってくる。
「イチャイチャ...か」と、俺も照れ臭くなり首を掻きながら復唱してしまう。
「はい。...悠人さんが嫌じゃなければ...行ってきますのチュー...を...で、できれば毎日...したいかな...とか...//」
「...いいよ?//」と、目をそらしながら返答する。
大分...バカップルらしくなってきてしまった。
そうして、朝食を食べて、歯を磨き、スーツに着替えて...いつものルーティンを済ませて玄関で革靴を履く。
「行ってきます」と、声をかけると少しオドオドとし始める葵ちゃん。
「ん?」
「...忘れたんですか...?」
「あっ」
そうして、キスをして家を出たのだった。
これからはこれもルーティンになるんだな。
◇PM12:15
「おい、髙橋。ちょっとこい」と、後藤部長に呼ばれる。
「...はい」
またなんかやらかしちゃったかなと思っていると、「今日、他部署から一人うちに異動してくる子がいるんだが。もうお前もいい年だし、教育係を任せようと思ってな」
...絶対めんどいからおしつけてるだけだろ。と、内心つぶやきながら「わかりました」と返事をする。
「...あの、新人用のカリキュラムとかありますか?」
「あるわけねーだろ。必要ならお前で作れ」
「...」
今日これから来るって言われてどうやって作るんだよ。こいつ、本当馬鹿なのか?
「午前中はざっくりとうちの部署の説明をしたから。実務については午後から頼むぞ。てことで、あっちの会議室にいるから」
「...」
ほう?それで終わりか?はぁ...また仕事が増えるのか...。
しかし、異動してくる子に罪はないし...。俺はこいつのようなクソ上司になるつもりはない。
そうして、一呼吸をしてから会議室をノックする。
「失礼します」
そうして、会議室の中に入るとそこに立っていたのは茶髪で若目の女の子だった。
歳の頃はそう...葵ちゃんの少し上くらいに見える。
「
「あっ、うん。よろしく。俺は髙橋悠人。えっと、簡単に自己紹介するね。この会社に入って5年目で...あとは趣味は読書とか?映画とか...。最近はあまり見れてないけど。そんな感じ...かな?これからよろしくね」
「髙橋先輩ですね。覚えました」
彼女は表情を変えることなくまるで記号を覚えるかのようにそうつぶやいた。
すると、一歩を踏み込んでだいぶを距離を詰めてから「私も趣味は読書です。この会社は現在2年目の、25歳です。特に芥川龍之介や太宰治が好きです。ぜひ、お時間あるときに本の話をしましょう!」と言われた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818023213436028009
...距離が近い...。
てか...かわいいな...。
「あっ、よろしくね?」と、半歩下がってそう言った。
「それじゃあ、さっそくで申し訳ないけど仕事について教えちゃうね。今日はとりあえず俺の横にいて、どんな感じかを見てくれればいいから。ざっくりだけど、何をしているかも教えるから、なんか疑問があったら何でも言ってね?」
「はい!わかりました!」
そうして、いつものように仕事を始める。
すると、ざっくりと説明していると結構深いところまで聞いてきてくれる川上さん。話を聞いている様子とかメモを取る箇所とか...1時間ほどで彼女が優秀な人間であることを悟る。
「川上さんはもともとどこの部署にいたの?」
「営業にいました!けど、事務のお仕事してみたいなーと思っていたところ、事務の部署で人員の募集を行っているという張り紙を見て、思い切って部署を異動をしました!」
確か、うちは営業も相当過酷って聞いたけど...。
本音はそういうところでの部署異動だったんだろうか...?
「そっか。まぁ、こうやって話している感じ川上さんならすぐ仕事覚えられそうだし、期待しているよ?」
「はい!期待にこたえられるように頑張ります!」
そうして、楽しい雰囲気で話しているとあいつが割り込んでくる。
「あっ、君がもしかして噂の新人ちゃん?よろしくね?俺は
「はい!よろしくお願いします!若松先輩!」
「うん!こいつに何かされたら遠慮なく声かけてね?こいつがいやだったら俺が研修担当やるしさ!俺、教えるのうまいって評判なんだよ?」
「そうなんですね!でも、高橋先輩にすごく優しく丁寧に教えていただいているので大丈夫です!」
「えー?そうなのー?こいつ社内では仕事ができないことで有名なんだよ?残業ばっかして...。なぁ?」と、語気を強めにそういわれる。
「...そうですね」
「よし!今度、歓迎会やろっか!今週の金曜日とかどう?」
「あ...えっと...そうですね...だ、大丈夫です!」
「そっか!わかった!楽しみにしててね?」と、去っていく。
「...はぁ」と、小さくため息をつく。
「...大変ですね。先輩」
「...まぁな。きっと川上さんも苦労すると思うよ...。あいつセクハラパワハラの常習犯だからさ。なんかあったら俺に言ってくれていいから」
「...はい。ありがとうございます」
そうして、彼女を定時に帰らせて一人で残業するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。